第6回 生態系を維持する 濾過2

 前回までに濾過材や濾過についていろいろと話を進めて参りましたがもう少し詳しくそれらについて考えてみましょう。

 自然界ではあらゆるところに微生物が住みつき人間が任意に汚染しない限り天変地異を除いては物質の循環は問題なく行われます。これは地球が40億年という歳月をかけて生命を育む土台を築いたからです。
 これらの物質循環はすべて水を介し反応され酸化や還元が行われるのです。
 自然でもし何らかの原因で有害物が多く発生してもそれらを泥などの吸着能力の高いものへ吸着させ、それを徐々に微生物が分解し無害化を進行させ高次生物への影響を防いでいるのです。言い換えるなら生態系を維持するということになるのです。
 われわれの持つ水槽でもセットしたときは微生物がほとんど活動をしていない状態でそこに魚や水草を投入すれば一時的にバランスを崩し藻類の発生や生体の致死が起こる場合があります。
 自然界ではその生態系に見あった生物群が適当な個体数で推移し、その生態系を築いているのです。通常はその生物が生活するのに必要な生産者と捕食者、その生態系を維持する浄化能力を持った微生物群が釣り合っていなければその生態系は成り立たないのです。

 水槽でも調整のとれた水が流水のごとくに供給され老廃物がいつも流し去られるような状況であれば微生物が存在しなくても良いでしょう。しかし、水槽という環境ではそのようなことはできません。
 セット時など水を頻繁に交換し、微生物群がその老廃物量に見合っただけ活性するまで行えばよいのです。しかし、そうはいかないでしょう。1日に調整された水を何回も換えることは不可能でしょう。

 ではどうすればよいのでしょうか。
 自然界では老廃物が多くなった場合低床の泥や有機腐植物などがその有害物を吸着(有機質は天然鉱物などが吸着)、イオン交換や錯化(イオンなどは天然鉱物がイオン交換、天然有機物が錯化)するのです。ただしこれも限度を超えれば処理できず生態系は破壊されます。これらを微生物が徐々に分解し無害化するという自浄能力を持っています。
 水槽でもこれをまねすればよいのです。
 ただし、気を付けなければいけないのは水槽では供給される有機物(老廃物になるもの)量が比較的多いということです。

 水槽セット時水を張り空回し(魚や水草を入れず水を張った状態でフィルターを通常に稼働させる)をする。これは今や常識となっています。しかし、この空回しでも水道水に含まれる有機物やイオンだけで十分微生物が活性するかは疑問です。もし、この空回しを60cm水槽で1週間の行ったとしましょう。そこはネオンテトラを10匹入れるのと100匹入れるのとでは給餌量や排泄量など老廃物の生態系への供給量が異なります。そのときの微生物浄化能力は前者も後者も同じで生態系汚染度は後者の方が格段に大きいことはおわかり頂けるでしょう。そのため、水槽を空回しする場合何らかの有機物を少量加えることを行うことが賢明で、その有機物を分解する微生物を育成する、強いては飼育生物を投入した後の浄化能力を確保することができるのです。この投入物は淡水水槽では観賞魚の餌等が身近なものですが、分解されるとビタミンやミネラル等の有用物が溶解するものが良いでしょう。おすすめは水草を植え込まずともフロラベースやニューフロラステックプロなどがよいでしょう。これらには天然植物の胚芽成分が配合されているためビタミンやミネラルが分解時に十分水槽に供給されます。

 しかし、飼育生物如何によってはこれだけでは十分とはいえません。
 底面濾過を行い砂を濾過層と見立てた場合老廃物量がある程度少なければその生態系は自然の摂理と同様に維持されます。しかし、たいていはその能力を上回る老廃物が供給されます。その能力を上回る分だけ底砂に蓄積された老廃物を排出せねばなりません。それが底砂掃除での換水ということになります。
 その老廃物供給量と微生物活性量、換水量が釣り合ったところで生態系は美しく維持されるのです。
 外部式フィルターや上部式フィルターを使用する場合も同じ理屈です。

 しかしここで通常は初期バランスをうまくとれません。そこで頼るのが天然同様、過剰な有機物やイオンなどの老廃物を一時的に取り除く作用をするものです。
 これらは活性炭、ゼオライトといったものをはじめ高度なものではジャレコバイオチップやニトレックスといったものがあります。
 活性炭やゼオライトなど目が細かいほど即効性が高く水をきれいすることができますが持続性に欠けます。目の粗いものは持続力が大きく比表面積の大きな粒状炭が観賞魚の水槽では適しています。しかしこれらは吸着やイオン交換が終わると生物濾過材としては完全なものとはいえません。そのため定期的(2週間から3ヶ月)に交換する必要があります。バイオチップなどは自然界の泥の作用から学び生まれたもので初期微生物不活性時にイオン交換や吸着(平均細孔分布200オングストローム、約200平米/g格子状短繊維鉱物)で老廃物の水溶化を防ぎその能力が劣化するとともに表面で微生物活性を促し生物濾過へとバトンタッチするように設計されている優れものです。
 これらの濾過材は初期立ち上げだけではなく調子を崩したときにも有効で使ってみればわかります。
 無論活性炭やゼオライトなども交換して使えば有効です。

 濾過材の寿命は多孔質であればあるほど目詰まりが多くなり表面積を縮小していきますそのため交換時期は半年から1年程度です。濾過材の洗浄はできるだけ行わず丸ごと交換することがよいでしょう。
 アクアガーデンの1750レイアウト水槽では外部式フィルターが4基配備され3ヶ月〜4ヶ月毎に1基ずつ丸ごと入れ替え、1台のフィルターは1年以上なにもせず放置した状態となっており5年以上ローテーションしています。
 フィルターは流量が半減した状態(目詰まりがある程度進行した)で正常な生物濾過を行うのです。その目詰まりのなかには脱窒を含めた窒素循環や微量栄養素の供給が行われるのです。それらは人間が汚した大気の有害物を溶かし込んだ雨を自然の土壌が浄化してくれるのと同じ理屈なのです。 

 

※錯化
 イオンなどが有機物やその他のものに取り込まれ他のイオンや水質等の条件の影響を受けにくくなる状態
 鉄などは中性付近で不溶で水草には吸収できないが錯体にすれば水溶化する