銀色(PC) ※ディスク2枚組
メーカー ねこねこソフト 総合評価 70点(佳作)
ジャンル NOV
発売日 2000/08/31
シナリオ 片岡とも・ヤマタカユウキ・高嶋栄二・ALFRED 前作「White」が比較的好評だったねこねこの第2作。
メーカーWeb紹介読むと某ソフトを連想しませんか?
PSとDCで出てるノベルソフトなんですけれど(核爆)
原画 白凪マサ・綾瀬悠・秋乃武彦・葵渚
サウンド えび・SIMO・443・よしお

※以後の評価は00年8月31日公開修正版に基づいています

個人的エピソード
まあ、和風ノベルは大好物の1つなんでチェックしてみました。
某ソフトと似ているに違いないという底意地の悪さも要因ですけど(^^;

内容
――かつて、
銀は月からこぼれ落ちた雫を集めて作られたと言われてきた。

それは現実とは異なる美しい夢物語として伝わり、
いつの間にかお話の中だけの世界として消えていった…

…どんな願い事も叶うという不思議な銀の糸…

さまざまな時代を通して、複雑にそして淡々と絡み合っていくストーリー達。
その全てが結びつく時、
きっとあなたの中の「何か」が変わる…
(パッケージ裏およびメーカーWebページより)

システムとか
必要容量は910MB。
基本的には選択肢分岐型のノベルゲームです。
しかし、やってみた限りでは選択の意味はほとんど無く最終章を除いては一本道と言っていいでしょう。
バッドエンドや次の章に進めないこともあるようですが、そういう事態に遭遇する方が難しいです(^^;
セーブ数は20個。上記の理由から数としては充分でしょう。
スキップは「次の選択肢まで進む」を選ぶことで機能しますが、未読だろうが問答無用で次に進みます。
だから〜、何度も書いてますが既読と未読の判別ってそんなに難しいんですか?>プログラマ各位

読み返しは「回想」で可能ですが10ページしかバックできないうえに、我が家の環境では徐々にずれていき(ログの溜まり方とシナリオの進行に差が出る)、十分な量を読まないうちに戻ろうとすると文字化けしたあげくフリーズするという素敵な現象に出会えました(苦笑)
このゲームは「徹底的に映画を意識した」というだけあって字幕のように常に2行までしかテキストは表示されないのですが、それで10ページ……、使えません(^^;

鑑賞系はCG鑑賞・音楽鑑賞。Hシーンを目当てにするようなゲームではないのでこれで充分かと思います。
あ、私は使いませんでしたがオートモードも付いてます。

絵とか
顔の大きさや目の描き方にクセはありますが、私的には結構好きです。
塗りの方は決して突出した出来とは思いませんが、一枚絵などはかなりしっかりしています(その分?立ち絵はちょっと手抜きかも^^;)。
原画欄には4人の名前を掲載してありますが、2人の方は1,2キャラのみというような状態なので実質2人。
で、どちらの絵も似た感じなので違和感みたいなものは感じませんでした。

枚数の方は鑑賞モードによれば78枚。
ですが、鑑賞モードに登録されないCGが結構あるので実際にはもっと多いです。
少なくとも本編プレイ中に少ないという印象は全く受けませんでした。
余談ながら鑑賞モードに登録されないラフ調・色鉛筆調の絵が割と好きなのとパターン違いCGを見ることができないという2点が原因で、鑑賞モードの評価は低いです(絵とは直接関係ありませんけど^^;)

音楽・音声とか
音楽は全部で26曲。うち4曲はおまけシナリオ専用となっています。贅沢です。
音楽スタッフのうち、よしおさんだけは存じ上げませんが他の方は同人音楽系ではかなりの有名人です。
同人CD野郎の私は何枚もこの人たちのCD持ってます。

で、CD-DA再生のBGMの出来、いいんです。……が、質の割には印象に残っていません。
(さすがに「いい出来だった」というのは覚えてましたけど)
わりとサラリと聞ける曲が多いのも要因の一つだとは思いますが、なんでかはよくわかりません。
CDを聞き返した結果のお気に入りは「つかぬまのアンチテーゼ」「こと花どもにのみ露枯れたる」「夕化粧」「〜星の約束〜」「ミツカラナイ」「闇から出でしモノ」といったところでしょうか。443さんの曲と相性が良かったです。
#お気に入りの多さでも質の高さはわかるかと思います

音声の方は「ヒロインのみ大半」とでも区分すればいいのでしょうか。
1章などはヒロインのモノローグまで声付きです(他の章でもヒロイン格の台詞は全て声が付いてます)。
ただ、パッケージ裏に「徹底的に映画を意識した」とまで書くならサブ格のキャラにも声を付けて欲しかったですね。
章あたりの登場人物は大して多くないわけですし。
特に3章に出てくる夕奈姉さんの声は絶対に必要だと思うのですが(笑)
さて、このゲームには映画云々のせいか「英語モード」というのが搭載されています。
字幕や音声を英語に変更することができるわけなんですが…私は使ってないのでどんな感じかよくわかりません。
とりあえず「Coming,coming!」というセリフがあることは風の噂で耳にしているのですけれど(ぉぃ
上の例はともかく、ここまで日本的な作品に英語の字幕や音声を付ける意味があったのかは疑問です。
体験版では英語モードも使ってみましたがはっきり言って雰囲気ぶち壊しでした。
英語の勉強にはなるのかもしれませんが、エロゲやりながら語学力高めても、ねぇ?

というわけで次回作は英語を削ってフルボイス化してくださるとありがたいです>メーカーさん

シナリオとか
まずは全体の印象です。前作「White」の評判もなかなか良かっただけあって上手い作りになっています。
どのライターさんも水準以上の実力の持ち主なのでは。

こういう複数の時代に跨る作品はまず転生ものなんですが、
そうではないところにまず驚かされました(解釈次第では転生関係にあるキャラクターもいますが)。
転生ものが「登場人物の魂」で時代時代を繋いでいるのに対して「銀の糸」というアイテムで時代時代を繋いでいくという手法を取っているんです。
まあ、共通した”何か”とそれを巡る人間たちがいれば、複数時代ものは成立するわけですから当然アリなんですが珍しいかな、と。
で、内容としては…ちょっと救われない系のお話かもしれません。
「糸」であったり、その時代ならでは?の風習であったりと様々な運命に翻弄されてヒロインや主人公は尽く幸せな結末を迎えることはできませんから。
というわけで幸せな結末が好きな私としては素直に楽しめませんでした。
面白いことは面白いのですが……。

転生ものは最終的に幸せになれれば許せるんですけど、「その時代で糸に関わった人々」というだけで転生みたいな”次のチャンス”がない人はその場・その時で幸せになって欲しいんですよ〜(^^;

章ごとにライターさんが違うということで、それぞれの章に短い感想でも。
*第1章
もの凄く淡々と進む印象を受けました。
でも、頻繁に使われる「〜〜な日のこと。○○した日のこと」というフレーズが頭の中に刷り込まれる効果や章の終わりで語られるセリフの言い回しなど、実は1番技量が高いのはこの章なのかもしれません。
案の定、世間の評価も高いです。表示されるサブタイトルが明らかにズレてるのはいただけませんけど(^^;
*第2章
わりと暖かい話で、この章は素直に好きです。狭霧萌え〜。
しかし、暖かいままハッピーエンドとはいかないのがこの話なんですよね…。
*第3章
…………救われなさすぎです。やった後でマジでブルーになりました。
嫉妬・人の二面性・狂気…そんな言葉が何度も頭をよぎる暗い話です。
何しろレビュー用のメモに「女は怖い」と書き残しているくらいですから(^^;
ヒロインと主人公、それぞれの視点に切り替わりながら話が進行するという技の使い方としてはこれ以上ないほど上手くいっていると思うのですけれどね。
どんどん追い込まれていくヒロインと気付かない主人公みたいな感じで。実は1番好きかも(ぉぃ
夕奈お姉ちゃん、萌え〜〜〜(核爆)
*第4章・第5章
これは2つで1つの章なんでまとめて。きっちり話を収束させてます。
4章と5章、それぞれのヒロインや主人公に同じセリフを吐かせてそれを契機に切り替わるというのは結構斬新かもしれません。切り替え時に全く不自然さを感じさせませんでした。やるなぁ。
最後でようやくハッピーエンドなんで「よかったね、よかったね…」と(笑)
*おまけシナリオ
「ロードローラーだっ!」な感じのマンガがお好きなら楽しめるかと(^^;

総評
なかなか良質な日本系ノベルの1本。
「妖」みたいなのが出てこないのってこれが初かも。

まとめ。良くも悪くも同人臭さが残る良質ノベル
シナリオ面での述べた手法/未熟なシステム・効果があったのかわからない音声面での取り組みといった部分に
それが顕著に表れているかと。話は面白いですし、もう一皮剥ければ大化けの予感も。
システムが不満なのと幾らなんでも1〜3章までが可哀想すぎるんでこの点。
作品としてはこの評価よりもうちょっと好きなんですけどね。
その辺が気にならない人ならもう10点くらいなら加算も可、かな?

書いた時点での総プレイ時間 約10時間半(コンプ)
お気に入りのキャラ 狭霧・(“制服エプロン”の)あやめ・夕奈(爆死)
お気に入りのセリフ 「…わたし、光ってた?」
「お日さまはまぶしすぎるけど、お月様なら私も照らしてくれると思って」
「この世の中でたった一人、自分にしかできない役目があるとしたら、
 とても素敵なことだと思いませんか?」
#暴走モード夕奈(笑)のセリフ全般が記憶に残りすぎ(^^;

初版2000/10/07 最終更新2001/02/24