■ 第十一 学令 ≪全22条≫ ○01 博士助教条 博士、助教には、みな明経道で師とするに足る人を任用すること。書博士、算 博士もまた、業術優長な人を任用すること。 ○02 大学生条 大学の生には、五位以上の子孫、及び、東西の史部の子を採用すること。もし 八位以上の子が熱心に願ったならば許可すること。国学の生には、郡司の子弟 を採用すること{大学生は式部が補すこと、国学生は国司が補すこと}。いず れも年13歳以上、16歳以下で、聡令な人を採用すること。 ○03 釈奠条 大学・国学は、毎年、春夏の二仲(2月・8月)の上丁(最初の丁〔ひのと〕 の日)に、先聖孔宣父に釈奠(孔子を祭る礼)すること。饌酒明衣の費用は、 いずれも官物を用いること。 ○04 在学為序条 学生は在学中、各々長幼の序列を守ること。入学時には、みな束脩〔そく しゅ〕(=束ねた乾し肉)の礼(入学時の教官への贈物)を行うこと。その師 にはそれぞれ布1端。みな酒食あり。束脩を分けて、3分は博士に、2分は助 教に納めること(博士1人:助教授1人の分を3:2に分けること、という意 味で、定員は博士1人、助教2人なので、つまりは7分するということらし い)。 ○05 経周易尚書条 経は、周易、尚書、周礼、儀礼、礼記、毛詩、春秋左氏伝を、それぞれ1経と すること。孝経、論語は全ての学者(習学者)の必修とすること。 ○06 教授正業条 正業の教授には、周易には、鄭玄、王弼の注釈を、尚書には、孔安国、鄭玄の 注釈を、三礼、毛詩には、鄭玄の注釈を、左伝には、服虔、杜預の注釈を、孝 経には、孔安国、鄭玄の注釈を、論語には、鄭玄、何晏の注釈を用いること。 ○07 礼記左伝各為大経条 礼記、左伝を、それぞれ大経とすること。毛詩、周礼、儀礼を、それぞれ中経 とすること。周易、尚書を、それぞれ小経とすること。2経に通じようとする 人は、大経内から1経通じ、小経内から1経通じること。もし中経の場合は、 併せて両経(2つの経(?))に通じること。3経に通じようとする人は、大経、 中経、小経、各1経通じること。5経に通じようとする人は、大経をいずれも 通じること。孝経、論語は、皆、必須として通じること。 ○08 先読経文条 学生は、先ず、経の文を読むこと。通熟して、しかる後に講義を受けること。 旬(10日)ごとに1日、休暇を許可すること。休暇の前の1日に、博士は考 試すること。読者は、試験にあたって、1000言の内ごとに1帖3言 (1000字以内の1ヶ所の3字)を試験(その字を解答させる)すること。 講者は、2000言の内ごとに、大義1条(1ヶ所の文意)を問うこと。  (読者試・講者試それぞれに)全部で3条、試験すること。2通したなら ば、及第とすること。1通した場合、及び、全く通じなかった場合は、斟量し て、決罰すること。年の終わり(8月に博士の考課があり、それには学生の成 績が関係するため、これは7月のことらしい)ごとに、大学の頭、助、国司の 芸業優長な人が試験すること。試験者は、1年に受けた業を通計して、大義8 条を問うこと。6以上の解答を得たならば上とすること。4以上の解答を得た ならば中とすること。3以下の解答を得たならば下とすること。連続3年、下 である場合、及び、在学9年までに貢挙の資格に足りない(2経以上に通じて いない、或いは、秀才・進士たる才がない)場合は、いずれも、退学させるこ と{国から大学に通う者は、年数を通計すること。服喪が終わって重任する (復学する)場合は、通計する限りにあらず。} ○09 分経教授条 博士、助教は、みな、経を分割して教授すること。習学者は、1経を受講する ごとに、必ず、受講を終了させること。受講を終了しない場合は、業を改める (他の経に変更する)ことはできない。 ○10 為考課等級条 博士、助教については、みな、当年に講義し授けたものの多少を数えて、それ を以て、考課の等級とすること。 ○11 通二経条 学生は、2経以上に通じて、出仕したいと求めたならば、挙送するのを許可す ること。挙送にあたっては、大義10条を試問すること。8以上の解答を得た ならば、太政官に送ること。もし国学生が2経に通じてもなお、熱心に学問を 願ったならば、式部に申し送ること。考練をして及第したならば、進学させ大 学生に補すこと。 ○12 講説不長条 学生は、まだ長く講説を受けていないとしても、文章に習熟しており、才が、 秀才・進士に足るようであれば、また、挙送するのを許可すること。 ○13 算経条 算経は、孫子、五曹、九章、海嶋、六章、綴術〔てつじゅつ〕、三開重差、周 髀、九司を、それぞれ1経とすること。学生は、経を分割して習業すること。 ○14 解経義条 国郡司は、経の義を解悟するようなことがあれば、すぐに教授を加えること。 もし訓導で成すことがあれば、考課を進める。 ○15 書学生条 書の学生は、写書を以て、上中以上ならば、貢挙を許可すること。算学生は、 術理を弁明して、しかる後に、通じたものとすること。試験は、九章3条、海 嶋、周髀、五曹、九司、孫子、三開重差で、それぞれ1条。9つ試験して、全 て通過したならば甲とすること。6つ通過したならば乙とすること。もし九章 を落としたならば、6つ通過したとしても、なお落第とすること。綴術、六章 の試験は、前項に準じること。綴術に6条、六章に3条。9つ試験して、全て 通過したならば甲とすること。6つ通過したならば乙とすること。もし経を落 としたならば、6つ通過したとしても、なお落第とすること。及第者を叙す方 法は、ひとつ明法の例に準じること。 ○16 請假条 学生の休暇申請にあたっては、大学生は頭に報告すること。国学生は所部の国 司に報告すること。それぞれ、陳牒(牒の提出によって申請)して、判定して 給付すること。 ○17 行礼条 学生については、礼法を行う場でない限りは、みな、たやすく使役してはなら ない。 ○18 不得作楽条 学生は、在学中、楽を作り、また雑戯してはならない。ただし、琴を弾き、弓 射を習得するについては禁止しない。師の教えに従わず、また、1年以内に不 正休暇が満100日となったならば、いずれも退学させること。 ○19 遭喪条 学生は、年齢15歳以下で、(父母の)喪に遭って服を終えて、復学を求めた ならば、許可すること。 ○20 放田假条 大学・国学生は、毎年5月に、田假(播種・収穫等のための休暇)を許可する こと。9月に授衣假(新しい冬衣を受けるための休暇)を許可すること。往還 路が遠い場合は、斟量して往還の程(旅程)も給付すること。 ○21 被解退条 学生は、退学させられるにあたっては、みな、その退学に至った理由を書き並 べて、式部に申告し、本籍地に下すこと。(その者が(?))五位以上の子孫の場 合は、みな、年齢21歳のときに限って、(大学寮から)太政官に上申するこ と。蔭に準じて、ふさわしい身分に配すこと。 ○22 公私条 学生は、公私に礼の事(元日、及び、公卿大夫の喪葬の類をいうらしい)があ る際には、儀式参観させること。                 (公開:2000/03/18 更新:2000/03/18) ====================================================================== 訳者:しげちゃん(猪狩浩美) Email: HGF03435@nifty.ne.jp   「官制大観」 http://www.sol.dti.ne.jp/‾hiromi/kansei/ ======================================================================