ONE2〜永遠の約束〜(Win) ※ディスク2枚組
メーカー BASESON 総合評価 75点(佳作〜良作)
ジャンル ADV
発売日 2002/04/26
シナリオ 青山拓也・K.バッジョ他 かの名作「ONE」の続編。
全く違うスタッフによる続編、原画家の公募、さらには途中でのライターの変更などやや黒い意味での話題には事欠かなかった(^^;
原画 片桐雛太・日陰影次
サウンド 下地和彦・ようづきわたる・阿久沢タカシ

※以下の評価は5/7配布修正版に基いています

個人的エピソード
「ONE」は物凄く好きなソフトだったので全く別のスタッフによる「続編」が
どのような出来になるのか興味があって買いました。
正直不安や黒い期待の方が多かったかもしれません(^^;

内容
俺――貴島和宏は夏休みの終わりに単身赴任中の父親の元に引っ越してきた。
訪れたことのない町、名前も知らなかった学校、誰ひとりとして知り合いのいないクラス。
俺はそこで新しい生活を始める。
初めてのことばかり
――だけど、ありふれたどこにでもある学校生活の中で、俺は思いもしなかったことを経験することになる。

――人を好きになり、そしてその相手を失うことを。
(メーカーHPより)

システムとか
必要容量は約400MB。まあ音声もないですし、こんなものでしょう。

ゲームシステムは極めてオーソドックスな選択肢分岐型ADV。
異常な難易度を誇った前作と違い、今回はごく一般的な難度に抑えられています(^^;
細かいことを言うと個人的にはADVというよりはテキスト表示領域が画面下半分しかないNOVという気がしないでもないですが、まあどうでもいいですね。

セーブ数は30個。まあこれは十分だと思います。
スキップは強制スキップのみ。
このソフトが使用している汎用システムNScripterには既読スキップも実装されていたはずなんですが…(^^;
さほど共通部分が長いわけではないのが救いですけど、やはりADVには既読スキップは必須の機能だと思います。

バックログはNScripter標準の仕様。
つまり「幾つか用意された特定ポイントまでは戻れる」というタイプですね。
使っていて特に不便は感じませんでした。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞とシーン回想。この辺は一通り揃っています。

このソフトでは、ねこねこソフトなどでも使われているNScripterを使っているのですが幾つか不満が。
一つは先述した既読スキップの問題ですが、もう一つ大きな問題が。
これは我が家の環境に問題があるのかもしれませんが、我が家では時折正常に終了できないことがありました(´Д`;
1度終了すると、もう1回起動しようとしても「同時に2つ起動できません」と注意書きが出てしまい、マシンそのものを再起動するまでゲームが再開出来なかったのですが……。
複雑なシステムでもなし、もうちょっと頑張って欲しかったところです。

絵とか
う〜ん、やっぱりちょっとクセがあるかなぁ。
そんな風に思うものの、公募で選ばれた時と比べれば格段の進歩を遂げていますし概ね問題なく受け入れられるレベルの原画になっていると思います。
一部イベントCG・立ち絵で目が人形みたいで怖いとか、首が長すぎなのは気になりますが(ぉ
塗りの方もまあなかなかで可もなく不可もなくな出来にはなっているかと。

枚数の方はCG鑑賞モードによれば82枚(パターン違い除く)
欲しいシーンには大体イベントCGが用意されていますし、とりあえずこんなものでしょう。
あ、最後に一言。
遙先生の胸は強調されすぎで不自然です(^^;

音楽とか ※音声はありません
BGMはCD-DAで収録、全25曲。うち1曲がボーカル曲です。
ゲームの雰囲気と同様、派手で目立つ曲こそありませんが、レベルそのものは安定して高めです。
ただ「雨」「雪のように白く」「追想」などは前作の曲のアレンジですし、他の曲でも幾つか「もしかしてちょっと意識したのかな?」的な曲(私の勘ぐりすぎかもしれませんが)が見受けられたのがやや残念でした(^^;
できたら全部オリジナルでまとめて欲しかったところです。

恒例のお気に入りはボーカル曲「夢幻譜」に「触れられぬ心」「夕影」「読みかけの本」辺りでしょうか。
「夢幻譜」は綾芽シナリオだけでなく全シナリオのEDやクライマックスで使ってもよかったのではないかと。
個人的にはかなりいい曲だと思います。


音声はついていませんが、この作品に関してはこれでいいと思います。
ことさら萌え系というわけでもありませんし、シリアスな場面で声が付くのが必ずしも
いいとは限りませんので。

シナリオとか
全体的にはよくできてるけど詰めが甘い。
この作品のシナリオを一言で表現するとこうなってしまう気がします(^^;

真面目な話、この作品のシナリオは非常によくできていると思います。
登場人物たちの心理描写は実に丁寧かつ巧みですし、ストーリー展開そのものも(前作を知っていると)読みやすくはありますが、それでも退屈させずに最後まで読ませるだけの力を持っています。
奇抜なギャグなどの飛び道具に頼らずきちんと楽しませてくれる学園物は最近では稀でしょう。
「青春学園物」というカテゴライズをすれば名作と呼ばれる前作より優れているとさえ感じます。

というわけで、序盤から終盤に至るまで地味ながら完成度はかなり高いです。
地味すぎて今一つ盛り上がりや萌えに欠けるのが難と言えば難ですが(^^;


ただ終盤に至って「永遠の世界」が関わってくると話が変わってきます。
「ONE2」というタイトルを付けている以上、この設定から逃れることはできないわけですが、
この世界の使い方がお世辞にも上手くいっているとは言えません。
先述した地味な語り口と説明の不足が災いして終盤に盛り上がりが感じられないのです(^^;

百歩譲って盛り上がりに欠ける点については目を瞑るとしても特異な設定の説明不足は問題かと思います。
奈穂シナリオで特に顕著ですが、何の予備知識もなしにプレイした人がいたとするならば
あの消失に至る過程を受け入れることは不可能に近いのではないでしょうか。
ヒロインの視点を入れるなり何なりしてもう少し深い描写をして欲しかったところです。

消えることそのものを食い止めるなど前作があればこその展開を見せるシナリオもあり、
それは評価できるのですが、全体的にヒロイン達が消える必要がないのでは?という感が強く
あえて全てのシナリオに永遠の世界という概念を絡めることもなかった気がします。

終盤の締めがやや滑っているので全体としての印象が悪くなってしまっているというか……。
ちょっと勿体無い気がしますね(^^;

総評
正直結構不安も大きかったのですが、まあ結果はそれなりに良かったです。
今度はこのスタッフによるオリジナルが見てみたいです。

まとめ。前作の枷に囚われすぎた佳作。
永遠の世界を使おうとして微妙に失敗してしまったことがこの作品の最大の弱点だと思います。
正直、この設定を無理に使わなければもっといい作品になったのでは?と思いますが、そうするとタイトルも変わってしまい、私が手に取った可能性も極めて低いわけで……う〜ん、世の中難しいもんですね(^^;
前作信者の私の厳しめの主観では70点ですが、若干修正加えて5点プラスとしておきます。

書いた時点での総プレイ時間 12時間(コンプ)
お気に入りのキャラ 香咲乃逢
お気に入りのセリフ 特になし

初版2002/05/15