推介電影
香港で或いはVCDで見て気に入った作品を紹介しています
日本未公開作品です是非日本公開を

File No.5



 重装警察 Hit Team 2001年作品
監製◎林超賢、張民光
導演◎
林超賢(ダンテ・ラム)
編劇◎李徳[斤頁]、呉[火韋]倫
槍機指導◎張民光(ジョー・チャン)
角色◎
周聰=呉彦祖(ダニエル・ウー)
   Sam=彭敬慈
(サミュエル・パン)
   BJ=潘哲玄
(ジャズ・プーン)
   陳小珍=谷祖琳
(ジョー・コック)
   Dam=杜徳偉
(アレックス・トー)
   阿奇=巫奇
(アラン・モー)
   荘展豪=錢嘉樂
(チン・カーロッ)
   Christine=黄卓玲
(ルビー・ウォン)
 武器密売組織を摘発しようと潜入していた囮捜査官の阿豪(錢嘉樂)は、ここぞという場面で警官であることがばれて負傷してしまう。幸いにも一命はとりとめたが脊髄を損傷、可能性は低いが外国の病院へ行けば快復の見込みもあると診断されるが、その費用はとうてい出せる金額ではなかった。かつて警察ラグビー部で汗を流した元同僚たちは、警察が彼に対して謝罪の言葉もない事に怒りを覚えるとともに、手術費の工面と阿豪を負傷させた仇を取ろうと考え、なんと自らの武器を利用して武器密売組織を襲撃してしまった。
 警察内部に新たに組織された少人数の精鋭部隊Hit Team始めて任務は、まさにこの武器密売組織の襲撃犯をあげることだった。警察VS警察VS地下組織の3つ巴の戦いは幕を上げた。
 今や注目の林超賢、銃器の専門家・張民光と2人の名前を見たら、いやがおうにも期待が高まるこの映画。なんてご都合主義(笑)。銃撃戦がしたいばっかりに、SDU
(飛虎隊)の武器を使って強盗を働くというとんでもない構想。おかげで銃撃戦や爆薬など銃火器方面、大いに充実。楽しめます。
 ただこの映画では、たんなる銃撃戦を見せるだけではなく、登場人物たちが持つおのおのの背景を描き出そうと努力している。しかしそれが、時に冗漫に思えてしまい、なかなか物語が結末に向かって加速していかないのに少しいらだちを覚えるのが、残念でならない。ただ、見所
(銃撃戦)は随所にちりばめられているので是非一見を。
 さて、俳優にとって、役をリアリティあるものにしていくために重要な事はなんだろう。顔、姿、眼光それらを含めた雰囲気、そして声と話し方だろう
(もちろんこれらを含めて演技というのだろうけれど)。ここでの問題は、阿聰演じる呉彦祖だ。デビューから注目して見ているし、《紫雨風暴》では、苦悩する姿がなかなか好かったと思っていたが、この役ではもう少しと言うところ。もう少しどうなのかというと、まずは問題は顔。美形でおぼっちゃま然とした容貌は、素のままでは影がないので、とりあえず化粧で少々影とすごみを入れさせられている。そうしないと、かつて同僚を見殺しにしたと思っている過去を背負ったように見えない。ぺらぺらのハンサムって魅力的じゃないし、子供っぽくみえてしまう。そして決定的なのが、声と話し方。デビュー作の頃よりは格段と広東語もうまくなったのだが、なんだか空気が漏れているような発音は(英語でもそうなのか?)、しまりがないし、説得力がないのだ。お人好しの2枚目半のような役ならこの話し方のままでいいけれど、主役の阿聰役はそれではリアリティがない。さらなる進歩を待ちたい。
 それに比べて、何華超は顔だけで十分に雰囲気を持っているし、錢嘉樂には存在感と演技力がある。顔のきれいなのは、俳優にとって十分条件であっても、絶対条件ではないのだ。それよりもむしろ個性的であることの方が重要なのだから。悪役を演じることもおそれない呉彦祖
(《知法犯法》の悪役もがんばっていたしその挑戦は買うけど、もう少しなので)の事、今後をさらに期待して、ちょっと今回は辛口にしてみました(怒らないでね)

 江湖告急 Jiang Hu〜"The Triad Zone" 2000年作品
監製◎陳慶嘉、錢小慧
導演◎
林超賢(ダンテ・ラム)
編劇◎陳慶嘉、錢小慧
角色◎
任因久=梁家輝(レオン・カーファイ)
   蘇花=呉君如
(サンドラ・ン)
   JoJo=李珊珊
(レイ・サンサン)
   何君瑜=張耀揚
(ロイ・チョン)
   師蘭偉=陳輝虹
(チャン・ファイホン)
   葉偉信=陳奕迅
(イーソン・チャン)
   關公=黄秋生
(アンソニー・ウォン)
   阿卓=曾志偉
(エリック・ツァン)
   羅金虎=彭敬慈
(サミュエル・パン)
   虎女=谷祖琳
(ジョー・コック)
 梁家輝。《新難兄難弟(月夜の願い)》で髪をなでつけた姿は、ひと昔もふた昔も前の二枚目(ハンサムというよりこの言葉が相応しい)然としていながらとぼけた役、《'92黒[王攵]瑰對黒[王攵]瑰(黒薔薇VS黒薔薇)》での金像奨最佳男主角を受賞のコメディぶりはもちろん違和感なし。《棋王》では全編おどおどして、《黒金》では強面だった。器用な人だ。
 今回の梁家輝は、愛人(李珊珊)と妻(呉君如)を持つ黒社会の大哥役。彼の周りは、忠実なボディーガード(張耀揚)、黒社会好きの弁護士(陳輝虹)、刑事(陳奕迅)が生息。
 ある日、刑事(陳奕迅)は任因久(梁家輝)にいう、24時間以内に殺すという噂が立っていると、その言葉の終わるか終わらぬうちに任因久は狙撃された。愛人と妻の間を立ち回る大哥が、愛人宅近くで何者かに命を狙われたから、妻には愛人の存在はばれるは、誰に狙われているか分からないわ。さらにどこかの大哥が一人亡くなれば、その地盤をいただこうと画策する他の大哥たちと腹のさぐり合いもまっている。
 大哥も大変なのよ。なんせ妻は一番手強い相手だし、外へ出れば誰かのたくらみに引っかからないようにしなくてはいけないし、向こう見ずな若者の刃にも立ち向かわなくてはならない。つねに勝続けていなければ、生き延びてはいられない。社会からも忘れられ、見捨てられてしまう。
 公開時のポスターから「どうも違うぞこの映画」と思わせるものがあったが、見終わってもその期待は裏切られなかった。黒社会ものといって想像できる映画とはひと味違うこの映画。何がどうって、その作風がいい感じ
(ここ平板に)。黒社会映画のスタイルは踏襲、程良くパロる、軽くアイロニーを加えてと、その感覚の処理はかなり高度なテクと見た。配役のセレクトにも間違いがない。梁家輝のとぼけた味がこの脚本にぴったり(いきなり真っ赤なスーツで登場してくれて、さらに踊ってくれるし!)で、妻役の呉君如もそれなりにおもしろい。くそまじめなボディーガードの張耀揚もいいアクセントで、可笑し悲し役どころ。さらに黄秋生は關公ですよ!
 公開時の感じからそれほど多くない予算で作られたと思うが、こういうところに意外におもしろい作品が隠れているものだ。
 この監督、これ以外には《霹靂火
(デッド・ヒート)》《G4特工》《天旋地戀(スイート・ムーンライト)》《野獣刑警》などを撮っている。ちょっと注目しておいて損はないと思う。

 藍煙火 Marooned 2000年作品
監製◎馬楚成(ジングル・マ)
   荘麗珍

導演◎
勞劍華(ロウ・キムワー)
編劇◎楊倩玲(ヤン・チェンリン)
角色◎陳港泰=許志安(アンディ・ホイ)
   張小楡=梁詠[王其]
(ジジ・リョン)
   了哥=梁漢文
(エドモンド・リョン)
   仔仔=陳展鵬
(ベニー・チャン)
   鍾長官=馬徳鐘
(ジョー・マ)
   阿君=甘凱欣
(カム・ホイヤン)
   権哥=陳生(チャン・サン)
 見ていて居心地のいい映画というのがある。どこかで見たことあるような分かりやすいストーリー、観客の期待を裏切らない妥当な配役、ドキドキハラハラするでもない、でも見ていて安心する。この作品もそんな映画の1つ。
 マカオの警官の泰仔(許志安)は、恋人でカジノのディーラーをしている小愉(梁詠[王其])にプロポーズしているが、小愉は今ひとつ承諾してくれないでいる。そんなある日、泰仔が追いかけていた犯人が幼なじみだったことから、思わぬ落とし穴に。やくざからは金を持ち逃げしたと疑われ、警察からも汚職警官の疑惑をかけられるはめになってしまった。果たしてこの窮地をどうやって抜け出せばいいのか。
 ありふれたストーリー、以前なら劉徳華あたりがしていそうな、ある意味で男の子の理想像を演じる許志安。ここぞという場面で許志安の歌がかかる。分かりやすいことこの上ない。しかし、こういう映画をステレオタイプの陳腐な映画として、不当な評価を与えてしまってはいけない。奇をてらって驚きに満ちたものだけが、見る価値のある映画ではけしてない。何回も繰り返し、こうした映画が作られてきたのは、多くの観客がこんな映画を望んでいるからではないだろうか。
 そしてこの作品が、こういうステレオタイプな映画にあっても、なおかつ魅力あるのは、舞台をマカオに設定し、丁寧に作られているところにある。香港とは違う風景、のんびりと気持ちよさそうな光あふれる広場や丘、少しばかりエキゾティックな色彩の泰仔の部屋をカメラに美しく描き出し、主人公たちの心持ちも焦ることなく丁寧に追いかけて、物語が展開していく。物語の小ささとマカオという場所の小ささがうまく合わされて、主人公たちのありふれた小さな世界の中で小さな出来事が起こっていく。
 派手なCGと驚きばかりの画面に疲れた目には、自然光が優しく居心地のよい世界に連れていってくれる。

 行規 The Blood Rules 2000年作品
監製◎李兆基(レイ・チウゲイ)
導演◎
麥子善(マルコ・マック)
   羅耀輝(アンディ・ロウ)
編劇◎阮世生(ジェームス・ユン)
角色◎Mike=王敏徳(マイケル・ウォン)
   阿君=關秀媚
(スーキー・クワン)
   Q仔=呂頌賢(ジャッキー・ルイ)
   阿雪=林雪
(ラム・シュ)
   林叔=王天林
   
韋Sir=歐錦棠(オウ・ガムトン)
   阿寶=田蕊[女尼]
 Mike(王敏徳)、阿君(關秀媚)、Q仔(呂頌賢)、阿雪(林雪)の4人は、黒社会の人物・林叔(王天林)に雇われている殺し屋。阿君は妻も子もあるMikeを慕い、阿雪はそんな阿君に密かに思いをよせていた。Mikeの妻や子供は彼のホントの姿を知らない。それはQ仔の彼女とて同じ。彼女の手前粋がった為に、つい組織のルールを犯してしまい、危機を感じた林叔に4人は格安で仕事を引き受けさせられてしまったのだ。歯車が少しずつ狂い始めていた。簡単だと思われていた仕事が、もっとも困難な仕事になろうとしている。
 脚本の阮世生といえば、まず真っ先に思い出すのが《金枝玉葉
(君さえいれば)》、そして《毎天愛[イ尓]八小時(君をみつけた25時)》だろう。どちらも都会的で軽やかなコメディ的な要素も含む作品。男女の愛情の機微を描くのには手慣れているという印象だ。その彼がハードボイルドタッチの作品も実は書いている。しかし、そのどれもが、都会的センスにあふれたラブコメからは想像が付かないくらいにB級な作品に仕上がってしまっている、それはいったいどうしたことだろうか。しかしそんな作品のなかにあって、この《行規》は成功している部類だ。
 阮世生はハードボイルドタッチの作品にも、男女の愛の機微を盛り込んでいて、香港映画でありがちの黒社会ものの映画で主題とされる男同士のしがらみよりも、殺し屋たちに感情と肉を付けて、殺し屋とて人間、恋もし悩み苦しみもするという設定にしている。そして、この作品
(《行規》は組織のルールという意味)の重点は、黒社会の組織の抗争や確執などではなく、あくまでも男女の感情の方にある。もしかしたら、この香港映画らしからぬ脚本があだになっているのかもしれない。
 よく見ていると、阮世生の脚本は、実は都会的なのではないのかと気が付いた。舞台がニューヨークだって作れるような、いやニューヨークならなお相応しいとも言えるのではないか。脚本通りスタイリッシュに仕上げるには香港の街はあまりに雑多すぎ、そのスタイルに相応しい俳優がそろえられなかったのと、それだけスタイリッシュな映像を撮れるキャメラマンがいなかったからではと思い至った。
 『電影双周刊』のインタビューで麥子善は「この作品の依頼があったときには、まず脚本を阮世生に、そしてよいキャメラマンを用意してくれるように言った」とある。そのことを見ても麥子善がどういう映画を想定していたのか分かるだろう。しかし、いま一つ突き抜けられなかったのは、なんと言っても「この作品の撮影期間は10日間しかなかった」からかもしれない。
 監督の麥子善はこれが始めての作品。しかし、すでに数多くの作品の編集を手がけていて、金像奨に何度もノミネートされ、《風雲》では見事受賞もしている人物。2001年の金像奨でも《順流逆流》でノミネートされている。他の監督作品には《縁[イ分]Take2》と《知法犯法》がある。



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