MAYHEM

”Deathcrush”
 ノルウェー産、ブラックメタル重鎮の記念すべきスタジオ録音作品。全6曲の17分のMCD。しかしこのバンド、実にリリース数がブートも合わせて凄まじい数がある。シッカリとしたアルバムよりブートが極端に多いときたもんだ(笑)流石はカルトバンドといった感じであろうか。さて、ここで聴ける音楽形態はブラックに片足突っ込んだスラッシュメタルである。ドカドカと突っ走っており非常に乱雑かつストレート。若気の勢いと北欧アンダーグラウンドの熱気をダイレクトに味わえる作品となっている。このMCDでVoをとっているのはMANIAC氏だが一旦バンドを離れてしまう。その後にDEAD氏が加入して本格的なブラックメタルになっていくわけだが、彼は1STをリリースする前に自殺してしまう。彼の活躍はブート盤やLIVE盤で聴くことが出来るが.....ちゃんとしたアルバムを残して欲しかった。非常に残念。
”De Mysteriis Dom Sathanass”
 もはや説明不要のノルウェーのブラックメタル、1STフルレンス。DEAD氏が自殺した事と、ご存知のとおりメンバーのEURONYMOUS氏はこのアルバムがリリースする前にBURZUMのCOUNT氏に殺害されるといったショッキングな事件が立て続けに発生。災難続きで呪われたバンドとして有名だろう。まぁ、この辺の経緯は他のサイトでも詳しく説明されているので省略。さて、肝心の音なのだがこれまた凄い怨念が込められた作品。DEAD氏の代わりにVoをしたのがハンガリーのブラック/スラッシュバンドのTORMENTORのATTILA氏。彼が参加したことによりMAYHEMの中でも異色の出来になったといっても過言ではないだろう。まるで呪文を唱えているかの如く繰り出される言霊、まさに邪悪な怨念の塊と言える。特にアルバムの最後を飾るタイトル曲でのVoワークは素晴らしいの一言。オペラ調に歌い上げるのだが不安定な所が逆に不穏感を煽りまくる。この人、普通に歌っても邪悪なんだろうな....(笑)また、新たに加入したご存知、HELLHAMMER氏の猛烈なドラミングも速いだけでなく随所にロールを絡ませ非常に個性的。このバンドにまつわる一連の事件の話題性だけでなく音楽性がシッカリと伴っている所がこの音源の凄いところである。リリースされたのが1994年だが今聴いても全く古さは感じられずブラックメタルとしての完成度は非常に高い。ブラックメタルファンはコレを聴かなきゃ始まらないってのも頷ける。ズバリ名盤、必須である。
”Wolf's Lair Abyss”
 ノルウェー産、キング・オブ・ブラックメタルが放つ復活作。Voに一旦バンドを離れていたMANIAC氏がカムバックした作品。彼もまた独特の毒牙を振りまく邪悪な声の持ち主である。音の方だが異様に激しさを伴った演奏が際立っている。非常にブルータルな内容と言えよう。また、ギャワギャワ叫ぶ、ねちっこ〜いVoが邪悪さにより一層磨きをかけ、味わい深いモノに仕上げている。また、HELLHAMMER氏の異様にファストな激烈ドラミングが際立ち、まさに本領発揮。マジで凄まじい事この上なし。1STの内に篭るような怨念じみた邪悪さとは、少し趣が違いあくまでブルータルに変貌している。ただ妖気すら感じられた1STは決して超えていないので悪しからず。
”Grand Declaration Of War”
 ノルウェーのカリスマブラックの2ND。音楽性が随分と変わってしまった問題作。突っ走るブラックとは違い、プログレッシヴな領域に挑戦。が、結局は裏目に出てしまった作品。疾走パートが減り(それでも速い部分もありHELLHAMMER氏のドラミングは凄まじい)後半の失速と知的になりすぎた展開が従来のMAYHEMとは全く違う。つまり、らしくないのだ。今時の音になっているのでモダンになったしテクノロジーも多少導入されている。音楽性からすれば進化したのかも知れないが俺の求めていた進化とは大きく異なっていた。あくまで前作の状態での進化を期待しただけに残念でならない。まぁ「全然つまらない」とは思わないが何もMAYHEMがこうゆう事をしなくても..と思ってしまう。彼らは邪悪の王道であって欲しかった。これがMAYHEMとは違う名義で出ていたらまた意見も違っただろう。
”Chimera”
 ノルウェーのブラックメタル3RD。前作の失敗(?)を反省したのかストレートな作風に戻った模様。前作同様、邪悪さは大幅に減退しているが、アグレッションが大幅に強化の方向へ、総じてラウドになったようである。また、作品の質自体は大幅にクオリティアップ。プロフェッショナルな完成度!路線はWolf's Lire Abyssの延長線上であろうか。とにかくブルータルな勢いが目立つ。演奏のキレ自体も良くなっているのでエクストリームメタルとしてみると、この作品が彼らの中では一番かもしれない。ただ、ブラックメタル界もかなり飽和しており、このバンドやDARKTHRONE辺りのフォロワー勢が大量に出現、更にはブラックメタル自体のレベルの底上げも手伝って大御所としての威厳が薄れているのも事実。勢いより邪悪さをとって欲しかった気もする。残念ながら1ST以降はブラックメタル界を引っ張っていく力はもうこのバンドには残っていないと個人的に感じる。

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