KANON〜美坂 栞2〜

 

 

お姉ちゃんが帰ってきた

でも顔を会わせずに自分の部屋へ

「・・・おかえり」

もう一度つぶやく

今日もまた何事もなく過ぎてゆく・・・

私は早めに夕飯をすませ

部屋に入る

疲れた・・・

「・・・・・・」

・・・夢・・・

・・・誰かが私に会いに来る夢・・・

それが誰なのかはわからないけど

なんだかとても嬉しい気持ちのする

そんな夢・・・

・・・明日逢えるよ・・・

・・・誰かがそう言ったような気がした・・・

 

ぴよぴよ♪ちゅんちゅん〜

「ふぁ〜・・・」

なんだか今日は目覚めがいい

「うーん」

軽く背伸びして台所へ

「おはよう」

いつものようにだれもいない台所へあいさつする

お姉ちゃんも今日はいない

いても今とかわりないのだけれど・・・

早速着替えてご飯を食べる

もぐもぐ

なんか今日は珍しく食欲がある

パン半斤も食べてしまった

そして、お気に入りのストールを羽織り

「行って来ます」

いつものように商店街で買い物を済ませ

あの公園へ行く

そうたくさんの思い出がある

あの、公園へ

噴水の側にある私のお気に入りの場所で腰掛ける

この木の木陰はとっておきの場所

木漏れ日が眩しかった

今日はとっても良い天気

風もなんだか穏やかで

こんな日は眠くなってくる・・・

「zzz・・・」

気づいた時にはもうお昼過ぎだった

そろそろ学校が終わるころだ

えっ、なぜそんなに早くおわるかって?

なぜなら今日から学生は嫌な・・・そう例のテストさんが・・・

でも半日で終わるので

ある意味良い日なのかもしれない

そしてこんな時だけ私は

「学校に行ってなくって良かった」

なんて思う

さてそろそろ帰ろう

そう思った時、ふいに後ろから声が・・・

「勘弁してくれ〜名雪!」

「だめ〜!!今日は約束してたイチゴサンデーの日なんだから〜!!」

「うわああぁ〜〜・・・」

「・・・・・・」

私はそんなやり取りをただ茫然と眺めていた・・・

・・・はずだった

不意にさっきの男の子が

私の側まで走ってきた・・・後ろを見ながら・・・

どしいぃーーん!!

案の定、その男の子と私と名雪と呼ばれていた女の子は

三人とも凄い勢いでぶつかった

「いってぇ〜」

「いたいよ〜」

「・・・」

私はどうしていいのかわからず

ただ茫然、打ったおしりと腰をさすっていた

「大丈夫?」

茫然としている私をみて名雪さん?がそう言って

駆け寄ってくる

「ごめんね、こんなことになっちゃって・・・」

「いえ、大丈夫ですから」

「あの〜・・・」

「あっ、私?名雪、水瀬名雪。よろしくね」

なんだかのんびりとした人である、

と、そんなことを考えていた時

「いったぁー、名雪、おまえのせいだぞ」

さっきの男の子がそういって駆けて来る

「宏幸のせいでしょ?まったく・・・」

「昨日、ノート取ってあげたかわりにイチゴサンデーおごる約束じゃない!」

「いや、だから今日は金が・・・」

「うそつき〜!!」

「いや、だから・・・」

そんなやり取りを見ていると

なんだか夢のなかで誰かが言っていた

゛明日逢えるよ・・・゛

そんな言葉が思い出される

なぜだかこの人たちを見ていると・・・

そこへ宏幸と呼ばれていた男の子がこっちへ来て

「いやぁ、ごめんな。こいつのせいでこんなことになっちまって」

「違うでしょ!!」

「無視、無視・・・」

「おれ宏幸、水鏡宏幸。よろしく・・・もないか」

「怪我はない?大丈夫?」

「いえ、怪我もありませんし、それに・・・」

そう言いかけてやめた

「それに?」

「いえ、なんでもないんです」

そう、まだきまったわけではないんだ

この人たちがそうとは・・・

でも、もし彼らだったら・・・

そう思うとなんだか心がうきうきしてくる

こんな気持ち初めてだった

「そいじゃ、ほんとごめんな」

「ごめんね」

そう二人が謝った

「もういいですから、それよりも・・・」

「ん?なに?」

「もしよろしかったら、また・・・」

「また会ってくれませんか?」

なぜかわからないけどそういってしまった

しばらく二人ともポカンとしていた

変な子だと思われたかな?

「もちろんだよ」

返事は意外なものだった

「今日のお詫びも兼ねてまた明日にでも」

「その時は・・・宏幸、わかってるよね?」

「なんのことだか・・・さっぱり・・・」

くすっ

つい笑ってしまった

「?」

二人で顔を見合わせている

「どうかした?」

「いいえ、ただおかしかっただけです」

「やっぱり・・・名雪の顔がおかしいんだよな〜」

「おれ、昔から思ってたんだ」

ぽかっ

不意に宏幸さんの頭にげんこつが入った

「おい!いくら本当のことでもげんこつはないだろう?」

「う〜、ひどいよ宏幸」

「ごめんごめん、あんまりからかいがいがあるから、つい」

「・・・イチゴサンデー」

なんだか暗黙の了承?みたいでちょっとかっこ良かった

「それじゃそろそろ俺達帰るから」

「はい」

「そいじゃまた明日な!」

「楽しみにしてます」

「ばいばい〜」

そう言って名雪さんが手をふってくれた

「ばいばいです」

私も小さく手を振って見送った

「さて私も帰らなくちゃ」

荷物を持って歩き出す

逢えたね

ふいに誰かがそう言ったような気がした

「まさか・・・ね」

その夜

私はなかなか眠れなかった

明日のからのことで頭と心がいっぱいで・・・