Sultan〜The Lovesong is Forever〜(Win)
メーカー light 総合評価 65点(及第点〜佳作)
ジャンル ほのぼの宮廷恋愛ADV
発売日 2002/07/26
シナリオ NYAON プレイヤーが自分で話を作れるなど独自性が売りのシステムが特徴のlight第6弾。
主人公の弟ロッタくんの女の子らしさが話題に?(ぉぃ
原画 くすくす
サウンド かしわ丸


個人的エピソード
原画のくすくすさんの絵が好きなんで。ええ、以前「Choir」も買いましたとも。
あとはロッタくんが実は女の子とかそういうダメまった期待も抱いて手を出しました(^^;

内容
かつて、大きな大きな国がありました。
砂漠の中に、陽炎のようにゆらめく都がありました。

そんな王国の片隅に、一組の兄弟が暮らしています。
両親は死んでしまったので、近所の幼なじみの家に居候をしています。
お兄さんの若者と、幼なじみの少女とは、いわゆる恋人関係――
ささやかな幸せが、そこには確かにありました……

――――ところがある日、彼らの前に、兵隊達の一団が現れます。
彼らを率いているのは、この国の――ルキア王国の宰相閣下。
兄弟の姿を見つけると、宰相閣下は丁寧なお辞儀をしながら言いました。

「殿下、お迎えに上がりました」

その一言が、全ての始まりでした……
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量はおよそ600MB。インストール後は起動時もCD不要の親切仕様。

さて、ゲームの方は移動先選択+普通の選択肢分岐のアドベンチャー。
移動先に誰がいるかは見られるようになっているので難易度的には簡単
……と言いたいところなのですが、メインヒロイン・セラクルカの難易度だけが妙に高いです。
途中までシーリーンで進めなきゃいけないなんてシナリオ知らなきゃ気付きません(^^;
というわけで総合的に見ると難易度的には標準程度といったところでしょうか。

セーブ数は30個。十分な数が用意されていると思います。
セーブ時に出るアイコンで誰の好感度が1番高いのかもわかるので便利と言えば便利です。
デフォルトで好感度が1番高いのがロッタくんというのは意味深ですが(笑)

スキップは基本的に既読のみ。ただしShift + Ctrl押下で強制スキップも可能。
速度的にはかなり快適。
我が家の環境で修正前だと時折既読フラグが認識されないバグがありましたが、現在では修正されている模様。
難としてはウィンドウを非アクティブ状態になるとスキップが停止すること。
この辺はもうちょっと融通を利かせて欲しかったです。

バックログは64ページ分読み返し可能。ただし音声再生は不可。
まあ読み返し量はもう少し多くてもいい気がしますが、特に不満はありません。

鑑賞系はBGM・CG鑑賞とシーン回想と一通り実装。


基本的に必要な物は揃っているし大きなバグもないので、スキップと少し動作が重い点以外はOKかと。
正直「White Angel」のイメージが根強い私としては修正ファイルを当てなくてもきちんと動作するだけで驚きです(ぉぃ
lightも日々成長してるんだなぁ…。

絵とか
原画さんは2002年現在パソパラの表紙を担当してるので、そちらでご存知の方もいらっしゃるかも。
柔らかいラインが特徴的な絵描きさんです。
個人的には今作の絵はちょっと輪郭が丸っこくなりすぎているように思いますが、
でもまあ割と世間受けはいい絵ではないでしょうか。

塗りの方も原画に合わせた淡い柔らかな色使いでいい感じ。
原画が気に入った方ならCGの出来に不満を持つようなことはないかと思われます。


枚数の方はCGモードによれば70枚(パターン違い除く)
初回に約10時間を要するゲームのボリュームから考えると若干少ない感が否めません(´Д`;
まあイベントそのものが少なめなので増やしにくいのはわからないでもないのですが……。
それでももうちょっと増やして欲しかったところです。

音楽・音声とか
BGMはOgg Vorbisで収録、全26曲。うち3曲がボーカルです。
ゲームの雰囲気に合わせた穏やかな曲調の物が多いのが特徴で、
質も安定して高いレベルでまとまっています。

お気に入りは「砂漠の涼風」「虚無な瞳に空虚な心」「思い出のオルゴール」あたり。
それとは別にボーカル曲はどれも素晴らしい出来だったと思います。


音声は一部(ごく普通の兵士とか)を除いてフルボイス。
演じているのはいわゆるイエローテイル系の面々が多かったですが、声質的にも演技的にも文句なく合格。
……男性キャラのセリムは正直ダメダメですが、まあ所詮男性キャラなんで気にしないことにします(ぉ

シナリオとか
「利家とまつ」+へっぽこ主人公の成長物語(謎
このゲームをいつものように端的に表現すると恐らくはこんな感じになるんだと思います。

さて、この作品も恋愛ADVのご多分に漏れず共通シナリオと個別シナリオに分かれるわけですが、
その2者でちょうどシナリオの性質も大きく異なっているので以下ではそのように分けて書いていきます。
まずは共通シナリオについて。

共通シナリオはまさに「ほのぼの宮廷恋愛ADV」という感じです。
国家の裏に当然あるべく権謀術数など一欠けらもなく、突然王太子になってしまった主人公とそれを取り巻く人々のほのぼのして、どこか楽しい日々が淡々と綴られます。
さながらその様はルキア王家という一つの家族を舞台にしたホームドラマ・ホームコメディの類を見ているようです。

宮廷が舞台ということで歴史シミュレーション的なリアリティを期待していた人は
「利家とまつ」ばりのリアリティの欠如に怒るかもしれませんが、
特にそういう物を求めないのであればキャラ立てなどがしっかりしているので十分楽しめると思います。
その独特の温かいやり取りは見ていて微笑ましかったです。

ですが誉めるところばかりではありません。
あまりにも「日常」を描きすぎて盛り上がりに欠けることと、これといったイベントがないためにシーリーン・セラクルカ以外のシナリオで主人公がヒロインに惹かれる動機付けが弱くなっているのは問題かと。
特に後者は個別シナリオで主人公がヘタレる理由付けの弱さに直で結びついているのが痛いです。
まあそれでも共通シナリオ全体としてはいい雰囲気だとは思いますが……(^^;


一方の個別シナリオは先述したように主人公の成長が軸なんですが……個人的にはあまり好きではありません(ぉ
前半には見られなかった王宮を取り巻く陰謀などを見せてプレイヤーの興味を引く手法は
王道ながらもいいと思いました。なんですけどEDでほぼ必ず主人公がヘタレるのが……(´Д`;
しかも結構どうでもいい(ようにプレイヤーには見える)ことで悩むので困りもの。

ヘタレて独善的に振舞って周りの人を傷つけて、最終的に主人公とは対照的に強いヒロインの後押しを受ける主人公なんか願い下げです。
他の女の子に「行ってください」って言われるまで好きな女の子の所に行くこともできない主人公って何なんだか。
思いっきり主観で申し訳ないですが、主人公のヘタレぶりには本気でプレイ意欲減退しました(^^;

そういった面が少ないシナリオや、あるいはそういった面を考慮に入れなければ
ある程度話として上手くまとまっているとは思います。
フェレースやシーリーンの話に関しては終盤綺麗にまとめたな、と素直に思いますし。
無論これらにしても構成や演出に改善の余地はあるでしょうが…。
一人で書いているはずなのにどうしてこうも出来に差があるのか不思議です(苦笑)

総評
終わらせた直後はもう少しいい評価になるはずだったんですが……。
まあ時間が経つってのはそんなものですよね。

まとめ。頑張りは認めるけど微妙。
光っている部分はあるんだけれど、全体としてはダメなところも目立つ。そんな感じです。
点数は悩みましたが前半のほのぼのな空気の良さと「White Angel」のイメージを払拭したのを評価してこの点。
余談ながら、お稚児趣味の方ならロッタシナリオは一見の価値ありかと(笑)

書いた時点での総プレイ時間 約24時間(コンプ)
お気に入りのキャラ シーリーン・セラクルカ
お気に入りのセリフ 「泣いて終わりに出来るのは、普通くらいに大切な人」
「あたしだって……、一人で寝るの…寂しいのに……」

初版2002/09/07