町田康解体新書
 

目茶苦茶歌手
僕が今やっている音楽は、ご存じのように、
直接、当時のパンク・ロックの影響下にあるような音楽ではありません。
そのためか、時々、あなたは『パンク歌手』というけれど、やっていることはパン クじゃないじゃないかと、
人に聞かれるのですが、自分としては、『パンク歌手』を翻訳すれば、
『目茶苦茶歌手』とか『混乱歌手』になると思っているんですよ。
その偽物感というか、フェイクな感じがパンクだとね。
パンクロックに接した時、自分との距離が近いと思ったんです。
自分で作った曲を演奏することに価値を置く、
つまり自分というフィルターを通して物事を考えるという意味では、
現在の創作の姿勢につながっていると思います。
雑誌や、小説の著者説明には、" パンク歌手、俳優、小説家"との肩書きになっているが
確かに最近の楽曲はパンクって感 じでは、ないかも。
でも、あくまでも『パンク歌手』 なのであーる。
今迄、町田氏がいたバンドを ちょっと紹介すると
腐れおめこ→INU(一期) →INU(二期)→INU(三期)→FUNA→
人民オリンピックショウ(一期) →人民オリンピックショウ(二期)→
人民オリンピックショウ(三期) →人民オリンピックショウ(四期)→
絶望一直線(あほの魂)→愛慾バ ンド→天井天国→淫如上人&ミラクルヤング→北澤組
一年くらいで意見が対立し、解散 となるパターンが多い。
しかしバンド名凄いね(笑)。
北澤組とやっていたのが一番長 かったと思われます。

●参考リンク●
三軒茶屋にあるレコ屋フジヤマの サイト>>>来客列伝

ライヴ
ライヴにリスナーが何のためにいくかというと、興奮するためですよね。
興奮するというのは、どういうことかというと、
僕なんかはいつも心がけているんですけど、
自分も含めて全員の魂をどこかに持っていくってことです。
『あぁ、持っていかれたな』って感じるライヴは、いいライヴなわけですよね。
まったくもって同感!!


いまをさること三十年前、小学二年生の自分は、なぜか知らぬが突如として
壺が欲しくなり、しかし、いかんせん小学二年、壺を買うだけの経済力がない、
ことあるごと、両親に壺を買ってくれろ、とせがんだ。
渋い子だ・・・。
他の本で読んだ情報によると小学 生時代は絵を書く事、日本史を好み、
父母より買い与えられた書物より 仏像や僧の絵を模写していたとの事。
さらに中学生なってくると、
河内音頭を好み、『浪芸侠客伝』 を練習していたらしい。なるほどね。

話芸
落語や漫才や吉本新喜劇は小学校の時からテレビで見ていました。
大阪ということもあって、話芸は日常に溶け込んでいました。
クラスではそれほど目立つ存在ではなかったと思いますが
小学校高学年になって日本史の授業が始まると、
歴史的事項について異常に詳しいので、その部分では目立ちましたね。
絶対に目立ったと思うよ・・・。

几帳面
どういう訳か17歳頃より、急激に几帳面になったと思われる。
『ものが斜めになっていると落ち着かず、雑念、雲の如くに湧いて、
殺人、もしくは放火、もしくはキャベジンを三十錠飲んで小人に変身し森の木陰で ダンス、
などをしたいようになる病』の特徴は、なにか、気合いを入れてやんなきゃなぁ、
と思うとその症状が深刻なものになる、という特徴があって、小説を書く場合、
自分はなるべく、いい小説、おもしろい小説、を書きたいと思う気持ちが大なの で、
普段気にならないような些細な斜め現象が、もう、気になって気になってしょうが ない。
一緒に住んだら叱られそうだ、私 (笑)。
以前、町田氏が花まるマーケット に出演した事があって、
その時の情報によるとけっこう皿 洗いとかするらしい。いい旦那だ。
ちなみに町田氏の『時間厳守』は かなり有名で、
待ち合わせには必ず何十分も前に 到着。
原稿の締めきりには一度も遅れた 事がないそうだ。かっこいい。


だいたいにおいて自分は鞄というものを極度に憎んでいて
学校時分から様々の奸計・謀略を巡らして鞄を持たずに済むようにしてきた。
自分は鞄という物体そのものを憎んで、
鞄などというものはこの世から根絶してしまえ、と主張しているのではなくし て・・・。
私は、町田氏が鞄を持っている姿 を目撃した事があ〜〜るっ!(自慢)
それはサイン会であった。
立派な黒い革の鞄。ぎこちなくそ の鞄を持つ男、それは町田康。
ちょっとププって感じで笑っちゃ いました、あは。
オシャレ関係とかに出演したら、 中身が知れるかもよ。(ちょっと見てみたい)

神社型
人間には、神社型の人間と寺院型の人間というのがあると思うんです。
寺院型の人間がアンティークとか骨董とかなんでも古いものが好きだったり、
コレクションを蓄積していくこと、時間を重ねることに価値を見出すのに対して、
神社型の人間は、伊勢神宮でもなんでもそうですけど、
六十年ごとに建て替えちゃうでしょう。
古いことに価値なんかなくて、なんでもリセットして、そこからまた、やり直す。
そこにいくと法隆寺なんかは古いから値打ちがあるわけで、
時間の経過に価値を見出す人は寺院型の人間なんです。
で、僕が独自調査を行った結果、夜遅い人は寺院型が多くて、朝早い人は神社型が 多い。
僕は典型的な神社型で、コレクションに興味もないし、本でも内容さえ読めれば文 庫本でもいい。
普通のものとマニアックなものが両方あるとしたら、
普通のもののほうがずっといい。
それがものとして価値を主張していること自体がうっとうしくて、
機能だけを使いたいという、頑固な神社型なんですね。
独自調査っつーのが、なんとも怪 しげだけど(笑)、
なかなか凄い発見したものだなー と感心。流石だぜ。
私は、どちらかと言うと、寺院型 かも。でも、神社的要素もあるかな。
あなたはどちら派?!


とある公園のベンチに座って休息をとっていると、茂みから一匹の猫が出てきて
とことこ歩いてるのが見えたので、おいでおいでと呼んだところ、
痩せて小さい見るからに野良猫といった風情のその猫はしかし、野良猫に似合わ ず、
自分の方へよちよち歩いてきてすぐ近くまで来ると、自分の顔を見て、にゃぁと鳴 く。
すっかり嬉しくなった自分は、かしこいな、かしこいな、などと愚にみつかぬこと を言いながら
しばらく猫と遊んでいたが、やがて、こいつ、もしかしたら腹が減っているかも知 らん、と思い、
彼を残して公園に程近いコンビニエンスストアーに向った。
ここで知り合ったのもなにかの縁、キャットフードでも振る舞ってやろうかと思っ たのである。
町田氏の猫好きは今では、わりと 知られているが
私は既に小説『人間の屑』での猫 の描写で気がついていた!
だって、愛情たっぷりだもんね。
現在いくつもの雑誌でコラム等を 連載しているが
『猫の手帖』という猫の雑誌の連 載&フォトは
なんとも微笑ましいので、見てみ ると面白いかも。お勧め。

時代劇
いまから五年くらい前から、陽のある間はずっと、
再放送のテレビ時代劇ばかり見て暮らしているのであって、その頃からずっと見て いるのであって、
その頃からずっと見ている番組を思いつくままに列挙すれば、
十チャンネルでは『三匹が斬る』
松方弘樹の『名奉行遠山の金さん』『暴れん坊将軍』『将軍家光忍び旅』『必殺仕 事人』
四チャンネルでは『女ねずみ小僧の助参る』『伝七捕物帖』『子連れ狼』『長七郎 江戸日記』『桃太郎侍』
六チャンネルでは『大岡越前』『水戸黄門』『江戸を斬る』
八チャンネルでは『鬼平犯科帳』
十二チャンネルでは『江戸の用心棒』『ぶらり新兵衛道場破り』『騎馬奉行』『人 形佐七捕物帳』
『新五捕物帳』『大江戸捜査網』『おしどり右京捕物車』『姫将軍大暴れ』『あば れ八州御用旅』
などであり、つまり自分は、日中は、時代劇を見て酒を飲む以外のことは何もして いないに等しい。
阿呆の生活である。
こんなに時代劇がある事に驚いた んだけど
それを全部見ている町田氏には、 更にビックりだ!
本当に好きなんだね。

オオケン町蔵に 遭遇
’80年代の中ごろ、渋谷の 『ラ・ママ』というライヴハウスで
アングラ大集結のライヴがあっ た。
筋肉少女帯も出演していた。この ころのアングラといったらろくなもんではない。
店の外の道路には、ゲラゲラ笑い ながらアキレス腱固めをかけあったいるモヒカン野郎たちだの、
通りすがりのサラリーマンをムチ でしばいている金髪男だの、
石川賢のマンガみたいにバイオレ ンスな光景がアチコチで展開されていた。
気弱な高校生バンドであった僕ら は
『ひゃー!サラリーマンがネクタ イで応戦している!』等と隅の方でビクビクと震え上がっていた。

坊主頭に顔の半分はあるん じゃないかというようなデカい瞳を右にギラリ、
左にギョロギョロさせて、酒が 入っているのか何なのかユラ〜リとよろめきながら
パンクスのひしめく道路の真ん中 を歩いてくる。
町蔵が近づくにつれて騒いでいた パンクスが右へ左へ道を開ける。
モーゼの十戒のようだ。
町蔵はまったく気にも止めず口元 にヘラヘラ笑みを浮かべながら
ユラ〜リユラ〜リと歩いてくる。

’80年代にLP『メシ喰 うな!』でデビューしていた町蔵は、
アングラロックシーンのカリスマ であり、
その圧倒的な存在感からどんな過 激なパンクスからも一目を置かれていたのだ。

『わ!町田町蔵だ!』と僕 の仲間が思わず叫んだ。
『誰が町蔵やっ?!』
町田町蔵が振り返り僕達を睨ん だ。
その射るような眼光にヒ〜!っと 縮み上がった。
すると町蔵はニカ〜と笑い、言っ た。
『・・・・わいや。』
笑ったものかビビったものか判断 できず、僕達は『は、はい!』と
直立不動で答えた。

町蔵のライヴは鬼気迫るも ので、僕は完璧に影響を受けた。
狂気!狂気!の曲の間では客席を またギョロリと睨みつけて一喝だ。
『こんなかに関西の人間がおる、 誰やっ?!』
迫力に静まりかえるパンク&アン グラの客。
町蔵はニカ〜と笑い、言った。
『・・・・わいや。』
持ちネタですかそれは?僕は心で 思いつつ、でもみんな真剣に見ているから
これは笑っちゃイカンのだろうと 思い必死につっ込みをこらえた。

『なんや、このギター!音 が出ェへんやないかっ!なんでや?!』
またしても町蔵の怒り爆発。客席 はもう井戸の底の静けさだ。
すると町蔵はギターコードをつま んでこう言った。
『・・・・コードが抜けとっ た。』
ニカ〜と笑った。さ、三段落ちだ なこれは。
しかし、まさかあのパンクの町蔵 がそんなベタなネタで笑いを取るわけがない。
どうしたものかわからず、会場は ミョーな空気に包まれてしまった。

町蔵はだまって、コードを ギターに差し込むと、
淡々と次ぎの曲を歌い始めた。

それから約10年の間に何 があったのか、
それとも自然な流れなのか、作家 デビュー直後にお会いした町田さんは
当時を思えば信じられぬほどおだ やかな方になっていて驚いた。
”三段落ち事件”について尋ねる と、
『あのネタは三日前から考えてい たんですけど』
実は、とのことで更に驚いた。
もともとシャレ好きの方であった ようだ。
インターネットもない時代。”パ ンク町蔵”のおっかないイメージだけが
ひとり歩きしていたのかもしれな い。
大槻ケンヂ氏はソロアルバム 『ONLY YOU』で
INUの『メシ喰うな!*』をカバーしている。
本人も意識してかなり似せて歌っ たとの事だが
ほんと、似ている!
このアルバムはじゃがたら、ばち かぶり、頭脳警察・・・
なんかをカバーしているアルバ ム。愛聴盤。

この当時のカリスマっぷり を見てみたいという人は
石井聰互監督『爆裂都市』を御覧 あれ!
キチガイ弟役で出演してます。
他にも、町蔵時代の俳優っぷりが 見れる作品はいくつかありますが
マニアックなモノが多いので ちょっと入手困難かも(エロいのが多いっす)・・・。
比較的手に入りやすい作品で
山本政志監督『ロビンソンの庭』 これ、イイっす。
けっこうたくさん町蔵が出てくる シーンもあるし、お勧めできます。
中でも、俺のタニシがどうのこう のって歌うシーンがあって
かなりインパクトあります。お気 に入りのシーン。
この映画はサントラがじゃがたら で江戸あけみさんも出てきたりなんかして
なかなかおもしろい映画でありま す。
町田氏はこの後の約3年間、表 立った音楽活動を停止しています。

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