幻の没プロットみよか編

これは第八話に入れようと書いたものですが、あまりに浮いた話の為に没となったプロットです。

 

 

 

カランカラン

 

「いらっしゃいま…」

「田中せんぱぁぁ〜〜〜い!」

「ゲッ!みよか…。」

 

……。

びっくりした…。

夕方、一旦お客さんが途切れた頃に、突然一人の女の子がお店に入って来たかと思ったら、サエちゃんに駆け寄った。

サエちゃん、あの娘の名前を知ってるみたいだし、知り合いなのかな?

 

「田中せんぱ〜い。そのウェイター姿お似合いです。カッコイイです。」

「あっ…あぁ…アリガトよ…。」

 

サエちゃんが困った顔で返事をする。

助けてあげた方が良いのかな?

 

「昨日商店街でウェイター姿の田中先輩が走っているのを見て、私、商店街中の喫茶店を探し回っちゃいましたぁ。」

「そっ…そいつは大変だったな…。」

「いいえ!田中先輩の為なら、どんな苦労も惜しみません。」

「いや…出来れば惜しんでくれ…。」

 

ますます困った顔をして、サエちゃんが呟いた。

私…どうしたら良いんだろう?

 

「ニャハハ☆サエ〜、とうとう見付かっちゃったねぇ。」

「ミャーコ!笑ってないで…何とかしてくれ!」

「やだよ〜〜〜ん☆面白いもん。」

 

そう言ってミャーコちゃんは、困り果てているサエちゃんを面白そうに眺めている。

 

「サっサエちゃん…この人は?」

「ああ…アタイの後輩で、『橋本みよか』だ。」

 

後輩って事は、私と同じなのかな?

そう思いながらみよかさんの方を見ると、私を不機嫌そうな顔で見ていた。

 

「田中先輩。この娘、誰なんですか?」

「誰って…。」

「ただのアルバイターのくせに、田中先輩に親し過ぎます。」

「いや、バイトはアタイ達…。」

「田中先輩を『サエちゃん』だなんて、先輩に馴れ馴れし過ぎるわ。」

「いや、だから乃絵美は…。」

 

みよかさんの矢継ぎ早な話し方に、私も、サエちゃんも、ミャーコちゃんでさえ口を挟めない。

元気な人だなあ…ちょっと羨ましい…。

 

「乃絵美さんって言うんですか?じゃあ乃絵美さん!アナタ田中先輩とどういう関係なの、説明して!」

「あっ…えっと…サエちゃ…田中先輩とは…お兄ちゃんがお友達で…菜織ちゃ…氷川先輩ともお友達で…だから…。」

「もう!ハッキリして!」

 

突然の質問に上手く説明が出来ない私を、みよかさんはますます不機嫌な目で見る。

菜織ちゃんが居てくれたら、上手く説明してくれるんだろうなあ…。

その菜織ちゃんは、今、真奈美ちゃんを連れて天都先生の家へデリバリーに行っている。

 

「はぁ…しょーがないなぁ…。ここはミャーコちゃんが、詳しく、優しく、COMPACTに説明して…。」

「信楽先輩は、黙ってて下さい!」

「ふみゅぅぅぅ…。」

 

代わりに説明してくれようとしたミャーコちゃんも、みよかさんの一喝で黙らされてしまう。

やっぱり、私が説明しないと…。

ええと…うんと…。

サエちゃん達が初めてお店に来た時からを一生懸命思い出していると、サエちゃんが口を開いた。

 

「みよか、よく聞け。アタイと乃絵美は…。」

 

サエちゃんは、みよかさんの目を見てゆっくりと話す。

やっぱりサエちゃんに言ってもらうのが一番なのかな?

 

「田中先輩とこの娘は?」

 

聞き返すみよかさんにサエちゃんが次の言葉を言おうとすると…

 

「恋人同士だよん☆」

「そう、こいび…ミャーコ!」

 

突然ミャーコちゃんが出てきて、とんでもない事は言った。

こっ恋人同士って…

 

「こいびとどうし……きゅ〜。」

 

パタ

 

ミャーコちゃんの言葉が相当ショックだったのか、みよかさんはその場に倒れてしまった。

 

「あ〜あ…カワイソ〜に、相当ショックだったのねん。」

「オメーの所為だろ!」

 

結局その日は、サエちゃんが気絶したままのみよかさんをおぶって帰って行った。

結局、誤解されたままだったなあ…

今度会ったら、キチンと説明しないと…。

戻る