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官職:外官:

国司

(最終更新日:99.11.04

 − 目次 −




 

国司


諸国を治める役所で、国々に置かれており、和名『くにのつかさ』とも言います。
職員を指しても国司と言っています。

官舎は『国司の庁』『国庁』『国の館〔たち〕』『国衙〔こくが〕』などと言い、カミの「国守」が赴任しない国では『留守所〔るすどころ〕』とも言います。
また、国庁所在地を『国府』と言います。

職員は通常は自宅から通勤するのですが、仕事の忙しい「介」などの中には、国衙に宿直することの方が多い人もあったようです。


 

● 国司職員構成


大上中下の国の等級や時代によって若干の違いがありますが、概ね以下のようになっています。(国掌・国雑掌などは時代が下ってから置かれます。)

 守 → 介 → 掾 → 目 → 史生 → 国掌
(1名) (1名) (1名) (1名) (2〜5名) 国雑掌

この他に医師、陰陽師、書生などがあり、その他、所在地の事情によって、奥羽には弩師〔どし〕(=弓兵)、対馬には新羅訳語〔おさ〕(=通訳)などの職が置かれています。

なお、史生までの職には国司の俸給があります。(※「俸給」参照)


 

● 国司四部官(四等官・四分官)


(※ 諸国の区分は「諸国」を参照。)

〔たいこく〕
大国
〔じょうこく〕
上国
〔ちゅうこく〕
中国
〔げこく〕
下国
カミ 〔かみ〕

従五位上

〔ごんのかみ〕
権守

1名



1名
〔かみ〕

従五位下

〔ごんのかみ〕
権守

1名



1名
〔かみ〕

正六位下

1名
〔かみ〕

従六位下

1名
スケ 〔すけ〕

正六位下

〔ごんのすけ〕
権介

1名



1名
〔すけ〕

従六位上

〔ごんのすけ〕
権介

1名



1名
〔すけ〕

正六位下

1名

ジョウ 〔たいじょう〕
大掾
正七位下

〔ごんのたいじょう〕
権大掾

〔しょうじょう〕
少掾
従七位上

〔ごんのしょうじょう〕
権少掾

1名



1名


1名



1名
〔じょう/ぞう〕

従七位上

〔ごんのじょう〕
権掾

1名



1名
〔じょう/ぞう〕

正八位上

1名
〔じょう/ぞう〕

従八位下

1名
サカン 〔だいさかん〕
大目
従八位上

〔しょうさかん〕
少目
従八位下

1名



1名
〔さかん/そうかん〕

従八位下

1名
〔さかん/そうかん〕

大初位下

1名
〔さかん/そうかん〕

少初位上

1名
その他 〔ししょう〕
史生

5名
〔ししょう〕
史生

4名
〔ししょう〕
史生

3名
〔ししょう〕
史生

2名

※ 中国の介・下国の掾、及び、権官は、時代が下ってから置かれたものか、『養老令』の制にはありません。また、史生の定員も、『養老令』では一律3名となっています。


 

○ 『守』


『国守〔こくしゅ〕』とも言い、任国の行政・司法・警察以下、国務一切を総轄する職で、原則的に、蔵人式部官・民部官・外記検非違使などが叙爵の順(五位に叙された順)で任じられます。国ごとに定員1名です。

国守が不在の場合(欠員、その他、「遥授〔ようじゅ〕」(※後述)であったり、用務で上京している際など)は、「権守」乃至は「介」が国務を総轄します。ただ、「権守」も「遥授」である場合が多かったようです。

なお、淳和天皇の代以降、上野・常陸・上総の3国は親王の任国と定められ、カミは『太守〔たいしゅ〕』と言いますが、俸給のみを得て実際に赴任することはないので、次官の「介」を指して「守」と呼んでいることが多々あります。
陸奥も、後醍醐天皇の代は親王任国とし、カミを「太守」と言ったようです。(それ以降も親王任国だったかどうかは不明。)

時代が下って院政期に入ると、欠員となっている国守は、その収益を公私の費用に充当できるよう、皇族・摂関大臣・公卿(=三位以上の人)に兼任させる例が多く見られるようになります。
それを『知行〔ちぎょう〕』と言い、また、そうした国守を『名代〔みょうだい〕国司』『知行主〔ちぎょうぬし〕』(※後述)などと言い、そうして与えられた国のことを『知行国』『沙汰国』などと言います。


 

・ 国守に関連する言葉


『宿官〔しゅくかん/やどりのつかさ〕

叙爵したけれども、国守に欠員がなく、一時的なものとして権守に任じられていることを言います。


『名代〔みょうだい〕国司』『仮名〔けみょう/かな〕国司』『名〔な〕国司』『知行国主〔ちぎょうこくしゅ〕』『知行主〔ちぎょうぬし〕

知行国のカミを言います。在京高官の兼任職であるため、概ね、名ばかりで赴任・執務はしません。


『遥授〔ようじゅ〕』『遥任〔ようにん〕

国守としての赴任・執務を免除された人、及び、その立場を指して言います。例えば「宿官」であったり、或いは「名代国司」であったりする場合は、概ね「遥授」です。


『目代〔もくだい/めしろ〕

用務で上京したり遥授であったりする国守が、任地での自分の代理として私的に置く役です。従って、事務に堪能でさえあれば、身分・家柄に関わらず任意に誰を指名しても構いません。
それでいて国守の仕事を全て代理するのですから、国内の事情によく通じることと相まって、後年、どんどん勢力を増していきます。

遥授の国守は目代を派遣する際、任国の役人に対し「目代発遣〔はっけん〕」の庁宣(=令達文書。後述)を下します。

目代の【目】は国司四等官の『目〔さかん〕』ではなく、国守の【耳目】に代わる、の意で付けられた役名です。

鎌倉時代くらいからは別名『代官』と呼んでも間違いないのですが、平安時代の頃まではまず言わないんじゃないかな。(鎌倉以降になると幕府の「守護代」を指しても「代官」と言い、さらに時代が下るともっと全般的に「代官」と呼ぶようになります。)

※ 時代劇等で見られる江戸幕府の「お代官さま」や「目代」は似て非なるものです。(江戸幕府の「お代官さま」は幕府を代表する「幕府の代官」で、「目代」は「目付」のことです。)


『留守職〔るすしき〕

『目代』のことです。
「留守職」を指して『留守所〔るすどころ〕』と言う場合もあります。
(※「留守所」は本来、役所を指しますので混同しないよう注意。)


『国司代〔こくしだい〕

職掌としては『目代』と代わらないようなのですが、次に述べる『大介』の代理だとも言い、現時点では『大介』ともども、あまりよくわかっていません。


『大介〔おおすけ〕

たいていの場合は、平安以降、国守が国符や庁宣などの公文書に署名するとき、「守」に代えて用いた称号である、と理解しておいて間違いありません。

その他、現職ではない前官の「介」を指して言うこともあります。

※ ただし、『大介』についてはこの他にも諸説あり、たしかに上に述べたことに該当しない例で用いられている場合があります。


『受領〔ずりょう/ずろう〕

各国の国司のうち、任国に赴任している最上席の人を指します。

※ 通常であれば「受領」は「国守」の筈ですが、国守が欠員等で不在の場合、「目代」「権守」「介」などが「受領」ですし、遥授の国守は「県召除目〔あがためしのじもく〕」の際に、『受領の挙〔きょ〕』というので、あらかじめ受領を推挙します。従って、「受領」であるために、実際には「守」でない人が「守」と呼ばれている例も多くあります。


 

○ 『介』


職掌は『守』と同じで、守が不在の際(欠員、その他、「遥授」であったり、用務で上京している際など)は、代わって国務を総轄する次官職です。

「受領」である場合には、「守」と呼ばれている例も多くあります。

国ごとに定員1名ですが、下国には置かれておらず、また、『養老令』の規定では中国にもありません。

六位相当の職ですが、五位の人が勤めている場合、『大夫介〔たいふのすけ〕』と言います。(※[だいぶ/だいふ/たゆう]とは読みません。「位階」参照)


 

○ 『掾〔じょう/ぞう〕


国司の三等官で、大国では大掾・少掾があり、主に書記業務、その他雑務を担当します。

国ごとに定員1名ですが、『養老令』の規定では下国には置かれていません。


 

○ 『目〔さかん/そうかん〕


国司の四等官で、大国では大目・少目があり、国内の取り締まりや文案の審査等を担当します。国ごとに定員1名です。


 

● 国司全般に関連する言葉


『在庁官人〔かんじん/かんにん〕』『在庁』『庁官』

国衙に勤める役人の総称です。


『揚名介〔ようめいのすけ〕

実際に任命されたわけではなく、職名だけで、職掌も俸給もない人を言います。
その人が実在するかどうかは問いません。

つまり、これは、実際に国司に任命された人が、職名だけをその人(揚名介)に与え、俸給は自分のものとしている状態で、「揚名」とは呼ぶものの「介」「掾」「目」などに例があります。

これによって双方にどういうメリットがあるのか、よくわかりません。(一方はハクが付き、一方は複数の国司職に任命されることで俸給を増やすことができる?)

ともあれ、職名を与える相手がいないために、わざわざ作名してまで、揚名介を作った人もあったようです。


 

● 国司任官〜赴任〜引き継ぎの手順


主に「国守」の場合ですが、任官後、概ね以下のような段取りを踏みます。


  1. 『県召除目〔あがためしのじもく〕で国司(の国守)に就任。

  2. 吉日を選んで『先使発遣〔さいつかいはっけん〕』の儀式(先使を派遣する儀式)を行う。

     『先使〔さいつかい〕

    先任の国守から、新任の国守について、在国の役人に訓示する『庁宣』を運ぶ役で、大事な役であるため随兵が付けられます。

     『庁宣〔ちょうぜん〕

    『国宣〔こくせん〕』とも言い、国司から管内に令達する公文書のことです。

    先使が運ぶ庁宣は儀式の一環でもあるので、必ず三ヶ条の形式になっていたようです。


  3. その他の庁宣を下す。

    例えば、国守が遥授である場合などに、先使とは別に庁宣を下して、田地や国内についての報告や問い合わせ・相談のため、国府の役人数名の上京を命じたりしたようです。


  4. 同行者を選ぶ。

    単身赴任と定められているわけではないので、都合が許せば妻子の同行も可能です。しかし、その他は大勢連れて行くわけにもいかないので、従者などは数を選んだようです。


  5. 赴任の前の『罷申〔まかりもうし〕』を行う。(※高位の人の場合だけかもしれません。)

    参内して「お暇〔いとま〕申し上げ」ることです。この際は、勅語があり、衣服や馬などを下されることがあったようです。


  6. 吉日を選んで出立。(=『下向〔げこう〕』)

    国司下向の行列はずいぶん華やかだったようです。(いやいや下向する人の場合もそうだったのかな??)しかし、行列とはどういうことでしょうか。国守と従者たちの行列か(そんな大勢ではなかったろうのに?)、それとも同国に赴く他の国司も加えて、連れだって行ったものでしょうか。


  7. 『境迎〔さかむかえ〕』の儀式

    国によって式次第は違いますが、国境で行われる出迎えの儀式で、国府役人も国境まで出向きます。
    これは大切な儀式だったようで、たとえば陸奥では「武隈〔たけくま〕の松」のある所で「境迎」し、歌の詠める国守ならそこで歌を読む習いとなっていましたが、後年、その松が枯れたため、代わりに松の枝を立てて(まで)歌を詠むことにした例などもあるそうです。


  8. 三日間の国守饗応。

    国守の住居が定まると、管内の主な人々が国守を饗応します。ただし、無駄な出費を省くためにあらかじめ謝絶しておいて饗応を受けないこともありました。


  9. 『神拝〔しんぱい〕』をする。

    管内の神社に参拝します。例えば安芸守の場合、まず最初に鎮守厳島明神に参拝します。


  10. 『検注〔けんちゅう〕』をする。

    国内の田地を巡検調査することです。
    国守が遥授などの場合は代わりに『検田使』を派遣してこれを行わせます。


  11. 国務開始。

    ときどき、朝廷から『巡察使〔じゅんさつし〕』が派遣されてきて、国守の政事その他、国司の功過を視察調査して帰ります。
    また国司の方でも『四度使』その他の用務で、時折、上京することがあります。


     『四度使〔よどのつかい〕

    大計帳使・正税帳使・貢調使・朝集使の4つを言います。


  12. 任期終了。

    当初は任期4年の国と6年の国がありましたが、後には奥羽・大宰府は5年、その他の国は一律4年となります。

    なお、国司の任限に関しては以下のようなことがあります。


     『延任』

    国司の所定の任期が何らかの事情で延ばされることを言います。


     『重任〔ちょうにん〕

    国司の所定の任期が過ぎても引き続き勤めることを言います。重任すると国司収入が増やされます。


     『成功重任〔じょうごうちょうにん〕

    功を成すための「重任」を言います。
    つまり、重任すると国司収入が増加しますので、寺の造営(天皇の願かけなどのために建てられることが多いです)その他で資金が入用となったときに、朝廷への献金を行ったり造営を一身で引き受けるなどして、特別に許される重任のことです。



  13. 後任国守へ『解由』の引き継ぎを行う。

    『解由〔げゆ〕』とは引き継ぎ書類のことで、会計決算帳を後任に引き渡し、後任が連署した後に、太政官に上申します。これで引き継ぎ完了です。

    引き継ぎが終わらないうちは次の除目〔じもく〕で他の職に就くことはできません。





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