EMPEROR

”In The Nightside Eclipse”
 ブラックメタルファンなら誰もが知っているノルウェーのブラックメタル1ST。(日本盤)妙に寒々しい浮遊感溢れるKEYをバックに疾走するスタイルであり荒涼感は半端ではなく如何にもブラックメタル然とした基本的スタイルである。メンバーによる犯罪の話題で持ちきりなバンドだが(それは横に置いといて)ブラックメタルとしての楽曲クオリティは極めて高い。音は良いとは言い難いもののブラックメタルのプロダクションならこの位が丁度良い気がする。ノイジーかつ禍々しくも騒々しく、そして冷たい感覚がEMPERORのアルバムの中では一番表現されているアルバムだと思う。またとてつもなく荘厳ですらある。ズバリ、ブラックファンなら必ず持ってないといけないマストアイテムでしょう。日本盤のボーナストラックにはENSLAVEDとのスプリットとしてリリースされた音源がついている。ブラック史上における名盤と言っても過言ではない。メロディアスなI AM THE BLACK WIZARDSは名曲であり古い作品ではあるがその魅力は今でも色あせる事は無い。
”Anthems To The Welkin At Dusk”
 ノルウェーのブラックメタル2ND。前作に比べ荘厳さが大幅にUpされ勢いも半端ではない。特に1曲目〜2曲目にかけての畳み掛ける展開が非常にカッコ良く鳥肌ものである!(この部分だけでも聴いてみる価値あり!/大袈裟?)また楽曲が前作と比べ若干、複雑になりキャッチーさは薄れた感があるが暗黒世界がより露骨なほど明確になっている。この音が作り出す闇の世界はとても深く恐るべし!てな具合である。ドラマーがTRYM氏に変わったため、ドラミングに鋭さが増し異様なまでに速い!アルバムの質を上げるのに大きく貢献している。プロダクションは前作同様ブラックメタルなら丁度良い音質である。(Voが小さい録音なのが唯一気になるが...)また、VoであるIHSAHN氏のクリーンヴォイスが頻繁に聴けるようになりドラマ性も一段と高まった。荘厳でシンフォニックな感覚とブラックメタルの融合としては最高の完成度ではないだろうか?ズバリこれも名盤。暗黒の世界観にどっぷりと浸かりたい人は迷わずコレ!聴けばその凄みは一瞬で理解できるだろう。
”\ Equilibrium”
 ノルウェーのブラックメタル3RD。そして問題作でもある。このアルバムに関して賛否が分かれるところだろう。そうコレまでのENPERORとは違い少しモダンになった。ギターがかなり目立ち始め、音の分離が良くなったと言う事が大きな違いだろうか?前作までのイメージとは全く違う。またKEYのパートに関しては楽曲と重なる部分と完全に無い部分とハッキリしている。よって寒々しい展開が失われたような気もする。そう、よりエクストリームにそしてアグレッシヴな変化を遂げている。音楽としての雰囲気ではなく質として大きく進化したと言える。こう書くとEMPERORの個性が失われたと誤解する人が多いだろう。確かにブラックメタルとしての雰囲気は完全に消えている。だがエクストリームな面で考えるとかなり個性的な事をやっていると思う。どう書けば良いか分らないが独自性は確かにある。楽曲における曲展開を聴いたら分っていただけるだろう。と言う訳で否が多い中、俺は気に入ってる作品である。また、前作までのブラックメタルとして荘厳ではなくメタルとして非常に荘厳な雰囲気を持っている。ブラックメタルとして考えるなら明らかに後退したが純粋なエクストリームなメタルとしての完成度、そして質はずば抜けて高い。ブラックメタルアルバムで聴くのではなくエクストリームメタルとして聴くのが良いかと思う。
”Prometheus(The Discipline Of Fire & Demise)”
 ノルウェーのブラックメタルの4THにしてラストアルバム。ノルウェーブラックメタル界を支えていた大御所バンドの最後のアルバムはコレまで以上にプロフェッショナルで質の高いアルバムを残しその生涯に幕を閉じることに。なんでも中心メンバーであるIHSAHN氏とSAMOTH氏の間で音楽観の相違と言った問題が発生してしまい結局バンドは続けられないと判断、解散するに至ったらしくなんとも寂しい結末を迎えてしまった。コレまでの個々のプロジェクト叉はバンドにおいて相違点は判断できるかと思う。アグレッシヴな方向性を追求するSAMOTH氏、クラシカルな方向性を追及するIHSAHN氏と言った感じで求めるモノが違ったのだろう。さておき楽曲の内容は完全にIHSAHN氏寄りの作風だと言える。(曲は全て彼が書いているらしい)冒頭で書いたようにプロフェッショナルで丁重かつ緻密なアレンジに包まれた実にクラシカルな内容で、もはやブラックメタルの枠を遥かに超越した内容は彼のプロジェクト(バンド?)のPECCATUMの要素が大きいと言える。勿論アグレッシヴな部分もしっかりしており一切手を抜いてません。といった状況。まさにプロフェッショナル。また、この手をよくシンフォニックブラックと言った言葉を用いるがこの作品はそれすらも通り越し曲自体がクラシカルな方向である。どちらの要素も実に上手く溶け込んでおり中途半端、極端と言った次元ではなく完全に一体化しているようにすら感じられる。これぞメタル要素をフンダンに盛り込んだDARKで激しいクラッシックに他ならない。それによってVoであるIHSAHN氏による荘厳でオペラに半分足を突っ込んだ様なクリーンVoもコレまでの作品以上に大胆で比率が大きい。コレまでの進化の過程において考えてみると当然の流れなのかもしれない。EMPERORが歩んできた進化の集大成と言うべき仕上がりを見せている。終焉を迎えてしまったノルウェーのブラック界の重鎮。皆様、ご静聴を。

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