リアライズ(Win)  ※DVD-ROM
メーカー PLAYM 総合評価 70点(佳作)
ジャンル ADV
発売日 2004/04/23
シナリオ 高橋龍也 言わずと知れた往年の名作を送り出したコンビが自ら立ち上げたブランドでの第一弾。注目度も期待度も新規参入ブランドとしては桁違いの高さだった。
原画 水無月徹
サウンド Manack・M.S・折戸伸治・OdiakeS・HIKO


個人的エピソード
「雫」で衝撃を受けました。「痕」でゲームをやって初めて泣きました。
「To Heart」では芹香さんに激しく萌えました。
買う理由なんてそれだけで十分です。そうじゃないですか?

内容
ある日、松浦亮が目にした奇妙な物体。
それは「エゴ」と呼ばれる人の心が具現化した代物だった。
その日を境に彼の日常は急激に変化し、
エゴとその力を持つ者達の運命の奔流に飲み込まれていく――。

エゴの具象化。
心と心を結び、時には他人を操作することもできる不条理な力。
その万能な支配力を手に入れた彼らは、やがて、
力そのものに翻弄されていく……。

たとえ、それが間違った力の使い方だとしても……。
誰かを傷つける結果になろうとも……。守らなくてはならない。

未知なる能力を手に入れた少年少女たちの群像劇
(一部パッケージ裏より)

システムとか
必要容量は10MB〜970MB。
音声が無いにしてはフルインストール時の容量が大きいような気もしますが、
このうち半分以上はBGMおよびOP・EDムービーのデータが占めています(^^;
ちょっとそのバランスはどうなのか…という気はしないでもないですが、
その辺りの事情を鑑みれば容量としては妥当なところでしょうか。

基本的なシステムは選択肢分岐型のADV。
ただし難易度はかなり高いです。
このゲームでは選択肢ごとに「感情」「理論」「人格」という3つの隠しパラメータが割り振られていて、ある選択肢を選ぶと対応したパラメータが上昇するようになっているのですが、特定のパラメータにある程度特化しないとトゥルーエンドには行かない仕様になっているのです。
(もちろん普通の一般的な意味での選択肢分岐もあるようですが)
つまり主人公の人格(エゴ)を貫かないといけない構造になっているわけですね(^^;

その作り自体は非常に上手いと思うのですが、いかんせん選択肢分岐と隠しパラメータによる制御を盛り込んだ結果、難易度としてはかなりキツめ。
大人しく攻略サイトを頼りましょう(ぉ


セーブ数は20個。
先述したように難易度が高めなので、もう少しあってもいいような気もしますが、
取り立てて不足感は感じませんでした。

スキップは既読のみ対応。ただしCtrl押下で強制スキップをかけることも可能です。
このスキップ、速度そのものは快適なのですが、右クリックでメニューを呼び出さないと実行不可能であること・選択肢まで辿りつくとスキップOFFになってしまうことから使い勝手は悪いです(´Д`;
キーボードオペレーションで1タッチスキップさせるか、せめて選択肢を過ぎてもスキップを止めない仕様にしていただきたかったところ。

バックログは99ページまで読み返し可能。
この辺りはビジュアルアーツ標準。必要十分な量だと思います。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞のほか、おまけコンテンツとして「Special」とカスタマーレビュー機能を実装。
18禁ゲームとしては極めて珍しいことにシーン回想がありません。
……まあHシーンをウリにするようなゲームでもないので、これはこれで問題ないのかも(ぉ
「Special」は作品世界に存在するチャットやBBSのログという形で物語の裏側を少しだけ垣間見せてくれるおまけコーナーで、シナリオそのものの進捗に並行して追加されていくというもの。
ログ形式なので、多分に行間を読まないといけないのが難点ですが、こういった物語の掘り下げ方もなかなか面白いのではないかと。
レビュー機能は読んで字の如く、オフィシャルにレビューを投稿できるというもの。
全EDを見ると投稿可能になるのですが、できればトゥルーED後には可能にして欲しかったです…(´Д`;
いや、レビュー機能をオープンにするために10回近くやり直したので(爆)

システム全体の統括としては「機能は揃っているけどインターフェイス面に難アリ」といったところ。
奇をてらわないADVだからこそ、そういうところにまで気を配って欲しかったです。

絵とか
すっかりクセが強くなっちゃって……(;´д⊂)
PS版「To Heart」の頃の水無月氏の絵が1番好きだった私としては、最初に雑誌で見た時
思わずそう呟いてしまったりしまわなかったり(ぉ
そういった塩梅で絵柄そのもの(特に立ち絵)は若干クセが強いと言わざるを得ないと思います。
少なくとも昨今の萌え絵とは全く違うベクトルに向いているのは間違いないでしょう。

ですが、慣れないほどクセが強いわけでもありませんし、慣れる以前でもイベントCGなどは特に違和感めいたものは感じませんでした。
また髪の色や奇抜な髪型などのアイテムに頼らずとも、男女問わずきっちりとキャラクターの個性を感じさせるデザインがなされていることは十分賞賛に値するかと。
エロゲは男描ける人、少ないですからね〜(^^;

ちなみにここまでは原画についての言及でしたが、塗りや背景は全くの問題なし。
背景は草薙が担当でしたし、塗りもなかなかの高レベルだったと思います。
特にオレンジの使い方が印象的でした。


枚数の方は鑑賞モードによれば61枚(パターン違い除く)。
立ち絵も各キャラ1枚〜数枚しかないこともあり、絵の枚数自体は総じて少ないように思われます。
ただしフェイスウィンドウのパターンがなかなか多彩なことや、そもそもイベントCGが多数必要な類のストーリーではなかったことも相まって、プレイ中には数字ほどの少なさを感じなかったことも付記しておきます。

音楽とか ※音声はありません
BGMはWAV形式で収録、全23曲。ボーカル曲はありません。
多少音楽スタッフにも気を回している方ならすぐにお気づきかと思いますが、
本作のBGM担当はいずれも実力者揃い。
私などはこのうち誰か1人がBGMを担当しているというだけでも十分購入検討に値する面々です。
というわけで質はいずれもかなり高め。

作品BGMとして場面に合っていたのはもちろんのこと、ゲーム同様に疾走感のある
楽曲の数々は純粋にサウンドトラックとしても色々な場面で使えそうです。
コミケと期間限定の通販でしかサントラが手に入らない方式だったのが惜しまれます。

恒例のお気に入りは「Realization」「Emotion」「Nevertheless」「Twilight of the urban」「Beyond the mind」「眠らない街へ」「精神離脱」「A Shabby Crow」といった辺り。


音声はなし。ボリュームを考えると付けても良かったように思いますが、
特に付いていなくてわかりにくいというような場面もありませんでしたので、これはこれでありかと。

シナリオとか
高橋・水無月両先生の次回作にご期待くださいm(_ _)m
ジャンプのマンガじゃないですけど、そういう一言が1番しっくり来るシナリオでした。

このゲームは根本的にはトゥルーエンドまでの一本道の作品です。
もちろん途中の選択によっては女性キャラのHシーンがあったり、ノーマルEDがあったりはしますが、それらは結局のところ派生物に過ぎません。
そういう作りだという事のみ念頭に置いていただいて以下感想。


プレイしてまず最初に驚かされたのはその文章力の高さでした。
一切のムダというものが排除されたかのような文章は非常にテンポが良く、読みやすいことこの上なし。
18禁ゲーム業界広しと言えども、このレベルの文章が書ける人はほとんどいないのではないでしょうか?
また文体は淡々としているものの、次々に畳み掛けてくるスピーディな展開ゆえに全く飽きさせられなかったのにも驚きました。
序盤〜中盤のエゴバトルから終盤一連の黒幕と対峙するところまでの引きは見事の一言。

ただし、先ほど「読みやすい」と書きましたが、この作品の特徴である三人称視点+頻繁な視点変更については人によっては頻度が高すぎて鬱陶しく感じるかもしれません。
私はすぐに慣れましたし、視点変更の理由に気付いて唸らされたりしましたが、一応そういう意見もあるだろうという推測は記しておくことにします。

その他、妙な特徴づけに頼っていないにも関わらず、サブキャラ達が十分な個性と魅力を持っているのも密かに大したものではないかと。
本来そうあって然るべきなんですけどね(^^;
いずれにせよテキストそのものやシナリオの見せ方は総じて高レベルです。


ただ、惜しむらくは全てのシナリオが説明不足なんですよね(´Д`;
派生エンドとでも言うべきノーマルエンドについてはお話を途中で打ち切ってるような終わり方ばかりで、それこそ「次回作にご期待ください」と出てきそうなラストばかり。
百歩譲って派生エンドだから話が途中で終わっている件については是としても良いでしょう。
じゃあ、トゥルーエンドはどうかと言いますと――これも説明不足なのです。
さすがに話自体は終わっているのですが、今度は色々考察でも挟まないと黒幕の最期など様々な謎が判らないまま終わってしまうという……消化不良もいいところです。

この「打ち切っている」感は他にも言えて、例えば邦弘のようなサブキャラの話はもう少し取り上げても良かったように思います。
せっかく魅力あるサブキャラを大勢用意しているのに、事件の中心から離れるにつれてキャラクターごとフェードアウトというのはちょっと寂しいです(^^;


雑誌のインタビューなどを見る限り、色々チャレンジャブルなことをやろうとしていたようですし、
実際それは伝わってくるのですが、ユーザーに与える手がかりが少ないことや
話が盛り上がる前に終わらせてしまうのは一般的には手抜き・失敗にしか見なされません。
恐らくそういう反応も予想した上でわざとやった結果なのでしょうが……。
文章力やシナリオそのものの引きの手法は見事なだけに余計にもったいなく感じます。
素直に萌えなり熱いバトルなりを取り入れて直球のエンターテインメントを作っていれば、
あるいはもっと丁寧に説明をしてやるだけでも格段に世評は上がったのでは?

様々な意味で「次回作に期待します」という言葉がこれほど相応しいブランド・ソフトは無いのではないかと(ぉ

総評
シナリオ感想でも書いてますけど本当にこれはもったいないソフトです。
大人しく「商業的に受けそうなソフト」を作ったら、どれだけ面白くなるんだろ?

まとめ。作り手の「エゴ」が色濃く出すぎてしまった作品。
私は長所と短所を比較した時に、最終的に難点や不満点は多々ありつつも最後まで話に引き込んでくれたことを評価してこの点数ですが、万人がこの評価になるとは思えません。
極端に派手さを抑えたシナリオといい、消化不良のシナリオ・活躍し切れていないサブキャラなど、文字通り作り手のエゴが前面に出すぎたきらいが。
世界観などは非常に魅力的なので、リメイク版や同じ世界観の新作は是非見てみたいです。

書いた時点での総プレイ時間 13時間40分(コンプ)
お気に入りのキャラ 宮路沙耶・伏見修二
お気に入りのセリフ 「もしも。どうしても、戦うって言うんなら。
あたしを呼んで。また、一緒に戦ってあげるから」

初版2004/06/20