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        適正価格

1800番 さりさまのリクエスト    ギャグ(笑) 朝井さんがでてきてアリスをおちょくる(火村脇役)
すみませんすみません、全然クリアできてません(泣) ギャグは私には高度過ぎて……(T-T) 



 右手にアリス、左手に火村先生。今夜は両手に花状態で気分がいい。
「先生、得意技って本当やったんですね。私よりアルコール入ってるはずやのに、なんや悔しいわぁ」
 両方から、失礼にもアタシを素通りしてお互いに注がれる気がかりそうな視線は、笑えるけど気づかない振りをしてあげよう。一応、お姉さんやからね。大サービスや。
「こいつ結構ザルですから。あんなビールの2−3本くらい、とっくに抜けてますって」
 このメンバーで飲むのは2回目。アリスにせっついて、ようやくこの「新世界ミニツアー」をセッティングさせた。アリスご自慢の火村先生を、もっとよう観察せなアカンと思て。
 初対面の時は、アタシが柄にもなく服喪中な気分でいたもんやから、あんまりリキいれて観察できんかってんけど、改めて見るとやっぱええ男やわぁ。アリスの心配も、あながち的外れでもなかったかな。
 
 実際に会う前から、アタシは先生に興味津々やった。
 なんたってアリスと話してると、ふた言めには出てくる噂の火村先生や。だいたい、会うたこともない先生のプロフィールを、アタシがすらすら言えるくらいに覚えてたってのは異常やろ。それくらい耳タコに聞かされてたっちゅうことや。名探偵で以下略なすごいお友達のこと。
 お友達っちゅうのは、まぁ――物は言いようってことで。問い詰めたら途端に真っ赤になってアワアワして、それでも白状したわ。

 コイビトやて。

 アホくさ。
 あの延々と聞かされた自慢話は、実は惚気やったんかとガックリきたのは確かやけど、怒れないのがアリスの人徳やねぇ……
 びっくりした顔してたけど、そんなんアンタの態度でバレバレなんやって。アリスはホンマ推理作家以外向いてないなぁ。紙の上だけでも人を騙せてるのが信じられんわ。
 初対面の挨拶したときも、なんやあっけに取られた顔して先生の方見てたし、あれはきっと最初っからウチらの話が弾んだからやろな。思ってたよりええ男やって言ったら、即座に『女嫌い』やなんて釘刺してきよるし。全く正直者で、笑かしてくれるわ。
 ま、アリスの他の使い道は、火村先生だけが知ってればええっちゅうことやな。



 屋台の串カツ屋のあと、新世界名物の弓打ちに連れてってもろてんけど、「あた〜り〜」の声と太鼓を1番多く引き出したんは、言うまでもなく火村先生やった。アタシも、こういうのは結構得意なはずやねんけど、最近運動不足やわー。断じて歳のせいやないで。
「さ、幹事さん。次はどこ連れてってくれるん?」
 今夜は近くにホテルを取ってあるんで、何時まででもOKやで。
「んー、そろそろゆっくり飲みたいですよね。ジャック・ダニエルが置いてあって、雰囲気のええ店か…… ちょお歩くけど、ええですか?」
 アタシより高い身長のくせに、柔らかく覗き込むようにして見上げてくる、アンタその可愛らしさは反則や。黒の革ジャンが泣くで。
「先生、どう思います? 私とアリスと、ほとんどペアルックみたいなん着てこうして腕組んで歩いてんのに、ちっとも恋人には見えへんよねぇ。なんでやろ」
「姉と弟がハマり過ぎているからでは?」
 ん〜、そうなんよねぇ。アリスはアタシが女だなんて、思ったこともないような気ィするわ。あの人と同い年やったとはとうてい思われへん。そう言うたらこのセンセもアリスと同じには見えへんのやけどね。
「ほんならこっちはどうやろ。なーアリス、似合うか?」
 アリスから手を放し、火村先生の腕にぎゅっと掴まる。
「あー、いや、その……」
 困り顔のアリスが面白くて、離れたそうな腕にしがみ付く。
「……火村、オマエがだらしなさ過ぎや。朝井さんのキリッとしたカッコ、ちょっと見習えや」
「お前に言われたかないね」
 確かにぶら下げたネクタイとコールテンのジャケットは、キリッにはほど遠い。けど優しいなー。似合うと言いたくない理由を、アタシに気ィ遣うて先生のせいにしたりして。
「じゃあ、こーんなことしちゃおっかなー」
 オニやなー、アタシも。アリスに見せ付けるようにして、先生のネクタイをキュッといい具合に直してみせる。
「どや、アリス。今度は?」
「似、おてます………」
 アリスの悲しそうな顔は、『火村先生のネクタイを直す女性』に嫉妬したから。
 自分の口から、『似合う』と言ってしまったから。
 アホやなー、相手がアタシではライバルになんかなるはずもないて解ってるはずやのに。そんな簡単に不安な顔させるようでは、センセ、愛情足らんのと違う?

「お、俺、タバコ買うてきます……」
 なんや。アタシがさっきから失敬し続けてるせいで、確かに先生のタバコも残り少ないけど、なにも今行くことないやん。よっぽどアタシが苛めたみたいやんか――って、その通りか。
 ふらふらと歩いて行く後ろ姿にため息が1つ。自分のかと思えば、隣からやった。そんなさっさとネクタイゆるめんでも…… つれないなぁ。
「朝井さん………」
 疲れたような声に肩を竦める。解ってます。あの子にちょっかい出すんは自分の特権やて言いたいんやろ。でもケチやなー、口止め料代わりに、ちょっとくらい遊ばせてくれてもええやん。
「急用ができました。3次会は短めに願います」
「ふふん、どうしよっかなー」
 拗ねたアリスをなだめるのなんて、いっつもやってることやろ? たまのこっちを優先してくれてもええんとちゃう?
 

 ゆっくり回りこんで、さりげなーく先生の視線をこっちに引き寄せ、アリスの戻ってくる方向に背を向けさせる。なぜなら……
「お待たせしました」
 アリスの手の中にキャメルが3箱。
 アタシとセンセと自分と、仲良く1箱ずつ配る。
(心配せんでも、センセにはアンタが1番よぉ似合てるよ)
 耳打ちしてやると、アリスは真っ赤な顔でこっちを向いた。全く、これじゃ耳打ちの意味ないやんか。先生にモロバレや。
「朝井さん、も1つどうぞ」
「アラ、言うてみるもんやねぇ。儲けたわ。おおきに」
 手の中に、2つになったキャメル。言われて嬉しかったんか、そうかそうか。オモロイなぁ。

「朝井さん、もう1つ欲しくありませんか」
「火村っ?」
 先生がラクダの箱をかざしてニヤリと笑っている。まぁーったく、280円のキャメル1箱(しかもそれ、アリスが自分で買うたヤツやん)でアリスを買い上げようって、ちょーっと安すぎやないですか?
 でもアタシは知ってる。その箱にはオプションがついてること。そのおまけに免じて、今日のところはカンベンしてあげましょう。
「OK、手を打ちましょ。でも先生、後悔しても知りませんよ?」
 先生の手の中からキャメルをするりと抜き取って、箱のラクダにキスを1つ。
「あ」
「ふふ、アリス、ごちそうさん。じゃ先生、3次会の代わりにアリスとの間接キス1つ、確かに頂きました。なんや悪いなぁ〜」
 珍しくポーカーフェイスの崩れた先生と、「あ」という顔のまま固まっているアリス。
 あとの時間は2人で好きにしてちょーだい。
「ほな、おやすみィ〜〜」



 キャメルを3箱持った手をひらひらさせて、回れ右。
 この後始まるはずの痴話喧嘩は、アタシの知ったこっちゃない。犬も食わないってヤツや。
 しゃーない。このあとはホテルのバーで、1人で乾杯することにしましょ。二日酔いでは明日のチャリの買い出しにも差し支えるしな。軽く一杯引っかけて、おとなしく休むわ。
 それにしても、ええ男が2人もいて1人は女嫌いやし、もう1人には姐御としか思われてないとは、この小夜子さんも、ちと女としての魅力に磨きをかけなアカンかな。
 まぁええわ。3次会は行けんかったけど、なんや気分いいし。
 アタシもあの2人は好きなんや。うまいこと仲直りしてな。
 いい夜を。おやすみ。

H11.9.26


ああ〜〜 玉砕。ギャグは私の手には負えません〜〜(T-T)
ところで射的場って、当たると何かイイコトあるんですか? 
パチンコ屋みたいに、景品にタバコが貰えたりするんだったらどうしよう……