久遠の絆〜再臨詔〜(DC)
メーカー F.O.G. 総合評価 85点(良作〜名作)
ジャンル シネマティックノベル
発売日 2000/05/18
シナリオ 加藤直樹・小林且典ほか 98年12月にPSで発売された「久遠の絆」の移植版。
個人的にも世間的にもかなり評価の高い同作品、
新シナリオの追加が最大の話題に。
キャラクターデザイン 岸上大策
サウンド 風水嵯峨


個人的エピソード
PS版が出たときはまだ高校生でした。というか名目上は受験生(爆)
しかも発売日に数学の課題提出に追われて買えなかったために試験が終わった後、
あちこち駆けずり回る羽目になりました(ちょうど再出荷する前だったので)。
今回は予約もできて随分入手が楽になったもんです^^;

内容
「千年前から好きだった」

昔から時折見ていた狂夢とも言うべき悪夢。
頻度を増す悪夢に呼応するかのように増加する怪異。

そんな中、主人公の通う高校に謎の美少女「高原万葉」が転校してきた。
それを機に次々に起こる不可思議な事件、そして蘇る千年前の記憶。
彼らは時と場所を超えて再び巡り会う。
それは過去から現在へと続く悲しい恋物語の再演なのか…
(パッケージ裏より抜粋、若干追記)
#まあ、前世ものの基本スタイルですね(笑)

システムとか
基本的にごく普通のノベルタイプアドベンチャーです。
時折「法術戦闘」なる五芒星を描いて妖魅を祓うというシーンもありますが、
まあミニゲームのようなものなので説明は割愛します。
(負けたらゲームオーバーになるのでミニゲームにしては真面目にやらなくてはなりませんが)

ノベル部分のシステム解説に戻ると読み返し、既読スキップなどのシステム回りもしっかり装備されています。
PS版ではメモリ容量の関係から読み返しは5画面分しかできなくてかなり不満だったのですが、今回は100画面分読み返せるようになったので読み返し機能の意味が初めて生まれました^^;

既読スキップはかなり高速ですし、未読の文章に関してもスキップはできないものの
Bボタンでページ単位の表示が可能なのでかなりプレイ時間の短縮にも役立っているのではないでしょうか。
何よりもDCの方が読み込みが早いのが助かりました(笑)
#我が家のPSはSCPH-1000なのでかなり遅いんです

セーブ数に関してもPS版は3つまでとかなり少なかったのに対して今作は20までその数が増えました。
ちなみに20までなら幾つセーブしても必要なブロック数は30ブロックです。

システム回りに関しては文句なしです。充実です。

絵とか
原画・塗りともに相当高いレベルです。
正直なところ家庭用としては最高峰なのではないでしょうか。
構図とかの危険さも含めて(笑)
PS版でも綺麗だったのにDC版ではさらにクオリティが上がっています。
新規追加された「再臨詔」シナリオの関連でCG数もかなり増えていますし文句は全くありません。

はっきり言って例えばWindows環境に移植しても全く見劣りしない質かと。
Hシーンだけしっかり描けばいつでも18禁です。売れると思います(ぉ
残念な点があるとすればPS版で審査に引っかかって削られた「でんぢゃあ」なCGはセガの審査にもやっぱり引っかかったのか存在しなかったことくらいです(笑)

音楽とか ※音声はありません
尺八やら笙やら普通ではあまり聞かない楽器が多く使われています。

作曲者の風水さん曰く基本的なコンセプトは雅楽+オーケストラだそうですが、
ゲームの雰囲気にとてもマッチしています。ノベルゲームではこれ、重要ですよね。

数あるゲーム曲の中でも個人的には屈指のレベルだと思っています。
ツボ曲が多すぎです。メーカーのHP通販で買えるサントラも発売日に買ってしまうほど。
ああ、解説になってない^^; まあ、それだけ名曲が多いということです。

PS版と比較してみると全般的に音量が大きくなっているので人によっては音楽の自己主張が強すぎると感じるかもしれません(私は気になりませんでしたが)。
でも単に音量を大きくして再収録しただけではなく、PS版よりも1曲増えていますし(サントラには収録済)、
音質も向上しています。
あまりアテにならない耳ですが、私でもED曲「真秀ろば」の和太鼓の明らかな違いには気付きました。
より本物らしい音になってます。内臓音源の違いのためでしょうか?
元々文句のなかった音楽面もさらに充実して何も言うことはありません。

シナリオとか
丁寧かつ面白いシナリオです。
和風前世ものノベルのお手本にして最高峰かもしれません。
(PCの「痕」なんかも和風前世ものですが、こっちの方が“和”の度合いが強いので)

PS版では多かった誤字も大半が修正されましたし、スキップや読み込みが早くなったことで読むのにかかる時間的負担も大幅に軽減されました。
昔はこれでかなりやる気を阻害されたので嬉しい限りです。

さて面白いですし、大好きなんですが難点もあります。

メインである万葉シナリオについては不整合も殆どありませんし、不満もほとんどありません。
ただ他の2人のシナリオはどうにも万葉と比べて不整合な点など詰めが甘い気がします。
なまじ他の部分の出来がいいだけにそういった部分が気になってしまいます。
「どうして神剣の力を借りた破魔の力が使えるんだろう」とか大いに悩みました。

本筋については不満はそれくらいでしょうか。
実は主人公に対する万葉の呼びかけの不統一性なんかも今になると気になるんですが、
シナリオに没頭してる時は気にならないので不問ということで^^;
(「万葉の心の奥からその時に出た呼びかけ」ってことで確信犯的みたいですし)
ハートマークはさすがにちょっと…とか思いましたけど。


「本筋については」と言ったとおりPS版からあったシナリオ本編については不満はこれだけです。
しかし、DC移植にあたって追加された「再臨詔」シナリオ、別名「聡子シナリオ」についてはどうにも不満が。

どういうシナリオかの詳細を書くことは控えますが、
ED曲「真秀ろば」と共にスタッフロールが始まった時に私は大いに驚きました。
なぜなら話が終わったようには感じなかったからです^^;
EDの直前までは非常にいい感じで楽しんでいたのですが……。

物語というのは完結させるというのが絶対だと思います。
特にゲームというメディアならなおさらです。
本来“ゲーム”という区分で見れば選択肢が1つもない「再臨詔」シナリオはゲームですらないのですが、
過程が面白くて納得のいくEDがあれば私はそういうのは全く気にしません。
ボリュームこそ大きいながらも一種のおまけシナリオですし。
でも、終わっていないのはいただけません。
「各自で物語を補完してください」とでも言うのでしょうか?
勘弁してください。その昔、エヴァンゲリオンもラストで冷めた私には耐えられませんでした。
まさか期待していた追加シナリオで評価を下げることになるとは……。

そんな感じでシナリオについては正直複雑なところです。
いや、面白いのは間違いないんですけどね。

総評
PS版の個人的評価は90点でした。
そしてDC版は考えうるほとんどの点が強化されています。移植かくあるべし、です。
本来なら評価は上がるはずなんです。実際、途中までは上がってましたし。
でも、例のEDで一気に評価は下がりました。
そこまでの経緯が良かっただけに残念なことこの上ありません。
まあそんな事件があっても総合的には面白いんですが。

まとめ。完成度は文句なしに高いノベルゲーム。
女の子が可愛く、かつ面白いノベルという条件で家庭用にこれ以上を求めるのは酷だろうと思えるほど。
音楽、絵、シナリオに加えてPS版が抱えていたシステムという弱点も排除。
まさに完全版。買って損することはないでしょう。
ただ個人的には「再臨詔」についての説明は欲しいですけど^^;

書いた時点での総プレイ時間 約28時間(コンプ)
お気に入りのキャラ 高原万葉・螢・桐子・観樹・綾 #多すぎ^^;
お気に入りのセリフ 「わたしは世界よりも貴方が欲しい」
「わた…しを、さがして、たかひさ。
 なんども…なんども…繰り返し…繰り返し…罪の許されるその日まで」
「兄さまだけが、兄さまだけが桐子の大切な宝物だったのに!」
#よく見ると平安編のセリフばっかりだ(ぉぃ

初版2000/06/12