Phantom of Inferno(PC)
メーカー Nitro+ 総合評価 90点(名作)
ジャンル ADV
発売日 2000/02/25
シナリオ 虚淵玄 最初はソフ倫通してませんでした。なぜ?
あと「月刊GUN」に出すエロゲ広告の効果
の有無は未だに不明です。
だって、ここ以外にそんなメーカーないし(^^;
キャラクターデザイン 矢野口君
サウンド 有限会社クワイヤ

※以下の評価は第1期修正ファイルに基づいています

個人的エピソード
某レビューサイトでの評判を聞いて購入。
大量のソフトが出た発売日の25日には当然ノーチェックでした。

内容
暗黒街で相次いで発生したマフィア幹部暗殺事件。
その影で囁かれる謎の組織“インフェルノ”と、
組織最高の暗殺者である“ファントム”の噂…。

一人旅でアメリカを訪れた主人公の少年は、ある事件で偶然にもファントムに遭遇。
その正体は自分と歳が変わらない少女だった!?
それまでの記憶を消され、ファントムのもとで数々の暗殺術を学ぶうちに、いつしか
主人公は組織最高の暗殺者にまで成長していく。
陰謀が渦巻く、凶暴で無法な世界に芽生える純愛の行方は何処へ…。
(パッケージ裏より)
#メーカーによると「美少女ゲーム初の本格ハードボイルド純愛物語」とのこと

システムとか
システムは悪名高きMacromedia Directorを使用しています。
というわけで重いはずです。
我が家の環境ではマシンパワーとフルインストール(ファイルをHDDに移転)で強引にねじ伏せましたが、
それでもCG鑑賞モードでのサムネイル作成には若干の時間を要しました。

ただ同じシステムを使用している中ではこれでも軽い方だと思います。
Directorで作ったソフトというのはもっと重いのが普通なので。

ゲーム本編は画面構成上ADVに分類しましたが、内容としてはむしろノベルに近いでしょう。
視点の変化なども時折生じるので。それ以外はとくに説明することはないですね。
ごく普通に選択肢で分岐します。

セーブ数は28個。
十分な数ですがタイムスタンプが壊れることがあるとの話もありますのでくれぐれもご注意を。
ちなみに我が家ではそのような被害はありませんでした。

鑑賞系はCG鑑賞と武器鑑賞。武器鑑賞モードがあるのが独特なところです。
武器鑑賞モードではその銃に関する薀蓄をゲーム中のキャラが語ってくれるのですが、
私は銃器方面の知識が全くないのでよくわかりませんでした。雰囲気は味わえましたが。

絵とか
かなりクセのある原画さんだと思います。

正直、話が面白いと聞かなければ生涯買うことはなかっただろうと思っていますし。
まあやってる間に慣れてきて終盤になるとアインや美緒が可愛く思えるようになりました^^;

終盤の戦いのシーンなどはこういう絵柄だったからこその迫力なのかも、
とまで思うように意識が変わっていったのは絵の魔術なのかシナリオの魔術なのか。
塗りやCGの出来の方はまあ水準といったところです。

さて、このゲームの売りの一つが3Dでモデリングされた銃器や車なんですが、
これは非常に上手くいっています。
大体、この手の2Dと3Dの融合を行おうとすると3Dの絵だけが浮いてしまうのが常ですが
うまく合成してあって興醒めさせません。
特に銃やキャルのバイクなんかは3Dだったからこそ!と言える存在感が出ています。
仕事的な面を考えると3DCGを用意した方がスタッフへの負担は圧倒的に多いんじゃないかと思いますが
これも拘りの一環なんでしょう。
ある意味、こだわりだけで作っているようなソフトですから(^^;

絵の総論としてはとりあえず水準くらいでしょうか。試みは好きです。

音楽とか ※音声はありません
BGMはSWAという形式で収録されています。
Winampやメディアプレーヤーで再生可能なところを見るとMP3形式、
もしくはWMAの一種かと思われますが私も詳しいことはよくわかりません^^;

群集のざわめきや海の音など音楽ではないものを除くと全部で曲は21曲。
その出来に関してはどのレビューサイトでも特に評価はされていないようですが、
私はなかなかのレベルなんじゃないかなと思いました。
まあ、これには私の「ピアノ曲が好き」という好みが多分に反映されていますが(ピアノ曲がかなり多いです)。

しかし、曲の出来映えよりもゲーム中での使い方でしょう。
音楽の使い方がかなり上手いです。
この点に関してはKEYやリーフにもそうそう引けは取らないんじゃないかとさえ思えます。
難点を挙げるとすればモノラル収録なことくらいでしょうか。
ゲーム全体がとても拘って作っているのだから音楽もステレオにするくらいの拘りは欲しかったです。

さて、効果音なんですがこのゲームはここへの拘りがもはや異常です。
30近くある銃の銃声が下手すると全部微妙に違うんじゃないでしょうか?
少なくともオートマティックとリボルバーに関しては全くそっち方面の知識がない私でも明らかな違いと、
本物らしい雰囲気を感じ取ることが出来ました。これだけでも銃器マニアなら大喜びかもしれません。
#いや、逆に「こんなんじゃない」とか激怒するかもですが(^^;

音声は付いていないのですが、シナリオの没入度がかなり高いので「音声があれば…」と思うことしきりでした。
このメーカーにもっとお金ができたら是非音声付きで出してほしいですね。
まあ、脳内音源を使ってプレイしてたからあまり問題はなかったんですが。
ちなみにアインはずっと林原めぐみ@綾波で再生してました(核爆)

シナリオとか
このゲームの肝、シナリオです。
もう私がガタガタ言うよりもやった方が早いです。やりましょう。
体験版をやればすぐに魅力に気付くはず。

とこれではレビューにならないので手短に(ちょっとネタバレ)。
シナリオは全3章構成。
第1章は主人公が暗殺者ツヴァイとなるまでが中心になっています。
記憶を消されたがゆえの苦悩、暗殺者になることへの躊躇いなど非常に上手く描けていると思います。
プレイしていてどんどんと引きこまれて行きました。
1番面白いという説もありますし、積極的に否定はしません(ぉぃ

第2章は1年後、主人公が実力と成り行きからアインを倒してファントムとなった後の話です。
インフェルノ内部でのどす黒い抗争・キャルとの出会い・アインとの再会など第3章への伏線としての役割が強いです。
ゲーム中で中だるみがあるとすればこの章ですが、
それでも水準のはるか上を保っているあたりライターの力量が窺えます。

第3章は2章の2年後インフェルノの追跡を逃れ、アインと2人で日本に逃げてからの物語です。
日本という平和な国での学園生活とインフェルノという闇の世界。
この2つの日常と非日常のギャップを上手く描いているのはさすがです。
しかし、それより何よりこの章の見所は終章を飾るにふさわしいヒロイン達との愛の行方、そしてバトルです。
アインとドライの戦いやツァーレンシュヴェスタン達との戦いなど見ていてまさに「血沸き肉踊る」といった感じでした。
こんなに戦闘シーンで盛りあがったのは名作「アトラク=ナクア」の終章以来かもしれません。

さて、ネタバレでない感想も少し。「ハードボイルド純愛物語」とのことでしたが、まさに純愛です。
誰か1人を選ぶためには他の人間を切り捨ててでも選んで前に進まなくてはならない、
そんなシナリオ、そんな純粋すぎる純愛ばかりです。
美少女ゲーム史上初かどうかはさておいて「ハードボイルド純愛物語」とはまさに言い得て妙でした。

本当に蛇足でアレですがアイン(エレン)とのHシーンだけは導入が突然でちょっと
いただけなかったかなぁと。
あれならキャルとのHシーンみたいにしても良かったのでは?(やらないとわからない呟き)

でも、本当に面白かったです。2000年では間違いなく最高レベルのシナリオでした。

総評
エロゲを絵だけで避けてはいけません。ずっと前に教わったことを再認識。
そんなソフトでした。お奨めです。トップクラスの推奨度。

とりあえず面白いシナリオが読みたい人ならまず満足できるのではないでしょうか。
ハードボイルド・サスペンス系の話が大丈夫(好き、のレベルまで行かなくても可)ならやって損はないと思います。
あんまり本数出てないらしいので是非買ってみて下さい。
とりあえず私はこのライターさんは今後とも追いかけていく方向で検討中。
95点にするか迷いましたが処理が重めなのと絵柄がわりと人を選ぶので90点です。

書いた時点での総プレイ時間 約12時間半(コンプ)
お気に入りのキャラ アイン(エレン) でも他(脇役含む)も好き(ぉぃ
お気に入りのセリフ 「それで慰めになるなら、構わないわ。夢だと思っておきなさい。
 …でも、長い夢になるわよ」
「この世界が無限の地獄じゃないとするならば、それはあなたがいるからよ」
「恋、してたのね私…。あなたや美緒と同じように…」
「解らないはずなんてない。一度でも彼のこと想ったことあるなら」
「決着をつけようぜ。誰が本当のファントムか…」
「帰ってくるよね。約束……だよね?」
「私、撃っちゃった…。
 これからあなた抜きでどうしていいのか全然わからないのに」
「統べ方はあんたに教わり、殺し方はアインに教わった。でも、一番肝心なことを教えてくれたのはあんたたちじゃない。裏切り方を教えてくれたのは、な」

初版2000/05/08 最終更新2001/03/05