作中、紗夜らに不老不死をもたらしているのは変異性染色体(以下W2染色体と記述)中の遺伝子の働きによるものと解説されている。そして、梢だけは元に戻らないが、紗夜に関しては数百年の生の果てに普通の肉体に戻り、若菜は変異の途中に性行為を行った結果として不老不死化を免れるという話が展開されているが、このようなことが起こりうるのか考えてみよう。

まずW2染色体が不老不死性・および超回復能力をもたらすとしたら、それは「デジタル的な完全な遺伝子コピー能力」、「分裂回数の制限解除」、「圧倒的な細胞分裂速度」の3点に加えてさらに「不滅の遺伝子再生酵素の存在」ないしは「紫外線・放射線などの影響を受けないDNA」が必要だと考えられる。
それ以外、例えば通常の遺伝子のようにコピーする際に一定確率でエラーが生じるor遺伝子再生酵素の欠落した状態でのDNA破損などが生じる状態では数百年生きる間に確率的にほぼ間違いなく癌細胞が発生する。
その癌細胞も当然W2染色体を持っているわけで、おそらくは傷を一瞬で治すほどの分裂速度を全開にして増えるのではないかと思われる(癌細胞の特性上分裂系のリミッターは全解除されていると考えるべきである)。
1度その状況が成立した場合、W2癌細胞の下ではもはや生物とは呼べない癌細胞塊が存在するだけになるのではないか。
そうなることを免れている以上、最初に挙げた諸条件を満たしていると考えるのが自然であろう。
ここで重要になるのは「デジタル的な完全な遺伝子コピー能力」である。
エラーの生じないコピーがなされる限りにおいてW2染色体は永遠にW2染色体のままであり、決してXX染色体に戻ることはありえない。
そのような変異が起こる状態においては不老不死ではありえないからだ。
ヒロイン達の体質変化がどのようなものであろうと、この不老不死病は文字通り不治の病のはずなのであり、紗夜シナリオに見られたような回復というのはありえないというのが私の見解だ。
その意味では梢シナリオは、最後に梢が選んだ選択も含めて現実的と言えよう。
また若菜シナリオは、病気の原因はナンセンスではある(唾液で遺伝情報が取り込める体組織は存在しない。生殖細胞じゃあるまいし)が回復する理由としての破瓜及び膣内射精というのは十分にありえる要素と言えよう(ホルモンバランス変化などによる体質改善)
あくまでも、体質変化→遺伝情報変化という病状進行を仮定した場合の話だが。

以上が「Wing&Wind」に関する理論考察である。
不勉強ゆえ誤りもあるかと思うので是非指摘していただきたい。