Quartett!(Win)  ※ディスク2枚組
メーカー Littlewitch 総合評価 70点(佳作)
ジャンル ADV
発売日 2004/04/23
シナリオ 飯田和彦 「白詰草話」での斬新な表現手法が話題を呼んだLittlewitchの第2弾。
……それにしてもよくこれだけ佳作でちゃんとブランド維持できてるなぁ(ぉぃ
原画 大槍葦人
サウンド 細井聡司(hosplug)


個人的エピソード
FFDというエロゲのADVでは新しい表現方式に前作時から注目していたので購入。
システムの特性上、スラップスティックコメディというジャンルは適しているのではないか
と思ったのも手を出した理由の一つ。
まあ結論から言えば、その予想は裏切られなかったのでそれは良かったかなぁと。

内容
フィル・ユンハースは、祖父の営むヴァイオリン工房で働く音楽好きの青年。
基本や楽譜はそっちのけで、今日も心の赴くままにヴァイオリンを奏でる。

そんなフィルが世界でも有名な「マグノリア音楽院」に編入し、
更には3人の女の子達と共に「カルテット・コンクール」を目指すことになる。

かつて「神童」と呼ばれた『シャルロット・フランシア』。
いつも陽気で、言動はどこまでが本気なのかわからない『ユニ・アルジャーノ』。
物静かでミステリアスな『李淑花(リ・スウファ)』。
女の子達は可愛いけれど、いずれも個性派で曲者揃い。

コンクールまであと84日。
果たしてフィルは彼女達と打ち解け合って、最高の演奏を響かせることができるのか……!?
(マニュアルより)

システムとか
必要容量は約600MB。
最近のゲームの水準を考えると驚くほど低容量ですが、音声がないこととゲーム全体のボリュームを考えるとこんなラインが妥当でしょうか。
いずれにせよ無駄に嵩張るようなことがないのは個人的には好印象。

システムは前作同様FFD(Floating Frame Director)という独自システムを使用。
画面中にマンガのコマのような小さい絵を配することで、立ち絵の代わりとし
セリフをフキダシで表現する――端的に表現すると「デジタルコミック」(古い言葉ですが^^;)を
イメージしていただければ良いかと思います。
まあ、ここでそれを長々と説明しても仕方ないので詳細が知りたい方はメーカーの紹介(1,2)をどうぞ。


セーブ数はクイックセーブ20個+ノーマルセーブ60個。
基本的に難易度はあって無きが如しというレベルなので多すぎるくらいだと思います(ぉ
それこそほとんどの人はクイックセーブの枠だけで事足りるのではないでしょうか?
ちなみにFFDでの表示タイミングなどの問題があるためか、セーブは任意のタイミングで可能なのに対して、
ロードした場合には直近のロードポイントからの再開になる最近では珍しい仕様を採っています。
とはいえ、ロードポイントはこまめに用意されているので不便さを感じることはないでしょう。

スキップは既読のみ画面右隅のボタンを押すことで実行可能。
「強制スキップ」と銘打たれた機能は存在していませんが、オートモードの実行速度の方が最大32倍速まで上昇させることができますので、それで代替させることは可能です。
共通ルートが多いゲームなので、前作にはなかった既読スキップの実装はありがたい限り。
スピードもかなりのものなので、重宝しました(^^;

同様に前作では未実装だったバックログ機能も実装。
こちらはロードする以前も含めてどこまで読み返し可能で文句なし。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞とシーン回想を用意。
シーン回想でHシーン以外にOPと各キャラのクライマックスおよびEDを見られる、という点以外はごく標準的かと。

前作には実装されていなかった機能も搭載して、ますます死角のなくなった良質なシステムだと思います。
FFDというスタイルを取る上で欲しい機能はほぼ用意されているのではないでしょうか。
唯一惜しむらくは時々フキダシの配置の関係で誰のセリフかわかりにくい場面があったこと。
フォントの種類なり色を変えることができたなら、なお良かったなぁと。
#もっとも、これもログを見れば誰のセリフかわかるようになってはいるのですが。

絵とか
線が細すぎるくらい細い少女が特徴の原画さん。
個人的には好きですが、アバラが浮き出るのが標準といって過言ではないほどの細さは
人によっては多少好みは分かれるところかもしれません(ぉぃ

CGは鉛筆の線画の上に水彩で彩色したようなイメージの塗り。
ゲームの絵としては珍しいタイプの彩色ですが、原画にもゲーム全体の雰囲気にもマッチしていたと思います。
ただ絵素材が多いために仕方ないのかもしれませんが、少々ラフっぽい線が多い印象を受けたのも事実で個人的にはそこが少し残念ではありました。
もしかしたらゲームの雰囲気に合わせてわざと崩したのかも、ですけど(^^;


枚数の方は鑑賞モードによれば180枚(パターン違いおよびFFD用小コマ絵除く)
長いゲームでもありませんし、枚数としては十二分だと思います。
……あ〜でも、これだけは書いておきたいのですが局部のアップでCG1枚ってカウントはどうかと。
なんつーか一瞬オーサリングヘブンかと思いましたですよ?(マテ

音楽とか ※音声はありません
BGMはWAVで収録、全43曲。うち6曲が既存クラシック、4曲がボーカルとなっています。
音楽がテーマの作品だけあって、質はいずれも高いです。伊達や酔狂で本物のカルテットまで起用していないといったところでしょうか。
前作同様安心して聞ける出来で、サントラCDの早期発売が待たれるところ。
バイオリンベースの落ち着いた曲調の物が多いのが特徴で、ゲームに関係なく日常のBGMとしてもいい感じです。

お気に入りは「Magnolie」(ギター、ピアノアレンジ共に)、「春告げ草」「Cocktail-gehen」「言えない言葉」「das Lamm Gottes」「Set Piece」「咲き誇る季節」あたり……って多すぎだろ(´Д`;


この作品には音声は付いていませんが、個人的には音声は付けるべきだったと考えています。
キャラクターが個性的なのもその理由ですが、半ば必然的にセリフの掛け合いでの進行がほとんどになってしまうFFDというシステムと音声の親和性は元々高いと思いますので。
どうせコンシューマ移植の際には音声付けるんだから、今のうちに、ね?(ぉぃ

シナリオとか
音楽をテーマにしたジャンプ連載マンガ(謎)
一言で無理やりまとめるとこんな感じでしょうか。

そもそも短い話なので、なかなかシナリオについて語るにも骨が折れるのですが、そうも言っていられませんのでさっさと本題へ。
まず初めに「内容」の項を読んでいただいた上で、各自そこから思いつくストーリーを夢想してください。
恐らくはそれでこのゲームのストーリーとニアリーイコールです(マテ
と言いたくなってしまうくらいにお話としては超王道。

具体的にどれくらい王道かと言うとですね――
打ち解けるまでにちょっと時間はかかるものの、徐々にメンバーとの信頼関係を深めていって、
その過程でヒロイン達の持っていた悩みに触れたりして、さらには強力かつ嫌な感じのライバルも
出てきて
……とまあこんな話だったりするわけで、使っているものこそ楽器で、競い合う舞台こそカルテットコンクールですが、実質的には「努力・友情・勝利!」な少年マンガ王道話というのが1番近いと思います。
「少年マンガ的」であるが故にある弱点も存在するのですが……それは後述。


シナリオは基本的に終盤までコメディで、最後の方だけシリアスになるという展開で進んでいくわけですが、どちらも及第点以上には達していたかと思います。
特にコメディ部分についてはタイミングを生かした演出の妙もあって、結構レベルが高いのではないかと。
別に面白いセリフを言うわけでもなく、主人公におかしな行動をとらせるわけでもなく、それでいてきっちりプレイヤーを笑わせてくれるのは立派です。
またシリアス部分についても、話的には先述したように王道も王道なので取り立てて見るべき要素は無いのですが、オート推奨のこのシステムで眠くならないというだけでも及第点と言って良いのではないかと(ぉぃ
実際プレイヤーはほぼ画面を見ているだけなので、本来かなり退屈なはずなのですが、それ相応の緊張感を保たせたまま飽きさせずに最後まで引っ張ってくれました。
特筆すべき良さは無いにしても、全編通じて安心して見ることができました。


さて、ここからが難点になるわけですが。
このゲームのシナリオにおける最大の難点はとにかく描写が薄いということになるでしょう。
心理描写・日常描写・情景描写……ほぼあらゆる点でよく言えばアッサリ、悪く言えば描写が薄いです。
この結果として全体のボリュームもかなり小さくなってしまっているのですが、個人的には一概に悪いというつもりはありません。
ボリュームについては短いながらも上手くまとまっているので問題ないと思います。
日常描写を省いてイベントのパッチワーク的なシナリオにしていることについても、ダラダラとしたつまらない日常を徒に描くよりはよほどいいでしょう。
ただ心理描写と情景描写の薄さ――特に前者――は難点かなぁと。
ヒロインがどうしてフィルに惹かれたのかが全然見えてこないのです(´Д`;

元々FFDはいわゆる地の文がない関係上、そうした方面の描写には弱くなるのはある程度やむを得ないとは思いますが……それでも紙媒体でのコミックにはその辺に優れた作品も多々あるわけで。
少年マンガ大いに結構ですが、少女マンガ的演出も取り入れて欲しかったところです(^^;

総評
読めばわかるように評価以上に実は気に入ってたりします。
最近はこれくらいの手ごろなゲームがありがたいです(ぉ

まとめ。山椒は小粒でピリッと辛い、そんなゲーム。
この表現はちょっと甘すぎるかな? とも思いますが実際小粒な割には丁寧に作られていて、
十分に楽しめる作品じゃないかと。
ただ購入金額をプレイ時間で割って時間単価を計算するようなマネは避けた方がいいかもです(笑)

書いた時点での総プレイ時間 6時間45分(コンプ)
お気に入りのキャラ メイ・アルジャーノ
お気に入りのセリフ 「うるせえっ! いいか? わたしはメイ・アルジャーノだぜ?
この程度のチャンスこの先幾らでも転がってるわ!」

初版2004/05/15