まえがき

 

 水生生物の鑑賞、これは近年我国でもある程度普及されつつある。たとえば、居間の空間の一部分に水槽をおき、それをインテリアとして楽しみ、あるいは人目につくホテルのロビーや会社のインフォメーションなどでみかける。

 水生生物の育成にも、淡水のものや海水のもの、その中には養殖のように大きくするだけを目的とするものや水族館のように人が見て楽しむものなどがある。これらの研究はなされ現在では、比較的高いレベルまで至っていると言えよう。

 しかし、我々が指すアクアリュウムは、魚類を飼育する技術はそこそこは確立されているものの、水性植物を育成する技術は我国では皆無と言っても過言ではないだろう。 西欧諸国では古くからこのような研究がなされ、この技術がかなり進んでいると言えよう。

 しかし、勘違いしてもらっては困るのは、西欧と我国の気候の差や水質の違いから、それらの技術をそっくりそのまままねても良い結果は出ないということである。例えば、西欧では粘土質の肥料などを底砂に混ぜる。しかし、このようなことを行っても我国の大半の地域では無意味どころか害になることさへある。なぜなら、西欧の水道水には炭酸塩などのイオンが多く含まれている。そのため、イオン交換性の高い粘土質のものを混ぜる訳である。我国の水道水はこのようなイオンは、西欧と比べるとかなり低い値を示す。そのため粘土質の肥料を使用すれば、せっかく水道水に含まれるものや肥料として与えた微量元素を交換してしまう。また液体肥料や錠剤のものも、日本の水質に合わせたものが要求されるだろう。このように西欧のものをそのまま説明書どうりに使用するのは大きな間違いである。そのため底砂に混入する肥料であれば、設定時バクテリアを発生させそれを活性する材料として水質を分析し、それに適う量を添加する。そうすれば水生生物をその水槽へ投入しても、それらの給餌、排泄、死亡に伴う水じたいへの有機物が供給されたとしても浄化する能力をもち、その生態系が正常に働く訳である。

 この書はそれらの育成技術を生物化学的、物理化学的に水族環境学を基にその生態を探って行きたいと思う。

                       

アクア ガーデン 宮本久士          

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