膝前十字靭帯(ACL)損傷に関する症状およびACL再建手術説明書

私が駿河台日本大学病院整形外科で手術前にもらった説明書より引用

 

 膝関節は、主に前十字靭帯(ACL)、内側側副靭帯、後十字靭帯、外側側副靭帯の4つの靭帯でその安定が保たれています。

 なかでもACLは一番重要な靭帯で、膝の関節内の真ん中に存在し、大腿骨の後外側上部から、脛骨関節面中央前方に位置し、大腿骨と

脛骨を連結しています。

 

 ACLが不幸にして損傷(断裂)すると、膝の不安定性が強くなり、踏ん張ったりジャンプしたりする時に膝がガクッと抜けるような感じが

します。その状態が持続していると、軟骨が削れていったり、半月板が割れてしまいます。

 そのため当院では断裂したACLのかわりに自分の身体にある他の靭帯様組織(大腿部の外側にある腸脛靭帯)と人工靭帯を組み

合わせて移植する手術(鏡視下前十字靭帯再建術)を行っています。

 靭帯移植手術のため、人工靭帯が自分の膝になじみ、それに絡めた腸脛靭帯に血行が得られ、ACLとしての機能が充分に成熟する

まで、手術後約10ヶ月(妊娠→出産までとほぼ同じ期間)を要します。よって移植靭帯の成熟がある程度得られるまでは、硬性装具

(ハードニーブレース、プラスチックタイプ)を3〜4ヶ月、その後軟性装具(ソフトニーブレース、サポータータイプ)を装着する必要があります。

 

 ACL再建手術により膝の安定性が再獲得できても、膝の曲げ伸ばし運動(関節可動域)と下肢筋力トレーニングは、患者さん自身が

決められたプログラムに沿ってリハビリで頑張って頂けなくては良くなりません。特に手術後2ヶ月間のリハビリが重要です。

 

 そして再建手術後約1年経過した時点で、再入院の上、膝関節鏡検査で靭帯の成熟度の確認と、脛骨のステープル(移植靭帯を

骨に固定した金属)の抜去手術を施行します。

 

 移植手術には残念ながら神経が通わないため、その機能は元のACLの平均約85%といわれています。足りない分は下肢の筋力で

補強しましょう。

Nihon Univ. PHOENIX QB10 Yuji Kinoshita 1998