「うー、寒ぅーっ」
散歩(兼 初詣)から帰ってきて、アリスはエアコンの正面に直行する。
暖房を入れたままにしておいたおかげで、部屋の中はポカポカだ。
「火村、コーヒーでええ?」
「……いや、ピールがいい」
「君なぁ。正月早々、昼間っから飲んだくれかい」
「日本の庶民として標準だろう?」
コイツ、根に持ってやがる… というようなアリスのムッとした顔に、火村は苦笑した。
「今は熱いものは飲みたくねえんだよ」
「あ」
さっき神社の境内でうっかり熱いまま飲んだ甘酒のおかげで、舌がヒリヒリしてかなわない。
「どれ、見せてみ?」
「ん゛」
犬のように「べ」と突き出された舌に、アリスは笑って自分の顔を近づけた。
「…っ! ア、アリス?」
「んー? 舐めたら治るかと思ったんやけど」
咄嗟に口を押さえた火村に、イタズラ成功とばかりにアリスは笑い転げた。珍しくも真っ赤になった助教授の姿に、笑いが止まらない。
「てめぇ……」
まだ笑ったままのアリスを捕まえ、口封じの刑に処する。くぐもった抗議の声が甘い吐息になるまで。
「んっ、……むらぁ」
やがて触れるだけの口付けに焦れたアリスが火村の名前を呼ぶのに合わせて、吐息をも飲みこむようないつものキスに変える。
力なく背中にしがみ付いてくるアリスを感じながら、絡めた舌の痛みにこっそり顔を顰める火村だった。