■ 第三 後宮職員令 ≪全18条≫ ○01 (妃条) 妃〔ひ〕2員。   これは四品以上。 ○02 (夫人条) 夫人〔ぶにん〕3員。   これは三位以上。 ○03 (嬪条) 嬪〔ひん〕4員。   これは五位以上。 ● 宮人〔くうにん〕(=仕官している婦人。いわゆる女官)職員 ○04 (内侍司条) 内侍司〔ないしのつかさ〕 尚侍〔ないしのかみ〕2人。{職掌は、常侍、奏請(=奏上して勅を請うこ と)・宣伝(=勅を宣し伝えること)に供奉〔ぐぶう/ぐぶ〕(=(身近で) お仕え)すること、女孺を検校(=監督)すること。併せて、内外命婦の朝参 (=朝礼)、及び、禁内の礼式を知ること。} 典侍〔ないしのすけ〕4人。{職掌は尚侍と同じ。ただし、奏請・宣伝するこ とはできない。もし尚侍が不在ならば、奏請・宣伝することができる。} 掌侍〔ないしのまつりごとひと〕4人。{職掌は典侍と同じ。ただし、奏請・ 宣伝することはできない。} 女孺〔めのわらわ〕100人。 ○05 (蔵司条) 蔵司〔くらのつかさ〕 尚蔵〔くらのかみ〕1人。{職掌は、神璽、関契〔げんけい/かんけい〕(= 軍の通行証)、供御〔ぐご/くご〕(=天皇御用の物品・食事)の衣服〔えぶ く〕・巾櫛〔こんしち/きんしつ〕・服翫〔ぶくがん〕(=双六・囲碁など) のこと、及び、珍宝、綵帛〔さいびゃく〕(=染絹・白絹)、賞賜のこと。} 典蔵〔くらのすけ〕2人。{職掌は尚蔵と同じ。} 掌蔵〔くらのまつりごとひと〕4人。{職掌は、出納、綵帛、賞賜のこと。} 女孺10人。 ○06 (書司条) 書司〔ふみのつかさ〕 尚書〔ふみのかみ〕1人。{職掌は、内典〔ないてん〕(=外典(儒教経典) に対する称で仏教経典のこと)・経籍〔きょうじゃく〕(=儒教の古典)に供 奉すること、及び、紙・墨・筆・几案〔きあん〕(=机か。※本来「几」や 「案」は脇息〔きょうそく〕の類)・糸竹〔しちく〕(=弦楽器・管楽器)の こと。} 典書〔ふみのすけ〕2人。{職掌は尚書と同じ。} 女孺6人。 ○07 (薬司条) 薬司〔くすりのつかさ〕 尚薬〔くすりのかみ〕1人。{職掌は、医薬に供奉すること。} 典薬〔くすりのすけ〕2人。{職掌は、尚薬と同じ。} 女孺4人。 ○08 (兵司条) 兵司〔つわもののつかさ〕 尚兵〔つわもののかみ〕1人。{職掌は、兵器に供奉すること。} 典兵〔つわもののすけ〕2人。{職掌は尚兵と同じ。} 女孺6人。 ○09 (【門+韋】司条) 【門+韋】司〔みかどつかさ/いし〕 尚【門+韋】〔みかどつかさのかみ〕1人。{職掌は、宮閤(=宮門・閤門) の管鑰〔かんいち/かんいつ/かんやく〕(=鍵)のこと、及び、出納のこ と。} 典【門+韋】〔みかどつかさのすけ〕4人。{職掌は尚【門+韋】と同じ。} 女孺10人。 ○10 (殿司条) 殿司〔とのもりのつかさ〕 尚殿〔とのもりのかみ〕1人。{職掌は、輿繖〔よさん〕(=行幸の際の乗り 物や雨蓋)、膏〔こう〕(=肉脂)、沐〔もく〕(=入浴)、燈油、火燭、薪 炭に供奉すること。} 典殿〔とのもりのすけ〕2人。{職掌は尚殿と同じ。} 女孺6人。 ○11 (掃司条) 掃司〔かにもりのつかさ〕 尚掃〔かにもりのかみ〕1人。{職掌は、牀席〔しょうしゃく/しょうせき〕 (=敷物)、灑掃〔れいそう/さいそう〕(=洒掃=清掃し水を打つこと)、 鋪設〔ふせつ/ふせち〕(=設営)に供奉すること。} 典掃〔かにもりのすけ〕2人。{職掌は尚掃と同じ。} 女孺10人。 ○12 (水司条) 水司〔もいとりのつかさ〕 尚水〔もいとりのかみ〕1人。{職掌は、漿水〔こみず/あわもい〕(=粟で 醸した発酵飲料)、各種の粥をたてまつること。} 典水〔もいとりのすけ〕2人。{職掌は尚水と同じ。} 采女〔うねめ〕6人。 ○13 (膳司条) 膳司〔かしわでのつかさ〕 尚膳〔かしわでのかみ〕1人。{職掌は、御膳を知ること、進食の際に先嘗 (=毒味)すること、膳羞〔ぜんしゅう〕(=(美味しい)料理。ごちそ う)、酒醴〔しゅらい/しゅれい〕(=酒・醴〔こざけ〕(=甘酒))、諸々 の餅〔もちい〕、蔬〔くさびら〕(=野菜類)・菓〔くだもの〕(=木の実) を惣摂〔そうせつ〕する(=すべ治める)こと。} 典膳〔かしわでのすけ〕2人。{職掌は尚膳と同じ。} 掌膳〔かしわでのまつりごとひと〕4人。{職掌は、典膳と同じ。} 采女60人。 ○14 (酒司条) 酒司〔さけのつかさ〕 尚酒〔さけのかみ〕1人、{職掌は、酒を醸すこと。} 典酒〔さけのすけ〕2人。{職掌は尚酒と同じ。} ○15 (縫司条) 縫司〔ぬいとののつかさ〕 尚縫〔ぬいとののかみ〕1人。{職掌は、衣服を裁縫すること、纂組〔さん そ〕(=帯や紐を編んだり組むこと)のこと、併せて、女功〔にょくう〕(= 婦人労働。※ここではその出来具合)、及び、朝参を知ること。} 典縫〔ぬいとののすけ〕2人。{職掌は尚縫と同じ。} 掌縫〔ぬいとののまつりごとひと〕4人。{職掌は、命婦の参見〔さんげん〕 (=(普通の日の)天皇の接見に参上すること)、朝会〔ちょうえ〕(=元 日・朔日の朝礼)の引導のこと。} 宮人職員は、諸司(=ここではいわゆる後宮十二司)の掌〔しょう〕以上をみ な職事〔しきじ〕(=ここでは官位相当のある官職(※ただし、官位令には規 定されておらず、それぞれ特定の位に「準じる」形であり、男官の職事官とは 別)、ないしは毎日出勤を原則とする官職。)とすること。その他を散事〔さ んじ〕(=ここでは官位相当のない官職、ないしは分番(=交替勤務)を原則 とする官職。※男官の散位(散官)とは別)とすること。それぞれ、半月ごと に沐假〔もくけ〕(=洗髪のための休暇)3日を支給すること。考叙の法式 は、統一して長上(=(男官の)職事=毎日出勤を原則とする官職)の例に準 じること。{東宮の宮人、及び、嬪以上の女竪〔にょじゅ〕(=東宮の妃以下 嬪以上)も、これに準じること。} ○16 (朝参行立次第条) 内親王〔ないしんおう〕、女王〔にょおう〕、及び、内命婦〔ないみょうぶ〕 (=本人の位階が五位以上)が朝参に行立する次第は、それぞれ本位に従うこ と。外命婦〔げみょうぶ〕(=五位以上の官人の妻)は夫の位の順序に準じる こと。もし諸王以上(=親王・諸王)が臣の家に娶って妻と為した場合はこの 例に該当しない(※その妻は内親王・女王の列には加われず朝参できない)。 ○17 (親王及子乳母条) 親王(※内親王も含む)、及び、その子(※内親王と諸王(以下)との間の子 は除く)には、みな乳母を給うこと。親王には3人、その子には2人。養われ る子の年が13歳以上ならば、乳母が死亡したとしても代わりを立て替えるこ とはできない。(乳母の)考叙はいずれも宮人に準じること。それ以外の(親 王家の)女竪は考叙の範囲にない。 ○18 (氏女采女条) (畿内の)諸氏は、氏ごとに女貢〔にょぐ〕すること(=氏女〔うじめ〕)。 みな年齢30歳以下13歳以上を限度とすること。氏の名ではないといえど も、自ら進仕することを願えば許可すること。采女を貢すについては、郡の少 領以上の姉妹、及び、娘の形容端正な人をもってすること。みな中務省に上申 して奏聞すること。                 (公開:2000/03/18 更新:2000/03/18) ====================================================================== 訳者:しげちゃん(猪狩浩美) Email: HGF03435@nifty.ne.jp   「官制大観」 http://www.sol.dti.ne.jp/‾hiromi/kansei/ ======================================================================