推介電影
香港で或いはVCDで見て気に入った作品を紹介しています
日本未公開作品です是非日本公開を

File No.4


 愛與誠 A war named desire 2000年作品
導演◎麥兆輝(アラン・マック)
監製◎馬偉豪(ジョー・マー)
編劇◎馬偉豪、麥兆輝
角色◎阿雪=梁詠[王其](ジジ・リョン)
   方龍就=呉鎮宇
(ン・ジャンユー)
   阿俊=陳曉東
(ダニエル・チャン)
   黄一=王傑
(ワン・ジェ)
   阿吉=李燦森
(サム・リー)
   Jess=呉佩慈
(ペイス・ウー)
   阿海=李尚文(デビッド・リー)
 母は亡くなる前に言った「お前には兄がいる」と。その一度も見たことのない兄は、家の金を持ち逃げしてタイの奥地に逃れたらしい。まだ見ぬ兄・阿就(呉鎮宇)からその金を取り戻すべく、阿俊(陳曉東)はタイへ旅だった。タイの中国人社会ではこの思わぬ闖入者・阿俊によって、かろうじて保たれていた均衡が崩れ始め、対立する2つの勢力の抗争が引き起こされていくのだ。そしてその抗争の果てに阿俊が、そして阿就が見たものはなんだったのだろうか。
 陳曉東久々の映画。呉鎮宇の弟という役で、兄に敵対心を持ち、少年特有の怒りや率直すぎる憤りというものが必要なのだろうけれど、もう20歳も半ばの陳曉東にはちょっと苦しい役所。さらにハンサムが災いしているのか、いまひとつ説得力に欠ける。それに控え、かつて
《初恋無限Touch》で相手役だった梁詠[王其]は、なかなか好い。顔は可愛いがその笑い顔に今ひとつ暖かさが感じられないない彼女、この映画では笑わないし、クールに装っているという役は、今までの彼女にはない役で、これが意外にいい。また、呉鎮宇との間の言葉にはしない愛情のありようもうまく演じている。そろそろ可愛い子ちゃんは卒業、新境地(とまではいかないが)開拓か。
 李燦森も相変わらずお銚子のいい役。さらに王傑にも見せ場は用意されている。そしてこの映画で何よりもいいのが呉鎮宇だろう。男の悲哀、男同士の友情、口にはしない愛情、弟への思い、人生への諦め、などといった感情のすべてを余すところなく表現して見せてくれる。どうしてこんなにうまいくなってしまったのだろう。呉鎮宇がいることでこの映画が締まって見える。
 映画の主題自体は古くさいものだが、舞台をタイに設定したことで、湿った青い草木や深い緑色の風景の中で繰り広げられる抗争(
といってもちんけな抗争なのだが)で、行き場がなく他から阻害された彼らの存在の孤独さが際だち、画面は美しい。
 香港人にとってタイという国はどういうイメージなのだろうか、と常々疑問に思っている。犯罪者が逃れていく場所、麻薬の取引にはなくてはならない場所、怪しい場所、もうここへ逃れてきたら最後、香港へ戻ることが不可能の近い場所、そんなイメージをタイに持っているのだろうか? 犯罪の温床としても描かれることも多いし、《古惑仔》でも《真心英雄》でもタイが舞台として出てくる、なにやら得体のしれない魔術めいた場所としてタイの奥地を描いたものもある。タイは香港人にとっては物語を紡ぎ出すに相応しい場所なのだろうか。

 鎗王 Double Tap 2000年作品
導演◎羅志良(ロウ・チーリョン)
監製◎爾冬陞(イー・トンシン)
編劇◎爾冬陞、羅志良
角色◎彭奕行(Rick)=張國榮(レスリー・チョン)
   苗志舜=方中信
(アレックス・フォン)
   郭麗怡=黄卓玲
(ルビー・ウォン)
   苗太太=陳容法
(モニカ・チャン)
   呉雲信=谷徳昭
(ビンセント・コック)
   楊正祥=方平
(フォン・ペン)
   阿Joe=張民光
(ジョー・チャン)
 射撃の名手2人。競技大会でいざ決戦という場面に、銃を持った思わぬ闖入者によってアクシデントが発生した。警官であったひとりは発砲をためらったことで人を死に追いやり、銃を愛し改造を趣味としていたひとりは発砲しその闖入者を射殺したことで思わぬ快感を覚えてしまう。
 3年の後、殺人事件が発生した。その弾痕から犯人は並々ならぬ銃の腕前と判断された。事件を担当することになった苗
(方中信)は、かつてその銃の腕を競技大会で競った相手Rick(張國榮)の腕をもってすれば、この殺人は可能と判断し、彼に照準をあて、Rickを追い込んで行くのだ。
 爾冬陞と羅志良のアイディアによる脚本は、神経の平衡を失ったRickを、それを大げさにいかにも異常者というように描かなかった事で、この映画に品を持たせている。精神に異常をきたす役というのが初めての張國榮だが、まったく違和感はなく、さすがに演技はうまい。
 しかし、
実のところこの映画の見所は方中信の方にある。射撃の名手でありながら、人を撃つことに恐怖を覚えて発砲をためらっていた人物が、友人を殺された事で、自らの感情をコントロール出来なくなり、狂気をはらんでいく。それは、自らが追う張國榮の姿と重なり、最後にはどちらが狂気なのか判断できない所までいく、その複雑な心理状態の変化を演じて、とにかく瞠目。また、場面は少ないが、彼と妻の関わりの中には、男の「脆さ」が見えてこちちらの演技も注目だ。
 これだけ人間の心理描写が細かく丁寧なのに反して、この映画のもう一つの重要な要素である射撃場面や銃撃戦に、今ひとつの物足りなさを感じさせてしまうのが、何と言っても惜しい。監督は、前作は張國榮の《夢翔ける人
(色情男女)》、感情の描写はお得意だが、アクションものは初体験。アクション場面だけでも陳嘉上や李港仁や陳木勝だったらと思うのは欲張りすぎだろうか。
 この映画、追われる張國榮と追う方中信の感情が実は近いもの、いや同種の狂気をもっているということが一つの主題なのだが、「追う者追われる者」といえば、劉青雲と呉鎮宇の《高度戒備》を思い出す。こちらの二人は常に冷静で頭脳戦といった思いが強いが、比べて見るもの面白いだろう。なお、映画の中で阿Joeを演じる張民光は、もともと射撃の名手で、この映画では張國榮や方中信にも銃の指導をしている。また、このストーリーは本来彼が爾冬陞に語った話が元になっている。英語題の「Double Tap」は映画の中で行われるこの射撃競技の弾痕を表すことば。
 2000年金馬奨・最佳男主角に張國榮が、最佳動作導演に郭振峰がこの作品でノミネートされました。
 2002年1月から《ダブルタップ》として日本公開。

 月亮的秘密 When I Fall in Love...With Both 2000年作品
導演◎趙良駿
監製◎爾冬陞(イー・トンシン)
編劇◎趙良駿、蕭君紅
角色◎樂樂=范芳文(ファン・ウォン)
   子星=頼興祥
(ジェイムス・レイ)
   阿心=何潤東
(ピーター・ホー)
   櫻兒=李綺虹
(テレサ・リー)
   阿武=陳騰龍
   阿文=陳耀虎
   西西=李嘉欣
(ミッシェル・リー)
   振南=方中信
(アレックス・フォン)
   東東=呉大維
(デビッド・ウー)
 住む場所も、境遇も違う3人の女性たちは、各々に悩みを抱えていた。3人の抱える悩みとは同時に2人の男性を好きになってしまった事だった。
 シンガポールでテレビ局に勤める樂樂(
范芳文)は、同じテレビ局に勤める子星(頼興祥)とつきあっている。仕事でも今ひとつ思い通りにいかず、2人の間も最近どうもしっくりこない。そんな折り、取材先の口べたなパン屋の職人・阿心(何潤東)と話すうちに心が晴れ、楽しい気分になることに気が付いた。現実からの逃避にパン屋へ通う、しかし子星からもプロポーズされてしまう。彼女はどちらを選んだら良いのだろう。
 香港に住む櫻兒(
李綺虹)は警察官の阿武(陳騰龍)との結婚式が迫っていた。阿武には双子の弟・阿文(陳耀虎)がいたのだが、阿文が海外へ行くまでのしばらくの間、3人で同居する事になった。なぜだか弟との方が安らぎを覚えることに気が付いてしまう彼女。その思いが吹っ切れぬまま結婚式を迎えてしまうのだった。
 同居して長い西西(
李嘉欣)と南(方中信)は、この不況で2人とも職を失っていた。西西がマカオに職を見つけ別居する事になったのだが、マカオの就職先にいたのは西西の中学の同級生・東(呉大維)だった。相変わらず職の見つからない南は荒れる一方、離れた寂しさとひとときの安らぎを東に見た西西は、1日に2人の男性と関係を持つことになってしまった。
 この3つの話、すべて主人公は女性。その3人がともてのびのびと演じていて、それぞれにいい。范芳文は前作《真心話》とは全く違う、仕事と恋に悩む女性を演じて見せてくれる。さらに、このパートでは、パンの中に自分の心のすべてを詰め込んでいる自閉症気味のパン職人を演じる何潤東がとても可愛いし、魅力的。
 李綺虹も夢見がちな少女の心を残した女性の役を素直に演じていて、コケティッシュで好感が持てる。そして、この2つの比較的おとぎ話的なストーリーに対して、唯一シリアスなのが、李嘉欣のパートだ。男2人はどちらも自分の事しか頭になく情けないこときわまりない。特に、方中信演じる南は、画面への登場は少ないが、男の弱さを十二分に見せつけてくれる。そしてその2人に対する李嘉欣がいいのだ。悩んで、マカオをさまよい歩シーンの表情は出色。彼女、確実にうまくなっている。張曼玉の後を継げるのは李嘉欣と確信した。
 オムニバスというと、どの話も中途半端で消化不良だったりすることが多い中で、3つの物語をインターネットのチャットで繋いだとこで、うまくそのあたりを処理している。物語の結末の付け方に多少の不満は残るものの、香港映画では珍しく女性の心理を細かく丁寧に描いていて、決して派手ではないが、見るに値する作品である。
 2000年、金馬奨・最佳改編劇本にノミネートされました。

 真心話 The Truth About Jane&Sam 1999年作品
導演◎爾冬陞(イー・トンシン)
監製◎[ネ四/羽]嘉珍(キャサリン・ハン)
角色◎阿心=何潤東(ピーター・ホウ)
   阿真=范文芳
(ファン・ウォン)
   箭猪=錢嘉樂
(チン・カーロッ)
 かつて初監督作品《癲[イ老]正傳》では梁朝偉(トニー・レオン)を、そして《フル・スロットル(烈火戦車)》では梁詠[王其]ジジ・リョン)を見いだし、《つきせぬ想い(新不了情)》では劉青雲(ラウ・チンワン)袁詠儀(アニタ・ユン)を使い、低予算ながら心に残る作品を作った爾冬陞が、久々に自らが監督した作品。今回も無名に近い二人・何潤東(ピーター・ホウ)と范文芳(ファン・ウォン)を使い新鮮である。
 シンガポールの大学を卒業して、雑誌カメラマンをしている阿心(何潤東)は、低俗な雑誌の取材に多少の不満を感じていたとき、街で不思議な女の子(范文芳)を見かけた。映画館では他人の迷惑を顧みずタバコを吸い、足は前の席に投げ出し、街では「財布をとられてお金がないの、ウチは新界なの、すぐに帰ってご飯を作らなくちゃいけないの、お金を貸して」と偽って少額をお金をだまし取り、顔パスでディスコに入り踊りまくり、なにやら怪しげな薬も服用。彼は彼女を対象にして、若者の生態を取材することにした。
 何の決まりもなく、働きもせず、夜の街をふらつきまわる阿真の生活、口から出る言葉はすべていい加減なのか、真実なのか? 阿真に振り回され、彼女の態度にとまどいながらも、心の中には孤独と他人への不信感を抱えた行動の裏に隠された彼女の本心が見えるたび、阿心は自らとは生まれも育ちも環境も違うところで生活する彼女への興味が、少しずつ興味以上のものに変化していく。阿真もまた、自らを受け入れてくれる阿心に徐々に心を許し、改めて自分の生活を見直すようになっていくのだったが、所詮は住む世界が違うのか? 香港の街を舞台に、二人の心の動きを丁寧に描いたかわいらしい作品にしあがっている。
 阿心の言葉が多少説教くさく感じるかもしれないが、それを補って余りある
阿真を演じる范文芳の自然体が共感できる。さらに、阿真の兄を演じる錢嘉樂がなかなかいい味でこちらも興味を引く。また脇には朱永棠、雷宇揚、張同祖なども顔を出している。



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