誰彼〜たそがれ〜(PC) ※ディスク2枚組
メーカー リーフ 総合評価 50点(凡作)
ジャンル アクティブドラマタイズノベル
発売日 2001/02/09
シナリオ 竹林明秀 久々の「雫」「痕」のダーク路線復活かと話題を呼んだ
リーフの新作。
Eログ独占のデモ告知広告や青紫氏シナリオ説など
別方面でもかなり話題に(ぉぃ
原画 カワタヒサシ
サウンド 松岡純也・石川真也・米村高広・中上和英


個人的エピソード
だってリーフだもん。そりゃデフォ買いですわ。
危険信号は受信していたものの、私のエロゲ人生は常にリーフと共にあったわけですし…。

内容
帝国陸軍特殊歩兵部隊所属の坂神蝉丸はある日、目覚めると地下室で石造りの棺に閉じこめられていた。
その上、身体の自由が利かない。
なぜそうなってしまったのか、彼にはまったく状況がつかめない。
やがて仲間が棺のふたを開けるのだが、様子がおかしい。
突然蝉丸に襲いかかってきたのだ。蝉丸は動くことができない!
偶然地下室に迷い込んだ月代と夕霧がきっかけで窮地を脱した蝉丸は、二人から驚くべき事実を知る。
現在は蝉丸が生きていた昭和19年から50年以上の歳月が流れているという事実を。
そして現れる、自分と同姓同名の老人。
その老人は自分自身が変わり果てた姿なのか。
時間を超えてしまった謎を解くべく、蝉丸は調査を開始する。
だが彼に襲いかかる、かつての僚友たち。その目的とはなにか。
(マニュアルより)

システムとか
必要容量は460MB。OPムービーを高解像度版にすると+120MBです。
最近のHDD容量を考えると大した負担じゃないんで高解像度版にしちゃいましょう。
聞きなれないジャンル名ですが、基本的にはウィンドウ表示型のノベル(個人的にはADVと呼びたいが)です。
それプラスACTIVE DRAMATIZEパートと名づけられたチップアニメと字幕による寸劇部分とで構成されています。
このチップアニメの果たした役割については後述。

セーブ数は10個。
クリアすることによって選択肢が増えるせいもあって分岐条件が多少わかりにくいですが、
プレイ時間が短いので何とかなる…かなぁ。多分なるでしょう(ぉ
スキップは強制スキップのみ。メッセージウィンドウ上のボタンないしはShiftキーで実行。速さはなかなか。
チップアニメの動きも高速になるのが微妙に笑えます。
バックログは約255ページ可能。十分な量です。読み返すかどうかは別問題ですが(^^;

鑑賞系はクリア回数に応じて追加されていく仕組み。
1回クリアでCG鑑賞、2回目でシーン回想、3回目でOPムービー鑑賞、4回目でBGM鑑賞、
そして全EDクリアでおまけシナリオ「麗子の部屋」が追加されます。
タイトル画面上でマウスカーソルをうろうろさせないと見つからないかもしれませんけど。
(なぜかカーソルを近づけないと表示されないようになっているのです)

必要な物は網羅されていますし、我が家では重くもなかったので満足。
何よりバグがなかったことに驚かされました。初回特典じゃないの?(違

絵とか
原画はカワタヒサシさん。河田優、ら〜・YOU名義の方がわかりやすいですが(^^;
「WHITE ALBUM」なんかで有名ですね。
塗りは独特。アニメ調ではなく手描き絵画調とでも言いましょうか。
で、質の方は塗り・原画ともにハイクオリティ。この辺はさすがです。
また水中にいる時などの視覚効果も見事でした。文句なし。
#背景の質も高いのですが、なぜか外注。…人手不足?

枚数の方は76枚(パターン違い除く)。プレイ時間から考えれば十分。
あとリーフにしてはHシーンCG比率が高かったです。実に約半数。
どうした、リーフ!?(笑)

さて本作の売り、チップアニメですが…私はあまり評価していません。
日常シーンで使う分にはあまり違和感を感じませんが、
こういった部分はテキストでの表現でも事足りるような気がしますし、
戦闘シーンではこれを使うことで却ってスピード感・緊迫感という物が弱まってしまったような気がします。
なんとなくコミカルな感じになってしまうんですよね(^^;
テキストオンリーの戦闘だった「痕」とかの方が迫力あると思うんですが。
Altキーでの一時停止、Shiftキーでの高速化以外の全ての操作を受け付けないのも不便ですし……。
正直余計なことを書かせないことによって筆力不足をごまかす、
というような効果しかないんじゃないかと思っちゃいました。
チップキャラが歩くのと足音を連動させていたりして技術的に頑張っているのはよ〜くわかるんですけど、
微妙に空回りしている気がします。
ヴァルプロへの道は険しいです(ぉ

音楽とか ※音声はありません
BGMはCD-DAで収録、全23曲。OPとEDはメジャーデビューしている(…んですよね?)
Kayaというバンドが歌うボーカル曲です。
この点もさすがと言うべきかかなりの高水準でまとまっています。
今まで裏方的な仕事が多かった松岡氏がメインになっているのが特徴でしょうか。
だからか今までのリーフサウンドとはちょっと毛色が違う曲調になってます。

個人的には米村さんや中上さんの曲が少ないのが残念。中上さんなんて1曲(泣)
あと下川氏はプロデューサーに専念なのか曲書いてません。
経営方針はともかく曲は好きなんでこれもちと残念かも。

お気に入りはOP「旅人」と「宵闇」「彼方」「だれ?かれ?」あたり。
「だれ?かれ?」は必聴です。作った人、天才だ(謎
効果音なんかもわりと細かい所にまでこだわっていて、伊達に大手じゃないねと思わせられました。
というわけで音周りは完全に満足。

シナリオとか
最初に言っておきます。今から書くのはただの愚痴です。毒です。
そういうのを読むと気分を害する人は読むのやめましょう。
では、行きます。

初めに竹林、もとい青紫さん。荷物をまとめて実家に帰りましょう(ぉ
なんというか誉めるところが見つかりません。何処を誉めろと?
個々のシーンを取り上げれば面白い部分もあるにはありますが、それらシーンの繋ぎ方が下手すぎます。
友人曰く「タメと引きが弱い」とのこと。まあ、一言で言うとその通りです。

序盤は用意された設定をどんどん明かすのでタメも何もなく、牽引力弱し。
(内容紹介の「謎の老人」の正体、開始15分で老人自身の口から語られます)
時間を超えた謎とか解こうとするシーンなんか最後までないですし。
また途中に出てくる敵の数々を、主人公の蝉丸はあらかじめ知っているので、
初登場時にいきなり正体などが蝉丸自身によって全て語られます。
初見であるプレイヤーとの情報格差が大きすぎますって(^^; プレイヤーの分身ではなく他人。
唐突に「何より不安なのは“あの男”も目覚めている可能性があるということだ」
とか言われても……プレイヤーにはどの男なのかサッパリなんですが。
(その時点で欠片も登場してないキャラのことだったりします<あの男)

そして中盤以降に張られる伏線は逆に作り投げ状態。明かされません。
他のシナリオで明かされるのかと思いきや、そうでもありません(滝汗
#最悪でもトゥルーエンドなら明かされると思ったのに

別に作中で全ての謎を明かせとは言いません。
シナリオによって違う黒幕や違う謎があるのもまあ良しとしましょう。
しかし、それらの違うルートで用意された伏線の大半を最後まで放置しておくのは勘弁してください。
素人が描いた設定オンリーのマンガじゃあるまいし。
そういうの、「1人よがり」って言いませんか?
シナリオさんの頭の中では全部繋がっているのかもしれませんけど…。
#まあ、そういうライターさんですし(^^;

終盤は終盤で展開が唐突に感じました。何というか、登場キャラクターだけで
どんどん話が盛り上がって自分は置いていかれてるみたいな、そんな感覚。
「お前は日本一の弟だ」とか「勝った方が護る」とか(やった人はわかるでしょう)
終盤のイベントでは軒並み蚊帳の外にいる自分を実感させられました。
リーフ作品では初めての経験でした。
これが新ジャンル“アクティブドラマタイズノベル”なんだね!(違

ついでに珍しくHシーンについて思うところがあるので少々。
なんでHシーンになると時々(必ずではない)三人称になるんでしょう。
それまでは蝉丸の一人称視点だったのに。
それに仙命樹の催淫作用によるものなのはわかってますが、
「フーッ!、フーッ!フーッ!」と言いながらHする描写はもはやギャグでしかありません(苦笑)

最後に、おまけシナリオ「麗子の部屋」について。
これはチップアニメを使った小ネタ集なんですが、寒すぎです。
最初の1つ2つは辛うじて笑えましたが、あとは…(沈黙)。
EDの曲「だれ?かれ?」が1番面白いという出来です。ある意味必見。
「カップラーメンがあれば日本は戦争に勝っていた」の1フレーズは
ライターさんの正体がわかって個人的には大受けでしたけどね(マテ

こういう諸々の問題に比べたら時々出る笑えるセリフなんて何でもないです。
おそらくそのカモフラージュ機能まで計算して書かれたシナリオなんじゃないかと。
……さすがにこれは皮肉が過ぎますかね?

総評
まあ、誉めどころを探せば見つかるのかもしれません。
ただ私には合わなかったし、長所が見当たらなかったということです。
「リーフ」という名前で出していなければ別の形もあったかもですが。

まとめ。メーカー名を確認したくなる1本
良質な絵・音楽、問題のないシステム、そして辛いシナリオと3拍子揃った作品(^^;
本当にこれがかつてノベルを極めたリーフの新作?というのが本音。
絵や音楽面とファンとしてリーフに酷い点はつけたくない、という想いゆえに50点。
シナリオだけ見てみればしっかり駄作さよなら、リーフ(号泣)

書いた時点での総プレイ時間 6時間35分(コンプ) #小粒で良かったとまで思ったのは久しぶり
お気に入りのキャラ (強いて挙げれば)桑嶋高子
お気に入りのセリフ
(失笑したセリフ)
「お前は日本一の弟だ」
「そういえば俺『俺の血は何者だ』なんて言わなかったよな」
「それは一種の精神疾患だ。治し方は俺が知っている。俺に任せろ」

初版2001/02/13