奴隷市場(PC)
メーカー ru'f 総合評価 75点(佳作〜良作)
ジャンル ADV
発売日 2000/12/22
シナリオ 菅沼恭司 様々なイベントで「イニシャルガイドブック」を配るなど宣伝活動にはかなり力を入れていた1本。
あと原画の由良さんは美人だそうな(ぉ
原画 由良
サウンド あゆか51・砂姫冬馬・ざくろ石・I've

※以下の評価はVer.1.01に基づいて評価しています

個人的エピソード
CC2000に行った時にもらったイニシャルガイドブック(世界観解説本)に載ってた
バルバリゴ大使(お爺さん)のセリフに惚れたので購入(マテ
……こんなヤツ日本に私しかいないんじゃないでしょうか?

内容
 17世紀――
地中海の覇権をかけて争っていたヴェネツィア共和国を主としたロンバルディア同盟と神聖アイマール帝国。
強大な勢力を誇る神聖帝国に対して、軍事的に劣るロンバルディア同盟は全面戦争を回避すべく、
全権大使を帝都コンスタンティノヴァールに向かわせる。

調停団に同行する青年貴族、キャシアスは、旧友の案内により、
任期中の身の回りの世話をさせるための奴隷を買いに、市場へ――
今回の物語の中心となる奴隷市場へと向かう。そこで彼が見たものは―――
道具や、家畜のように軽々と扱われ、取り引きされる人間、奴隷たち。
高値で取り引<きされる若者や子供、そして、乙女たち。

あなたは、その中から、帝都での任期中、身の回りの世話をさせる少女を1人だけ買い取り
――そこから、物語は始まります。

異国での過酷な任務と、見ず知らずの少女――奴隷との生活。

その奴隷少女をどう扱うかは、全くの自由です。慰みものにして嬲ったあげく、また市場に売り飛ばしても、あるいは、殺してしまっても――あるいは――全てを失った少女に手を差し伸べ、優しく接してあげても。

ただ… 外国人の主人公が、奴隷に対して禁じられている行為がひとつだけ――
それは、帝国の財産である奴隷を、勝手に国外に連れ出すこと……。

必ず訪れる別れの時――その時、主人公は少女たちに何を残してゆくのか?
愛情か、憎悪か、希望、絶望、あるいは――彼女たちを自由にしてやるべく、命をかけて、世界と、運命と戦うのか…。
(メーカーサイトより)
#これで物語期間があれだけとは思わないですよねぇ(^^;

システムとか
必要容量は150/400/500MBのいずれかから選択。
OPムービーの高画質版をインストールする場合はさらに+70MB。
音楽なども含めてインストールするのでこんなものですか。

システムはごく普通の選択肢分岐型ADV。
もっとも実質最初のいくつかでシナリオが決定してしまいますが(^^;
まあ、基本システム同様、動作システムもオーソドックスにまとまっています。

セーブ数は16個。
ゲーム規模や難易度を考えれば十分な数です。

スキップは強制のみ。
どのキャラも純愛と陵辱の両ルートで重複する部分が多いので、既読スキップは用意して欲しかったところです。ここはマイナスですね。
バックログは相当量の読み返しが可能です。
が、微妙に履歴画面の操作が面倒ですね。
キー操作かホイールでもスクロールさせてくれるとありがたかったのですが…。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞にシーン回想と万全。
珍しいところでは世界観を知るのに役立つ(というか見ないと歴史知識が必須に^^;)用語集もおまけモードで閲覧可能です。
この用語集、ゲーム中でもSSの「街」みたいにテキスト中の下線が引かれた単語に関してはいつでも閲覧できるのが便利で良かったです。
見ると見ないとでは大違いなんで。

若干の不満はないでもないですが、ほぼ満足のいくシステムでした。

絵とか
目とか体のバランスにクセが強い方ですね。
特にセシリアの給仕シーンの骨格は何だかヤバイ気がします(ぉ
決して万人受けはしないと思いますが、個人的には嫌いじゃありません。

一方CGの方はというと、こちらは背景も含めてなかなかよくできているかなと。
個人的には普通のシーンでの街並みが雰囲気を醸し出していて◎でした。

で、枚数の方は77枚(パターン違い除く)。
ゲーム時間が短いことと、終盤にまとまってCGが用意されているために
特別少ないという印象は受けませんでした。
立ち絵も枚数的には少ないのですが、顔ウィンドウによる補佐もあって
こちらもやはりさほど少ないと思うことはなかったです。

音楽・音声とか
音楽はPCMで再生、全25曲。うち2曲はボーカルです。
ちなみにボーカルのみI'veが担当しています。

舞台は17世紀初頭のイスタンブールという設定なんですが、エキゾチックな曲を使う
ことでその雰囲気をなかなか見事に表現しているのではないでしょうか。
曲としての質も高めで、シーンごとの使い方も上手く満足。

お気に入りは「悲愴」「Epilogue」に加えてボーカル曲2曲。
ボーカルはOP、ED共に良質ですが、特にOPの「To lose in amber」は
2000年のI'veサウンドの中でも屈指の出来だったと思います。


音声は女性のみフルボイス。
キャラクターに合っていますし、演技力の方も文句ありません。
と一見文句のつけようもないのですが……男性に声がないのが不満です(ぉぉ

というのもこのゲーム、ともすれば女性陣よりも男性と喋っている時間の方が長い上に
男性サブキャラクターが非常に個性豊かで魅力的だからです。

2001年8月現在、DVDによる「奴隷市場完成版(仮)」が企画されているようですが、
そちらでは男性陣音声の採用を切に願います。
とはいえ、音周りは総合的に見て満足度は高いです。

シナリオとか
大作になりきれなかった。
この作品を一言で表現するなら、これが最適なフレーズでしょう。

とりあえず難点の方から挙げていきますか。

「奴隷市場」というタイトルから皆さんは何を連想されるでしょうか?
恐らくは鬼畜系の話を想像されるのではないかと思います。
このゲームには確かに鬼畜ルートも存在します。
が、はっきり言ってボリューム的にも少なく、ただ乱暴するだけで調教のような要素はありませんし、各ヒロインの過去にもほとんど触れないままに、主人公は死を迎えてしまうという…有り体に言えばバッドエンドに極めて近いものでしかありません

私個人としては(鬼畜系苦手なんで)それでも一向に構いませんが、
タイトルで期待して買うとバカを見ることだけは書いておきます。
「看板に偽りあり」だよなあ(苦笑)

次に純愛ルートについて。
このゲーム、内容紹介の壮大な感じに対して実際にはわずか4日ほどで物語は幕を下ろします。
この短さがどうしても気になりました。
奴隷として買われた女性との間に「お互いのためなら身を賭すことすら厭わない」と
いうほどの強い愛情が形成されるのに4日という期間はあまりに短すぎたのではないでしょうか。
そこまで強く惹かれあうにはちょっと説得力に欠けるんですよね。
特別結びつきが強くなるようなイベントがあるわけでもないし……。
これについてはゲーム期間をもう少し長く取るべきだったと思います。


と、文句はこれくらいにして誉めるべき点も。
まずは世界観の構築の見事さが挙げられます。
用語集を見ればわかることですが、
その気になればコーエーのリコエイションゲームくらい作れそうなほどの^^;設定群によって
「架空の17世紀ヨーロッパ」を作り上げることに成功しています。
こういう歴史色の強いゲームは「それらしさ」を見せるのが大切でしょう。

そして純愛ルートの怒涛の展開も私は気にいりました。
先ほどの問題点と矛盾しているように感じる方もいらっしゃるかと思いますが、
「心理の移り変わりの自然さ」さえ気にしなければ(そして、やっていると意外に気にならないのですが)、
3日目までにチラチラと見せられていたヒロインの過去への伏線の回収と物語の終幕が
開戦と同時に一気に動き始める辺りは秀逸かと。

戦争という異常時ゆえに許されるドラマティックな展開とでも言うのでしょうかね。
そういうのが好きな方にはオススメできます。
あとはEDがどれも決して安易に終わらず、どこか切ない感じなんで
そっち方面が好きな人にもいいかなと思います。

文句も書いてますが、個人的にはかなり好きな部類に入ります。
ただしシナリオのどこに注視するか、また設定の使い方の好みで評価は分かれるかと。
シナリオに反映されず世界観構築のみに使われる設定が大半ゆえ(^^;

総評
多少評価は分かれるでしょうが、いい出来です。
少なくとも個人的にはかなり気に入りました。

まとめ。もっと大舞台でやってほしいソフト。
真面目な話、ゲーム期間が2週間くらいあってもいいような気がします。
DVDの「完成版」も買うかもなんで、買ったらボリューム面で変化があるかにも注目してみたいところ。

主観評価は80点ですが、鬼畜ルートの弱さとやっぱ男にも声が欲しいということで5点ほどマイナスさせていただきます(^^;

書いた時点での総プレイ時間 約10時間(コンプ)
お気に入りのキャラ セシリア・ドラクア・バルバリゴ大使・ジャラルディ(マテ
お気に入りのセリフ 「キスしてもらったら…――目を、覚まそうって…思ってたの…」
「天国に…行けると…いいね……」
「私は、天使なんかじゃない…。
――翼は作り物だし…それに…君を――救えなかった」

初版2001/08/07 最終更新08/08