果てしなく青い、この空の下で…。(PC)
メーカー TOPCAT 総合評価 80点(良作)
ジャンル NOV
発売日 2000/06/30
シナリオ 鷹取兵馬 前作「L」で評価を下げた感のある
TOPCATの新作。しかし、コミケの
個人ブースでオフィシャルサントラを
売る会社はここだけだと思います(^^;
原画 たかみち
サウンド SYUN

※以後の評価は修正済み版に基づいています

個人的エピソード
チェックはしてたけど買いませんでした。積みまくってたし。
でもかなり評判いいみたいだったのでついつい購入。コミケ直前に(爆死)

内容
始まりは安曇学園の閉鎖だった。
いつか……。ふと思ったことがある。
俺の胸の中で永遠に繰り返されるだろうこの物語は
実は俺達だけが見た幻ではないだろうか?

安曇学園が閉鎖となったこの年、
俺達は移りゆく季節の中でお互いの大切さを確認しあった。
現実とも幻想とも言えないあの時間の中では、
それだけが自分を確認できる唯一の手段だった。

だが、他人は言う。
「そんなことは何もなかった。お前は幻を見たのだ」と。

それでいいのかもしれない。
夢であれ幻であれ、俺はこの事を忘れはしない。
彼女が俺を優しい笑顔で見つめてくれるなら、俺は何よりそれが一番大切だから。
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量は約530MB。音楽もインストールするのでこんなものでしょうか。
ゲームは選択肢を選ぶことで進行するノベル形式を取っています。
終盤に若干例外はあるものの選択の難易度自体は低めなのでEDを見るのはそれほど苦労しないと思います。

ゲームを進める際には「しおり」を選択して始めます。
CGや既読文章についてのフラグはゲーム全体で管理されますがシナリオフラグは「しおり」ごとに管理されるわけです。「痕」なんかと同じですね。
セーブ数は「しおり」1つにつき30個。ゲーム全体では90個もあるので少ないということはないでしょう。
この点に関しては文句なしです。

一方、テキスト量が多いにもかかわらず読み返し機能が付いていないというのは不親切に感じました。
スキップは強制・既読の2種類が用意されていますがどちらも独特です。
強制に関しては文字速度を早くして自動送りをONにすることで代用とします。
(Shiftキー押下の方が速かったりしますが^^;)
既読スキップは「次の選択肢まで飛ばす」というものですが、
一般に見られる次の選択肢までの高速スキップではなくて文字通り次の選択肢までワープします。
この既読スキップ方式、便利は便利なんですが迂闊に使うとCGが登録されなかったりするので、
多少使い勝手が悪いかもしれません(苦笑)

鑑賞系はCG鑑賞のみ。
後述するようにBGMが結構いいだけにせめて音楽鑑賞くらいは用意して欲しかったところです。
それ以外にこのゲームの特徴として挙げられるのがテキストの書式を選べるという点でしょうか。
縦書き・横書きのどちらかを選択可能です。
個人的にはゲームの雰囲気・読みやすさは縦書きが勝ると思っていますが、
テキストの記述は横書きベースなんですよねぇ…。なのでちょっと変な表示になるところも^^;

絵とか
原画はたかみちさん。そっち方面は詳しくないので自信ありませんが、
たしかPS版の「エアガイツ」のキャライラストを描いていたような気がします。

CGモードによれば120枚近くありますが、パターン違いも1枚として数えられるのでもっと少ないように感じます。
とは言っても「CG欲しいな」という局面では大体イベント絵が用意されているのでプレイしている最中に特別物足りなさを感じることはありませんでした。
デッサンなども変に感じたのは1枚しかありませんでしたし、立ち絵もなかなかよく出来ています(もうちょっとパターン欲しかったような気もしますが)。
またアニメスタジオのJ.C.STAFFが手がけた背景はかなり美麗です。

CGの塗りは水彩画調の淡い塗りで、こういう業界では珍しい部類に入ると思います。
塗りのレベルとしてはなかなか高いしゲーム全体の雰囲気にマッチしていて良いのではないでしょうか。
1つ残念な点を挙げるとすれば画面の約3分の2をテキスト領域として確保しているために
立ち絵が1人分しか表示されないことくらいです。
CGの塗りもあってかなり画面が寂しい印象になってしまいました。

音楽とか ※音声はありません
音楽はWAVで再生されます(EDボーカル曲のみCD-DA)。
コミケで買ったサントラによると音楽は全部で34曲用意されているそうなんですが、
全然気付きませんでした(ぉぃ 20曲くらいかと…^^;

というのも、このゲームは音楽が流れているシーンの方が少ないくらいでたまにしか流れない
(特に前半はそれが顕著)上に1シーンしかかからない曲も多いためです。
ゲームの多くの部分は効果音をバックにして進行します。それ以外は完全に無音です。
この効果音がレベル高くていかにも「田舎」な雰囲気を醸し出してくれます。
効果音レベルとしてはベタ誉めした「リフレインブルー」級ですね。

で、このように書くと音楽のレベルが低いように思われそうですが、全くそんなことはありません。
それどころか楽曲レベルは相当な高さです。起動してタイトル画面の曲聴いた時点で「合格!」と思ったほどに^^;
故にWAV再生なことも、音楽鑑賞モードがないことも不満に感じるわけですが。
恒例のお気に入り曲は「タイトル」「楽しみ」「海〜告白」「藍がいない」とボーカル曲「nikoensis〜追想」辺りです。
特にゲームの余韻を感じさせるボーカル曲はオススメです。
また稀にしか流れないために音楽の演出効果が通常より高まっているように感じました。
「猫屋敷」で流れる曲には呪われそうで本気で泣きそうになったり(爆)

シナリオとか
全体としては和風伝奇ホラーです(厳密には和風とは言いがたいですが)。
その見せ方が非常に上手くて、「環境の変化とそれに応じて変わるヒロインや主人公の生活」の描写が次第に伝奇に移行する様は見事としか言いようがありません。

またシナリオ構成が巧みで1人のシナリオだけでは決して謎は解けません。
キャラによってはかえって謎が深まることさえあります。
シナリオ同士を有機的に結び付け、全部のシナリオをクリアすることで
物語の全体像を理解させるという手法は大したものです。プレイヤーのやる気を大いに刺激してくれます。
その結びつきを作る手段として「村の伝承」を配しているのも上手いですね。
バッドエンドが相当悲惨なのも逆にハッピーを見る動機付けになりましたし。

全てのシナリオをクリアしても謎は謎として残る部分があったりと難点も無きにしもあらずなんですが、
個人的には久々にシナリオ考察なんてものをやったりもしたのでまあこれもアリかな?と(いい加減)。

ただ、本当にわずかですが前後の流れに対して不整合が起きてるところもあるように思いました(夜中にやってたりしたので大声では言えませんが^^;)。
完成度は極めて高いと思うので逆に目立ってそこだけが残念です。

余談ながら全キャラのハッピーエンドを見た後に追加される「?(おまけシナリオ)」は必見です。なるほど、このゲームは「痕」ではなく「恋姫」だったのね……と両方やった方は思われることでしょう(笑)
#しかし、堂島の悪戯を手ぬるいと思う私はやはり汚れているのでせうか?^^;

総評
面白いです。やって損は無いはず。
久方ぶりにまともな「当たり」ですよ。

まとめ。相当にレベルの高いノベル。誉めてばかりだし。
オススメの1本です。2000年上半期トップ3には入るでしょう。
面白さだけで言えば85は堅いんですが、微妙な不整合とシステム面で挙げた不満から80点に降格です。
この手のが好きな人はとりあえずやってみては?

書いた時点での総プレイ時間 約17時間(コンプ)
お気に入りのキャラ 芳野雨音・八車文乃(?での彼女は凄いです^^;)
お気に入りのセリフ 「私のこと…守ってくれる?」
「たぶん…私…こんなこと一生誰にも言わない」

初版2000/09/01