ELYSION〜永遠のサンクチュアリ〜(PC) ※ディスク2枚組
メーカー テリオス 総合評価 85点(良作〜名作)
ジャンル ADV
発売日 2000/08/10
シナリオ 藤木隻 「横田守でメイドゲー」…話題性としてはそれだけで十分。
発売前に一体どれだけの人が、ああいったシナリオ内容を予見できたでしょう? 絶対館ものだと思うってば(^^;
原画 横田守
サウンド 樋口秀樹


個人的エピソード
横田さんの絵が好きなのと発売後の評判がなかなか良かったので。
…とか言いながら半年以上積んでたのは秘密(爆)

内容
ヴェネツィアにほど近いアドリア海の孤島……。
島に建つ壮麗な洋館では、世界各地から非合法な手段によって集められた
メイドたちに囲まれ、一人の老人が悠然たる日々を過ごしていた。
老人の主治医として屋敷に招かれた内科医、葛城遼一(主人公)は、
メイドたちへの命令権を与えられると同時に、
彼女らの健康管理を一任される。
老人の真意が読めぬまま、葛城はメイドたちとの19世紀さながらに
様式化された奇妙な生活へと入ってゆく…………。

屋敷内に渦巻く陰謀。見えざる悪意。
失われた過去を知る一人の少女。
様々な思惑が錯綜し、隠匿する真実とは何なのか?
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量は60/500MB/1GBのいずれかを選択。
こういう自分のHDD容量と相談できるタイプのゲームは嬉しいです。

システムとしては…古き懐かしきタイプのADVとでも言うのでしょうか?
マップを自由に探索してキャラクターと会話したり、
アイテム(もっとも自由には使えませんが)を入手したりして進行していきます。
やったことのある方はSSの「慟哭」からアイテム使用を取り除いた物を連想していただければ。
原画さんも同じですしね(^^;

セーブ数は14ヶ所。日付変更時及びマップ移動時のみ可能です。
会話画面でセーブできないのは少々不便ですし、数自体も攻略を見ない人にとっては
いささか少ない感が否めません。
スキップは強制スキップのみ。
バックログもなし。これは性質上仕方ないところでしょう。

その他、マウスだとマップ移動が死ぬほど面倒という難点もありますが、
これに関してはキーボード及びゲームパッド操作にも対応しているので
そっちでやるのが吉です(ぉ

鑑賞系はCG・BGM鑑賞にシーン回想。この辺は抜かりないです。
あと、珍しいところではEDリストが用意されています。
総ED数が21個と多めのこのソフトには嬉しい仕様と言えるでしょう。

絵とか
原画は横田守さん。有名な方ですね。
相変わらずリアルな肉感の綺麗な女の子が一杯です。
で、CGの塗りも原画の良さを殺すことのない高いクオリティで安定しています。
Hシーンの描き方や汁^^;までしっかりしてて満足です。

枚数はCG鑑賞モードによると300枚。
パターン違いCGを除くと約230枚といったところでしょうか。
どちらにしても凄い枚数です。
個人的には他のソフトと比べて男性サブキャラのCGが多いのが気に入りました。
変な意味じゃなくて、サブキャラを大事にする作品ってのが基本的に好きなんで(^^;

とにかく絵に関しては質・量ともに何も言うことはありません
満腹満足です。

音楽・音声とか
BGMはMIDIで全40曲。
曲数の多さを生かしてそれぞれ場面にあった使われ方をしています。
また質自体も結構高くて、MIDIでしかもGMデータという機能制約を考えれば十分賛辞に値するかと。
私は例によってSC-88Proで聞きましたが、「オープニング」「サジタリウス」「ベルファストの雨音」「流れる雲を追いかけて」「パンドラの箱」あたりはいい感じでした。
ピアノ曲とかクラシカルな曲調が好きな方なら気に入るのではないかと。


音声の方は男女およびメイン/サブを問わず一部のみ。
基本的にはビジュアルCG付きの物を中心としたイベントシーンにのみ音声が
付いていると考えればいいでしょう。
声質もキャラクターに合っていますし、演技力の方もかなりのもの。
特に男性キャラの中にはどこかで聞いた(「聞いたような」ではなく)方の声もあったりして、
「これは本当にエロゲだよな?」と何度も思いました。
唯一難を挙げるならば、フルボイスでないことくらいでしょうか。
フルにしたら3GBとか必要になりそうですけどね〜(^^;

シナリオとか
まず一般の館ものとかメイドさんものを想像していると一杯食わされます。
そんな甘っちょろい世界は描かれてません(^^;

テーマとしては「自由」「人の心」「主従関係」「人が人として生きるという意味」といったようなところでしょうか。
単純にそれらを料理するのに「メイド」という存在が極めて便利だったために、メイドという題材を取り上げただけなんじゃないかと思えるほど、メイドさんものっぽさはありません。
オタクの偶像的な「メイドさん」ではなく真の意味での「メイド=MAIDEN」を描きたかったというのが言外から伝わってきます。

それに様々な愛憎・思惑がからまり、さらにメイドが不自然でなくなる場としての洋館
……作中でパドリーノが用意した舞台設定ですが、奇しくもそれは制作サイドがプレイヤーに対して言いたいことを表現するために最適な環境設定だったのではないかと思いました。

それらテーマを決して説教臭くないレベルでまとめているのには素直に脱帽です。
自由とかについてちょっと考えさせられましたし、まさかエロゲでコソボ難民問題に触れるなんて思ってませんでした(^^;


また膨大な設定群が支えるキャラクターの言動のリアリティは他に類を見ないのではないでしょうか。
作中、クリスがディアナに対して持っている「理屈じゃない憎しみ」なんかは欧米の方が書くならともかく、日本人のシナリオさんが描くとは思いませんでした。普通、書けないし書かないでしょう。
(プレイヤーにはちゃんとわかるように書かれてますのでご安心を)
※ちなみに「理屈じゃない憎しみ」=カトリックとプロテスタントの軋轢のこと

そういった裏に用意された設定、巧みな伏線の張り方、そしてプレイヤーが飽きる前にちゃんと収束する話の尺…綿密な計算に基づいて用意されたかのごときシナリオには、個々のシナリオとしては何も文句をつけるつもりもありません。

惜しむらくは一部キャラクターの話し方が若干堅い印象を受けてしまってちょっと距離感を感じることと、様々なフラグを立てなければならないマップ移動パートで共通部分が割と多めなのでその辺りが多少冗長に感じる点くらい。
もうちょっと早めにシナリオ分岐があっても良かったかもしれません。

あと細かいことですが、マナ以外のサブヒロインシナリオではせっかくのテーマをややないがしろにしているように感じました。ちょっと残念。出来自体は悪くないので、マイナス要因にはなりませんが(^^;

総評
面白かったですよ。本当に。

まとめ。大人のための18禁ゲーム。
あらゆる要素が高いレベルでまとまっている良作。
シナリオ評価的には80点ってとこですが、他の要素のレベルの高さと客観視を交えて5点ほどプラス。

…なんで、あれだけシナリオ誉めてて80点なのかって?
技量が高いのは認めますけど、どうもメイドエンドに馴染めなかったので。
ああいう西洋的な神と人間の間にあるような愛の形は私にはちょっと……。
どうも私は「メイドさん属性」であって「メイド属性」ではなかったようです(爆)

書いた時点での総プレイ時間 16時間40分(コンプ)
お気に入りのキャラ ディアナ・ジェーン
お気に入りのセリフ 「わたし、毛づくろいは得意です」
「イタリアの女の子は世界一神様に近いところで生まれたんだよ。
だから世界一純情なの。ちゃんと言葉にしてくれなくちゃ嫌!」

初版2001/05/08