Memories Off 2nd(DC) | |||
メーカー | KID | 総合評価 | 85点(良作〜名作) |
ジャンル | ADV | ||
発売日 | 2001/09/27 | ||
シナリオ | 打越鋼太郎・三浦洋晃・日暮茶坊・館山緑・中沢工・佐々木智広・西川真音・笹成稀多郎 | KIDの出世作にあたる「Memories Off」の続編。 ……ってまんまだし。 佳作以上の物を安定して作るようになった同社が看板作品をどのレベルで仕上げるかに注目が集まった。 |
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キャラクターデザイン | ささきむつみ | ||
サウンド | 阿保剛 |
個人的エピソード |
前作の「Memories Off」は個人的にKIDを見直すきっかけでしたし、 「夢のつばさ」以降買ってませんでしたが、「てんたま」とか「Close to」の評判もいいみたいだったので。 マジで昔の姿からは想像もつかないなぁ(^^; |
内容 |
うだるような暑さ、かしましいセミの鳴き声。 季節は、まさに夏本番を迎えようとしていた……。 主人公「伊波健」は同級生の「白河ほたる」と交際している。 ずっと変わらないと信じていた。2人の関係も、今の幸せな状況も。 それなら何も考えずに、まるで空を漂う雲のように、 健は流れに身を任せていればよかったのだから……。 しかし、夏休みのある出来事を境に、健の日常に変化が訪れる。 些細な誤解……。すれ違う心……。 小さな変化は、やがて取り返しのつかないところまで膨らんで……。 2人の間にある、数え切れないほどの想い出。 けれど、その想い出を振り切ってでも、一緒にいたいと思える女性が現れたとしたら……。 健は選ぶことができるのだろうか? これから共に、かけがえのない想い出を築いていく、その人を――。 (パッケージ裏より) |
システムとか |
非常によくできたシステムだと思います。 コンシューマのギャルゲーにおけるシステムとしては完成の域に達しているのでは? ビジュアルメモリの必要ブロックは28ブロック。 これで32個のセーブと、選択肢が出た時点で行われるクイックセーブ(16世代分)、およびシステムデータの全てを管理します。 このセーブおよぶクイックセーブは、セーブした時間のみならず、そのシーンのタイトルやサムネイルも表示されるため、どんなシーンだったか忘れる心配もありません。 難易度はそれほどでもありませんし、EDやCG回収用の再プレイにも配慮されたシステムデザインになっているので、数に困るということはないでしょう。 私の場合は、クイックセーブだけでも十分事足りました。 スキップは既読スキップとRトリガによる強制スキップを実装。 速度はかなり高速で再プレイ時には便利だと思います。 バックログは音声再生機能つきの物を用意。 どこまで戻れるのかは調べていませんが、数えるのに飽きるほど戻れます。 長いこと「最後にロードした時点まで戻れる」と思い込んでいたくらいですから(^^; また独特の機能として、1回クリアしたキャラのシナリオ分岐からプレイしたり、 いきなりED近辺から始められるショートカット機能が用意されています。 これと高速スキップのおかげでイベント回収もかなり楽になっており、こうした配慮には好感が持てます。 鑑賞系はCG・BGM鑑賞とOPムービー鑑賞。 他におまけ要素としてVMのアイコンやシナリオダウンロード機能が用意されています。 ADSL環境なのにBBAを持っていない私はダウンロードできないのが残念です。 |
絵とか |
キャラクターデザインはささきむつみさん。結構ファンです(^^; あえて髪の毛などを現実的な黒や茶系にしただけあって、 絵的な派手さには若干欠けますが、魅力的な絵が多いと思います。 むしろ、見た目上の安易な差別化がなかった分だけシナリオ上の描写や声優さんの演技による 描き分けが求められることになったので、これで良かったかなと。 #それに少なくとも某ママ先生と「メモオフ」のみなもの見た目ほどは似てませんしね(爆) 前作の頃は原画とキャラデザの違いにやや違和感がありましたけれど、今回に関して言えば その辺りもしっかり改善されています。 まあ、さすがに本人が書くキャラの絵よりは劣る感は否めませんが……(マテ 立ち絵の枚数も随分増えていて、この辺り約2年にわたって色々な作品を作ってきた 経験がしっかり生かされているんだなぁと思います。 CG枚数は鑑賞モードによると114枚(パターン違い除く)。 うち18枚は設定画やポスターに使われた絵なので、実際のCGとしては96枚。 どうしてもエロゲ慣れしてるともうちょっと多くてもいいかな?と思わなくもないですが、 物足りなさとかは特別感じないと思います。 |
音楽・音声とか |
BGMは当然ながら内臓音源で再生、全30曲。うち2曲はボーカル。 また6曲はヒロインほたるがピアノを弾く関係もあってクラシックのピアノ曲となっています。 ほたるの演奏としても、BGMとしても使われますが雰囲気にあっていて良かったかと。 2曲ほどは本職の方が弾いたものを取り込んでいるようですし、手間の甲斐があったというところでしょうか? 質の方は若干バラつきはあるものの、概ね高め。 恒例のお気に入りは「Frosted Grass」「Rain then clear」にOPとEDの両ボーカル曲。 特に大団円で流れる「Rain then clear」には曲のせいで涙が…(ぉぃ 音声は端役も含めて完全なフルボイス。 声もキャラに合っていると思いますし、演技力の方も十分だったと思います。 鷹乃と希はもうちょっと頑張ってもよかったかなと思わなくもないですが、とりあえず十分ということで(^^; テキストのおかげで冗長性もないですし、この辺りは良く作ってあるなと素直に感心。 |
シナリオとか |
切なくて痛い、あるいは痛くて切ない青春恋愛物。 まあ、「痛み」と「切なさ」のどちらが先に来るかは人にもよるでしょうが、例によって 一言で定義するならこんな具合になるかと思います。 まあ最初から彼女がいるという設定段階で感づくかとは思いますが、ほたる以外のシナリオは 全て「ほたるという彼女がいながら他の女性に惹かれていってしまう」という流れです。 このほたるがとにかく一途でしかもいい娘なので、別れに至る展開では乗り切れないプレイヤーもいるかとは思います。 私も「なんでこんないい娘をふるんだか」と思いましたし(^^; ですが、その一点を除けば主人公の苦悩や、各ヒロインの思いがくどくなりすぎない程度に丁寧に描かれているので、終盤での修羅場(もっともほたるが身を引いてしまうので修羅場マニアの方々が喜ぶようなド修羅場はあまりありませんが…)や破局に至る部分の説得力というか引き込む力はあるかと。 また音声面でも軽く触れましたが、テキストに気を遣っているのか話の進行自体は 結構スローテンポでセリフも全て喋る割には冗長性は低く、この辺りも気に入りました。 さらに言うならば、大勢で書いているとどこかで破綻や齟齬が生じてしまうものですが、 しっかり管理しているらしく主人公の性格・行動への違和感というのは薄かったです。 で、ここまで誉めてきたので最後にちょろっと難点を。 テーマが「彼女との別れ」だったためかシナリオによっては、導入などの部分で若干強引さを感じました。 例えば巴シナリオは導入部分で「いくら何でもそんな簡単に恋に落ちるのか? キスするのか?」と思いましたし、静流シナリオでは「健はともかく、あの静流さんがここまで彼を好きになってしまうほどの何かはあったっけ?」と考え込んでしまいました。 それ以外の部分ではしっかり行動や心理の背景が描かれているので、どうにも その辺だけ気になってしまいます。まあ、それだけ他がよくできていると言えますが……。 あ、「恋は理屈じゃない」とかの言い訳は不可ってことで。 それやるとシナリオなんて意味なくなるんで(笑) まあ、若干テーマ先行の感もありますがクオリティは文句なく高かったです。 |
総評 |
うん、とりあえずいい買い物だったと思います。 「萌え」とかは薄いですし、「泣き」ともまたちょっと違うけどいいお話でした。 まとめ。極めて良質の恋愛物語。 「恋愛とは常にどこか痛みが伴うもの」という真理を見事に描いていると思います。 痛みやほろ苦さを伴う物語が苦手ならともかく、それ以外の方は買っても損することはないでしょう。 決してエンターテインメント性の高いわけでも、強烈に萌えたわけでもないのに85点という評価は このサイトでは実質最高クラスに近い評価だということを付記して締めくくらせていただきます。 |
書いた時点での総プレイ時間 | 約26時間(コンプ) | ||
お気に入りのキャラ | 白河ほたる・飛世巴 | ||
お気に入りのセリフ | 「今さら恋人面しないでよ!」 「大事なものを諦めるのなんて馴れてる」 「でもね? 風は必ず蘇るの」 「『…あたし、勘違いしちゃうぞ』」 |
初版2001/10/06