そして、終の時…

導入部のみ

 

 

ヒトとヒトを繋ぐモノ

それにどれほどの価値があるのだろう?

 

ギッ…

カラカラ…

 一度だけ引っかかりはしたものの、扉は軽く開いた。

 少し埃の積もった部室に足を踏み込む。

 机の配置も、楽器が置いてある場所も、入部した時…初めて彼と出会ったあの時から変わっていない。

 体育館の方から聞こえて来る校長の低い声。

 最後にそれを聞いたのは、何時の事だっただろう?

「さて…」

§

カチッ…カチッ…

 消毒液の甘ったるい匂いの立ちこめる病院の中で丸一日あちこちを検査された結果、若い担当医がボールペンでカルテを突付きながら伝えた長く難しい病名。

 だけど、僕にとってはそんなモノよりも、それがもたらした結果のほうが遥かに深刻だった。

『絶対安静』

 言い換えれば、死ぬまで寝ているしかなくなったわけだ。

 確かに体から、日に日に『生気』とでも言うべきものが無くなっているのは理解できる。

 しかし、だからと言ってまだ言う事をきく体をただ横たえているのは、時間の無駄遣いというものだろう。

 それに、まだ僕には、やらなければならない事が有った。

 

作品は、『ふふふ☆プロジェクト』発行↓に掲載