■ 第十四 考課令 ≪全75条≫

○01 内外官条

内外の文武官の初位以上は、毎年、当司の長官が、その属官を考課すること。
考課するにあたっては、みな詳細に1年の功過行能を記録して、それぞれ集め
て本人に対し読み示すこと。その優劣を論議して、9等第を定めること。8月
30日以前に校定すること。京官畿内は、10月1日に、考文を太政官に申し
送ること。外国〔げこく〕は、11月1日に、朝集使に持たせて申し送るこ
と。考の後の功過については、いずれも来年に入れること{もし、本司が考を
終わって以後、省(式部・兵部)が校定する以前に、罪を犯してその判決を下
され終えた場合には、状況に応じて、解任及び考第を降下するようであれば、
そのまますぐに処置をしてから校定すること。功があって進める場合も、また
これに準じること}。長官がいない場合は、次官が考課すること。

○02 官人景迹条

官人の行迹の功過を考に付けるにあたっては、みな日々記録しておくこと。前
任の官で私罪を犯すことがあり、その裁断がいまの任に就いてから下された場
合には、現任の官での犯罪と同じ扱いをする。改任したときに、前任での上日
を通計して考課する場合には、前任での功過もみな考課すること。注考の官人
(年間の功過行能を総合し9等の考第を注記する役人=当司の長官)は、ただ
その実際のことのみを記述することができる。みだりにその他のことを加えて
はならない。もし、注状が矛盾して考課の上下が不当{行迹や行状が高いのに
考第が下がっている、或いは、考第は優秀となっているが行迹は劣っている、
といった類をいう}、及び、その功過を隠して、それによって考課を上下させ
たならば、それぞれ過失の軽重に応じて、当該の官人の考課を下げること。朝
集使の考課が不正である場合も、またこのようにする。

○03 善条(その01)

徳義が名高いことがあれば、1善とすること。

○04 善条(その02)

清潔謹慎が顕著であれば、1善とすること。

○05 善条(その03)

公平といえるならば、1善とすること。

○06 善条(その04)

勤めに力を尽くし怠らぬようであれば、1善とすること。

○07 最条(標題)

最の条。

○08 最条(その01)

神祇の祭祀は、常典に違うことがなければ、神祇官の最とすること{少副以上
についていうものである}。

○09 最条(その02)

献替、奏宣、政治の論議が理に適っているならば、大納言の最とすること。

○10 最条(その03)

旨を承ったとき、それを聞き違うことなく、おっしゃったことを明敏に理解す
るようであれば、少納言の最とすること。

○11 最条(その04)

庶務を受理し、滞りなく処分したならば、弁官の最とすること{少弁以上をい
う}。

○12 最条(その05)

侍従し、覆奏し、滞りなく施行したならば、中務の最とすること{少輔以上を
いう}。

○13 最条(その06)

人物を選考し才能の抜擢に尽くしたならば、式部の最とすること{少輔以上を
いう}。

○14 最条(その07)

僧尼が道に適い、系譜の次第が乱れなければ、治部の最とすること{少輔以上
をいう}。

○15 最条(その08)

戸籍に漏れや詐称といった乱れがなく、倉庫に虚偽不正がなければ、民部の最
とすること{少輔以上をいう}。

○16 最条(その09)

武官を選考し、兵士・兵器をきちんと整えているならば、兵部の最とすること
{少輔以上をいう}。

○17 最条(その10)

判決が滞らず、与奪が理に適っているならば、刑部の最とすること{少輔以
上、及び判事をいう}。

○18 最条(その11)

きちんと保管し、出納が明らかならば、大蔵の最とすること{少輔以上をい
う}。

○19 最条(その12)

食物産物を供するに有能で、配下の諸部をよく主宰し治めたならば、宮内の最
とすること{少輔以上をいう}。

○20 最条(その13)

巡察が厳明であり、糺弾したことが必ず当たっているならば、弾正の最とする
こと{忠以上、及び巡察をいう}。

○21 最条(その14)

礼教を興崇し、盗賊を禁断したならば、京職の最とすること{亮以上をい
う}。

○22 最条(その15)

御膳のみつくろいに浄戒で誤ることがなければ、主膳の最とすること{亮、及
び典膳以上をいう}。

○23 最条(その16)

統率にあたって、作法や配置がきちんとしており、警守に失態がなければ、衛
府の最とすること{尉以上をいう}。

○24 最条(その17)

音楽がよく整い節奏を失わなければ、雅楽の最とすること{助以上をいう}。

○25 最条(その18)

僧尼が乱れず、番客が満足しているならば、玄蕃の最とすること{助以上をい
う}。

○26 最条(その19)

国用を支度し、計算が明らかならば、主計の最とすること{助以上をいう}。

○27 最条(その20)

きちんと保管し、出納が明らかならば、主税の最とすること{助以上をい
う}。

○28 最条(その21)

廐の馬をよく調教し飼養し、飼丁の脱走者を出さなければ、馬寮の最とするこ
と{助以上をいう}。

○29 最条(その22)

慎重に曝涼し、出納が明らかならば、兵庫の最とすること{助以上をいう}。

○30 最条(その23)

朝夕に常侍して、拾遺補闕したならば、侍従の最とすること。

○31 最条(その24)

監察を怠らず、出納が明密であれば、監物の最とすること。

○32 最条(その25)

宿衛に勤め、進退が礼に適っているならば、内舎人の最とすること。

○33 最条(その26)

職事が相当な場所に整理配置されており、その考課が常に正当なものであれ
ば、次官以上の最とすること。

○34 最条(その27)

清者を揚げ、濁者をはげまし、考課が常に正当なものであれば、考問の最とす
ること{式部・兵部の丞をいう}。

○35 最条(その28)

訪察が精審で、庶事を兼挙したならば、判官の最とすること。

○36 最条(その29)

公の勤めを怠らず、職掌に欠けることがなければ、諸官吏(品官や別勅才伎長
上)の最とすること。

○37 最条(その30)

事を記すのに勤め、稽失を隠すことがなければ、主典の最とすること。

○38 最条(その31)

詳録が正確で、校正が行き届いているならば、文史(図書寮の助以上)の最と
すること。

○39 最条(その32)

事を記すのに明確で、勅旨を失っていなければ、内記の最とすること。

○40 最条(その33)

訓導に方があり、生徒の業が充ちたならば、博士の最とすること。

○41 最条(その34)

占候医卜(陰陽・天文・療病・亀卜)で効験が多ければ、方術の最とすること
{10回のうちに7回の効験を得たのを多いとすること}。

○42 最条(その35)

盈虚〔ようきょ〕(満ち欠け)を推歩〔すいぶ〕し、理を究めることが精密で
あるならば、暦師(暦博士)の最とすること。

○43 最条(その36)

市中が擾乱せず、奸濫が行われなければ、市司の最とすること{佑以上をい
う}。

○44 最条(その37)

推問することが真情を得ており、申弁が明了公平であるならば、解部の最とす
ること。

○45 最条(その38)

礼儀が興行され、兵具が充備されているならば、大宰の最とすること{少弐以
上をいう}。

○46 最条(その39)

諸事をしっかりと済ませ、所部を粛清したならば、国司の最とすること{介以
上をいう}。

○47 最条(その40)

愛憎があることなく、言いつけの任務をよく成したならば、国掾の最とするこ
と。

○48 最条(その41)

防人を調習し、兵具を充備したならば、防司の最とすること{佑以上をい
う}。

○49 最条(その42)

問察に方があり、行き来の人が滞ることがなければ、関司の最とすること。

○50 一最以上条

1最以上4善あれば、上上とすること。1最以上3善あるもの、或いは最がな
く4善あるならば、上中とすること。1最以上2善あるもの、或いは最がなく
3善あるならば、上下とすること。1最以上1善あるもの、或いは最がなく2
善あるならば、中上とすること。1最以上であるもの、或いは最がなく1善あ
るならば、中中とすること。職事があらかたおさまっており、善や最が聞こえ
てこなければ中下とすること。愛憎に情を任せ、処断が理に背いていたなら
ば、下上とすること。公に背いて私に向かい、職務に廃れや欠けがあるなら
ば、下中とすること。官にあって詐り騙し、また、貪濁の状があるならば、
下々とすること。もし善最以外に、特に褒めるべきことがある場合、及び、罪
が殿に付けられる(除免官当には至らないが記録される)ことになったとして
も情状酌量の余地があるもの、或いは、殿に付けられることにはならなかった
としても情状を責めるべきものは、省校(諸司の考文を式部・兵部省で勘校校
定すること)の日に、みな臨時に量定するのを許可すること。

○51 分番条

分番の人(舎人・史生・伴部・使部・六位以下の散位等)は、毎年、本司がそ
の行能功過を量って、3等の考第を立てること。心控えめに謹み励み、執当を
きちんとこなすならば、上とすること。番上を違うことなく、言いつけの任務
をよく成したならば、中とすること。サボったり違反したりしてきちんと仕え
ず、執当で欠けたり失ったりのことがあるならば、下とすること。本人に面と
向かって定めること。終わったならば、つぶさに記して省へ送ること。

○52 兵衛条

兵衛は3等の考第を立てること。恭勤謹慎して、宿衛を法の定めどおりにし、
しっかりと弓馬を習ったならば、上とすること。番上を違えず、職掌に失な
く、弓馬を解すといえども、これに熱心でない場合は中とすること。番に違っ
て仕えず、しばしば失態を犯すことがあり、好んで私的休暇を申請し、弓馬を
習わない場合は、下とすること。

○53 衛門条

衛門の門部は3等の考第を立てること。担当の門を正しく守り、禁察を明らか
にし、担当の場でよく奸非を粛めたならば、上とすること。門に居ることを怠
らず、検校に失態がない場合でも、禁察に熱心でないならば、中とすること。
その門を勤めずに、しばしば過ち違えることがある場合、検校の所に事が多く
疎漏であるならば、下とすること。

○54 国郡司条

国郡司は、撫育に方があり、戸口が増益したならば、それぞれ元の戸数を基準
として、その10分の1ごとに計算して、それを通計すること。1分を加えた
ならば、国郡司に{掾、及び、少領以上をいう}それぞれ考1等を進めるこ
と。1分加えたごとに、1等進めること{増戸とは課丁が増えることをいう。
1丁は1戸と同じに数える。次丁2口、中男4口、不課口6口ごとに、それぞ
れ1丁と同じ。破除(記載籍帳からの削除)することがあれば、相殺してよ
い}。もし撫育が方に違っており、戸口が減損したならば、それぞれ増戸の法
に準じて、1分減ったならば、1等降すこと。1分減らすごとに、1等降すこ
と{課、及び、不課は、いずれも上の文に準じること}。田農を勧め課して、
よく豊かに植えさせることができたならば、また元の地数を基準として、その
10分の1ごとに計算して論ずること。2分を加えたならば、それぞれ考1等
を進めること。2分加えたごとに、1等進めること{熟田以外に、特によく墾
田した者をいう}。勧め課すことをせずに、それを以て損減することがあれば
{熟田の中に荒廃することがあった場合をいう}、1分損なったならば、考を
1等降すこと。1分損なうごとに、1等降すこと。もし数々の所で功があり、
いずれも考を進めるべきものであれば、また累算するのを許可すること。

○55 増益条

国郡で、戸口増益することをもって考を進める場合は、もしこれが招慰したも
の{蝦夷など、未だ籍に付けられていないいわゆる化外の民を招慰して、新た
に籍に付けて本籍地を定めた者をいう}、括出(籍の記載漏れを官司が摘発し
たもの)、隠首(籍の記載漏れとなっていた本人が自首したもの)、逃走者の
帰還であるならば、功の範囲に入れてよい。折生(戸口の分割など)の場合は
功の範囲に入れてはならない。もし戸口が、逆(逆党、逆国、蝦夷など化外の
国)に入ったり、失踪したり、罪を犯して流以上に配されたり、死者・逃亡者
を前の戸籍帳のまま改めずに実際と異なるまま記していたりする場合、及び、
逆賊に没落して減損したならば、考を降す例に依ること{逆賊に没落するに関
しては、人の力の制するところでない場合はいわない}。

○56 官人加戸口条

官人について、戸口を加え、及び、田農を勧め課すことによって、またその他
の功によって、考を進めた場合に、その後もし、それが事実でないことが判明
した場合には、たとえ恩赦を経た後といえども、その考をみな溯って改正させ
ること。

○57 犯罪附殿条

官人は、罪を犯して殿に付けたならば、みな獄案にしたがってそのまま記録す
ること。私罪(個人的な罪=私坐)は贖銅1斤ごとに1負と計算すること。公
罪(公事によって犯した罪=公坐)は2斤ごとに1負とする。それぞれ10負
を1殿とすること。上上の考に当たっていれば、殿があるとしても降さない
{私罪でないものをいう}。上中より以下は、1殿ごとに1等降すこと。公罪
の殿は、失態があって降すのでなく、もし当年の労劇が通常よりも異なること
があったならば、1殿を減ずるのを許可すること。過失で人を殺し傷つけた場
合、及び、罪の疑いがあって贖を徴収した場合は、いずれも殿の範囲には入れ
ない。

○58 犯私罪条

官人は、私罪の下中、公罪の下下を犯すことがあったならば、いずれも現任を
解く。法に依ってすぐに除免官当すべきものは、考校の範囲にない。いずれも
当年の禄を奪うこと{その罪が除免官当や私罪下中・公罪下下に至らない場合
に、特別に除名解任した場合には徴収しない}。私罪下中・公罪下下の考第に
よって解任した場合には、1年後に叙すのを許可すること。

○59 内外初位条

内外の初位以上の長上の官吏は、考の前に出勤した日数を総計して240日に
満たない場合、分番は、140日に満たない場合、もし帳内・資人であれば、
200日に満たない場合は、いずれも考しない(不考とする){分番の人につ
いて、もし長期の欠勤があり、考の前に不足を補うよう仕えたいと願ったなら
ば、みな通計するのを許可すること。公使として派遣している間に新たな補任
を行った場合には補任の日を起点として、また、補任の後、未だそちらへ出仕
しないうちに公使として派遣した場合には遣使の日を起点として、いずれもそ
の遣使期間を、新任の官司での出勤日数と同様に取り扱う。もし、ある官司に
仕える人が、遣使中に解任等の異動にあった場合には、異動後の遣使期間を前
官での出勤日数として通計するのを許可すること}。功過が熱心であり理を推
薦すべきようなことがあれば(?)、出勤日数が満たないとしても、別に記して省
に送ること。分番・長上とを通計して考する場合には、分番の3日を長上の2
日に当てること。毎年、考文の集まる日に、省が勘校して、色(三位以上の内
長上・五位以上の内長上・六位以下の内長上・外長上・内分番・帳内資人)ご
とに記録を作ること。つぶさに功過を記すこと。三位以上は奏裁すること。五
位以上は太政官が量定して奏聞すること。六位以下は省が校定すること。終
わったならば考第を唱示し太政官に申告すること。もし考が下第に当たり、状
を尽くすことができないことがあったり、量定校定を明らかにしがたい場合
は、使に持たせて勘覆すること。その善悪は後年を待って、総合的に定めるこ
と。もし考を過ぎて後、理を訴えて従わない場合、それをあらうにはまたこの
ようにすること。

○60 任二官条

2官以上を兼任した場合には、それぞれ官考に依ること。省考校の日に、兼任
の諸官での功と過を相殺したり累計したりして、それを、そのうちの官位相当
の高いひとつの官での考とするのを許可すること。もしいずれか1官で私罪を
犯して解任すべき場合は、他の官もいずれも解任すること。兼任のうちの1官
を解任した場合、そこで累計すべき考を、現任の官での考に通計するのを許可
すること。

○61 大弐以下条

大弐以下、及び、国司は{目以上をいう}、毎年分番して朝集すること。所部
のうちの、現任及び解代(守~外散位・郡司・国造、軍団大・少毅等)をみな
存知しておくこと。在任以来の年別の行迹は、勘問に随って答弁すること。

○62 内外官人条

内外の官人は、考に準じて解官する場合には、そのまま執務させてはならな
い。符報を待ってすぐに解任すること。

○63 応考之官条

考すべき官吏が、罪を犯して獄案ができあがった場合、考日(8月いっぱい)
にすぐに考状に記録すること。もし他司の人で功過があるならば、記録して本
司に牒し、考に記録させること。在京の断罪の司(すべての在京諸司が相当)
は、処断の罪を、9月30日以前に、いずれも記録して省に送ること。

○64 官人犯罪条

官人が罪を犯して、勅断による罪の軽重変更があった場合には、みな勅断に
依って殿を付けること。もしその罪が、殿にならず、勅で考に付けさせる場合
には、その罪に依って考に付けること。別勅で放免する場合、及び、恩降(恩
赦や勅による罪の減降)に遭った場合は、いずれも(刑罰は受けていても)殿
の範囲に入れない{その罪が私罪で、断が徒〔ず〕以上である場合に、恩免
(恩赦や別勅による放免)を被って、当年の考を上とするべきであれば、また
殿に準じて降すこと。ただし、降して下第に至るようなことがあってはならな
い}。もしその罪が免官以上である場合、及び、贈賄など不当利得の罪を犯し
て恩赦以前に獄成った場合には、(たとえその後の恩赦等でその罪が免じられ
ても)その罪を含む景迹を以て通計すること。考を落とし、禄を奪うことは、
いずれも通常の法に依ること。その罪が除免でなければ、(たとえ私罪下中以
下であっても)解官しない。

○65 殊功異行条

毎年、諸司は、国郡司の政事の殊功異行、及び、祥瑞・災蝗、戸口・調役の増
減、当界の豊倹(農地の豊かさ)、盗賊の多少があること、を知ったならば、
いずれも記録して省に送ること。

○66 家令条

家令は、毎年、本主が、諸司の考法に準じて考を立てること{嬪以上、及び、
内親王家事は宮内省に付けること}。考し終わったならば、省に申告して案記
すること{考に準じて解任すべき場合は諸司の法と同じ}。

● (考外位) -- 標題

外位を考することについて。

○67 考郡司条

国司は、毎年、郡司の行能功過を量って、4等の考第を立てること。清謹して
公に勤め、勘当が明審である類を、上とすること。官にあって怠らず、事を執
るに私がない類を、中とすること。その職務を果たさず、しばしば過ちを犯す
ことがある類を、下とすること。公を背いて私に向かい、貪濁の状がある類
を、下下とすること。軍団の少毅以上が、統領すること方があり、部下が厳粛
に整っていれば、上とすること。清平に謹恪して、武芸を称えるべきは、中と
すること。事に於いてこれといった勤めがなく、武芸に長じていないならば、
下とすること。しばしば失誤があり、武用の役に立たぬ場合(?)は、下下とする
こと。毎年、国司は考にあたっては、本人に面と向かって定めること。終わっ
たならば、つぶさに記して、朝集使に持たせて、省へ送ること。下下の考は、
当年の内に校定して、すぐに解任すること。

○68 国博士条

国博士は、3等の考第を立てること。官にあって怠らず、教導に方があれば、
上とすること。教授することを怠らず、生徒の業が充ちたならば、中とするこ
と。その職務を果たさず、教訓に欠けるところがあれば、下とすること。医師
は、効験の多少に応じて、10回のうち7回以上を得たならば、上とするこ
と。5回以上得たならば、中とすること。4回以下を得たならば、下とするこ
と。

○69 考帳内条

帳内、及び、資人は、毎年、本主が、その行能功過を量って、3等の考第を立
てること。恪勤して怠らず、清廉で、主の意に適うようであれば、上とするこ
と。言いつけを守ることが意に適い、産業を怠らないならば、中とすること。
好んで私的休暇を請い、しばしば失誤することがあれば、下とすること。

● (考貢人) -- 標題

貢人を考することについて。

○70 秀才条

秀才の試験は、方略の策2条(2問)。文章・道理ともに高ければ、上上とす
ること。文が高く理が平凡である場合、理が高く文が平凡であるならば、上中
とすること。文理ともに平凡であれば、上下とすること。文理あらかた通じて
いるようならば、中上とすること。文が拙く、理に滞っているならば、みな不
第(落第不合格)とすること。

○71 明経条

明経の試験は、(選択した経のひとつが)周礼・左伝・礼記・毛詩であればそ
れぞれ4条(ひとつの経に関して4問出題)、(選択した経のひとつが)その
他の経であれば、それぞれ3条、(必修の経である)孝経・論語については、
併せて3条、(計10~11問)みな経の本文及び注を挙げて問うこととす
る。答者が、設問の義理(意味や理)を弁明(理解説明)したならば、しかる
後に、通じた、とすること。10、通じたならば、上上とすること。8以上通
じたならば、上中とすること。7通じたならば、上下とすること。6通じたな
らば、中上とすること。5つ、及び、ひとつの経に於いて全問不通である場
合、もしくは、論語・孝経で全問不通である場合は、みな不第とすること。2
経通じて(上中以上の成績で及第して)、それ以外に、更に別の経にも通じて
いる(と主張する)場合には、経ごとに、大義7条を問うこと。5以上通じた
ならば、(その経に)通じている、とすること。

○72 進士条

進士の試験は、時務(治国の要務)の策2条。帖〔じょう〕して(1行の3字
を板で隠して)読ませる所は、文選の上【《ころもへん》+失】〔じょうじ
つ〕から7帖、爾雅から3帖。策の文詞が順序だっており、義理が確かで当
たっており、併せて、帖を通過したならば、通(合格)とすること。事の義に
滞ったところがあり、詞句が不倫である(=先儒の典籍の文に似てない=類例
がない)もの、及び、帖を通過できない場合は不(不通)とすること。帖・策
の全問に通じていたならば、甲とすること。策で2通し、帖で6帖以上通過し
たならば、乙とすること。それ以外はみな不第とすること。

○73 明法条

明法の試験は、律令から10条{律から7条、令から3条}。義理を識達し、
試問して疑滞することなければ、通とすること。あらかた綱例を知っている
が、指帰することを究めてなければ、不とすること。全問通じていたならば、
甲とすること。8以上通じていたならば、乙とすること。7以下通じていた場
合には、不第とすること。

○74 貢挙人条

貢挙人の試験は、みな卯の時(午前6時頃)に出題すること。当日中に答案を
提出し終えること。式部は監試すること。当日中に終了しないものについては
考しない(採点しない=失格)。終わったならば、(採点者は)本司の長官と
対面して等第を定めて唱示すること。

○75 貢人条

貢人(国学からの推挙者)は、みな本部の長官(国守)が、太政官に貢送する
こと。もし長官がなければ次官が貢すこと。その人は朝集使に随って赴集する
こと。到着の日にみな弁官に引見して、すぐに式部に預けること。すでに貢送
を経て、事情があって試験するに及ばない場合は、後年、試験するのを許可す
ること。大学の挙人(大学からの推挙者)は、状をつぶさにして太政官に申告
すること。諸国の貢人と同様に試験すること。試験を終えて及第したならば、
奏聞して式部に留めること。不第ならばおのおの本色(在学9年未満なら本学
へ9年経っているなら本籍地へ)へ還すこと。


                (公開:2000/03/18 更新:2000/03/18)
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訳者:しげちゃん(猪狩浩美) Email: HGF03435@nifty.ne.jp
  「官制大観」 http://www.sol.dti.ne.jp/‾hiromi/kansei/
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