結い橋(Win) ※ディスク3枚組
メーカー ういんどみる 総合評価 50点(凡作)
ジャンル ADV
発売日 2002/06/21
シナリオ 雨之幸永・ちゃとら 同人ソフト「Remel」や商業ソフト「ただいま修行中!」を作ったスタッフによるブランド処女作。
「こ〜ちゃさんの絵による萌えとエロ」が売りとされた。
原画 こ〜ちゃ
サウンド OdiakeS/Ecnemuse


個人的エピソード
こ〜ちゃさんの絵が好きなんで買いましたですよ。
買った時は「CG集ならCG集でもいいや」と覚悟を決めて買った……はずなんですけどねえ(^^;
買った以上、元を取りたいと思ってしまうのは貧乏人の悲しい性です。
体験版の不安のままに回避しておけば良かったかも。

内容
「天使が舞い降りた地」

郊外の小さな町――要町(かなめまち)には、そんな言い伝えがあった。
なんでもこの町は、天使によって守られているという話。
その天使は12年ごとに訪れるという。

ただの伝承……と片付ければそれまでだが…
その天使が張ったと言われる「結界」が、今もなお社に存在している。
雨が降っても雪が降っても、そこだけは常春の陽気……
そんなあからさまに超常的な代物であったけど、
物心付いたときから当たり前の様にある結界を、
この町の人は誰も気に留めなくなっていた。

初夏――
かの言い伝えになぞらえて、ここ要町では12年に一度の12日間のお祭りを迎えようとしていた。
静かな町も賑わいを見せ始め、だんだんと活気付いていく。
そして、そのお祭りを前日に控えた夜……

「見て見て、外っ!」
「なんだよ、一体……?」
「いーからいーから、早く見てみなさいって。ぜーったい、びっくりするから〜」
携帯電話の向こうで騒ぐ幼馴染みに急かされて、外を見てみると――

静かにふける夜空の下……季節外れの雪が舞っていた……
(マニュアルより)

システムとか
必要容量は約1.6GB。それ以外の容量を選択することは不可能です。
インストールしてしまえばCDレスで起動できるのはありがたいのですが、もうちょっと少ない容量も選択させて欲しかったところです。

ゲームとしては選択肢分岐型のADV。
難易度の方はCGの回収などまで考えなければそう難しくはないでしょう。
CG回収まで込みで考えて中の上に手が掛かるか否かくらいですかね。

で、システムなんですが処女作とは思えないほどよくできたシステムです。
環境によっては様々なバグも生じるようですが、我が家ではそういった問題も発生しませんでしたし。
難を挙げればタイトル画面に戻ることができないことくらいでしょうか。
(それも現在配布中の修正パッチを当てれば解決します)

セーブ数はデフォルトで60個。
これでも十分ですがさらに任意で増やすことが可能です。
限界がどの程度かは確認していませんが、困るということはありえないでしょう。

スキップは既読スキップを実装。他にCtrlキー押下による強制スキップも可。
既読部分に関しては、いくつかに分割されたシーン単位でのスキップ(ワープをイメージしていただければいいかと)も用意されています。
まあ、これでも便利は便利なんですが、どうせなら選択肢または未読部分まで一気に飛んでくれた方が個人的にはありがたかったですね(^^;

バックログは音声再生も可能なタイプでどこまででも戻れます。
「一つ前の選択肢に戻る」機能も付いており、この辺りも隙がない作りです。
この項目にも全く不満はなし。

鑑賞系はCG・BGM鑑賞とシーン回想を実装。

いや〜、でも本当によくできたシステムでした。他のメーカーもここは見習って欲しいところです(ぉ

絵とか
原画さんは全体的に丸みを帯びた柔らかい感じの絵柄が特徴。
まあ、割と広く好まれるタイプの作風なのではないかと。

特に立ち絵で身体全体のバランスが悪いのが若干気にはなりますが、それ以外は全く問題なし。
背景も丁寧ですし、立ち絵の種類も豊富。
塗りも原画のタッチを生かした色鉛筆調の淡い色使いと高く評価できる仕上がりです。

立ち絵を上下左右に動かすことでキャラクターの動きを表現ししようという試みも使いすぎで邪魔っけになっている場面もありましたが試みとしては面白かったと思います。
今後動かし方をもっと考えて、ピンポイントで使えばかなりいい演出効果を出せるのではないでしょうか。


枚数の方は鑑賞モードによれば83枚(一部パターン違い・重複カウント含む)
独断と偏見に基いてパターン違いや重複カウントされているものを完全に除くと約70枚程度。
プレイ時間やインストール容量を考えるともう少し欲しいところではありますが、パターン変化が豊富なので数字よりは多く感じるかと思われます(^^;
個人的には数字ほどの不足感は感じませんでした。

音楽・音声とか
BGMはPCMで再生、全21曲。うち2曲がボーカル曲です。
う〜ん、良くも悪くもBGMに徹しているというのでしょうか、これといって印象に残る曲はありません(^^;
が、曲単体での質はむしろ良質な部類に属するかと。
別に使い方が悪いということもないのですが……不思議です(ぉ

恒例のお気に入りは「穏やかな水面」「結界」「氷結」あたり。
何度聞いても曲そのものは本当によくできてるんですけどね〜。


音声は脇役も含めてフルボイス。
個人的には未依役の方の声がイマイチ好みではありませんが、基本的にはどのキャラも声は合っています。
ただ全ヒロインともに甘い声質なのでもう少し多様性があってもとは思いましたが(^^;
まあ演技としては脇役も含めて全員上手かったと思います。
というわけで音声面は合格点です。

シナリオとか
萌えだけで世の中渡れると思わないでください(ぉぃ
私からこの作品に贈る言葉はこの一言に尽きます。

とりあえずこのシナリオについて誉めるべき点があるとすれば、2点しかないと思うのです。
すなわち萌えとエロ。

ということで萌えについて触れると、巫女・妹・メイド幼馴染みと世間的に好まれそうなヒロインをしっかりと配しています。
その上で声優さんの演技があれば萌えられるという方なら満足できるのではないでしょうか(ぉ
私は全く萌えることもなかったのですが、その理由はつまるところイベントの少なさだと思うのです。
生憎イベントらしいイベントもないのに日常会話だけで萌えられるほど単純ではないので(^^;
この問題は後述する恋愛面での説得力の薄さにも結びついていまして、「結い橋」における難点の1つかと。
もう少しシナリオでキャラの魅力を掘り下げていれば違う結果もありえたのでしょうが……。

もっともエロの方は素直に高評価できます。
声優陣の熱演もあり、純愛物としてはかなり濃いHに仕上がっています。看板に偽りなしです。
全キャラに複数回のそれなりに濃いHを用意したこと自体は十分評価に値するでしょう。
……これで終盤の流れによって幾つか生まれた不自然に急なHシーンがなければもっと良かったのですが(´Д`;
入院患者と退院したその日に激しい運動をするのはどうかと思いますよ(ぉ


で、問題点も主に2点。
1つはイベントそのものの少なさ、キャラの掘り下げの浅さです。
このために恋愛面において「どうして主人公を好きになるのか」あるいは「主人公はどうして好きになったのか」についての説得力がどうにも弱いように思われます。
仮に百歩譲って最初から知り合いであるヒロインについては気にしないにしても、ゲーム開始後に知り合う詩奈までそういった部分の説明が皆無に等しいのはちょっとどうかと思います(´Д`;
萌えゲーならヒロインの魅力を高める意味でももっと力を入れるべきだったかと。

もう1つは終盤での早すぎる展開です。
「結界」などのキーワードで予想はつくでしょうが、終盤作品はファンタジーの様相を強めていきます。
別にそれ自体は大した問題はありません。十分に予想の範疇ですし。
ですが、主人公および一部サブキャラの過去・作品世界の背景についての言及がほとんどないためにプレイヤーはあっさり置き去りにされてしまいます(^^;
その上、その急展開の中にHシーンまで盛り込もうとしているので一部シナリオではかなりとんでもない展開が。

……主人公が実は特別な力を持っていて、それで全てを解決というのは、最近しばしば見られる「安易な感動系」の悪い傾向だと思います。
無理にゲームで泣かせようとしなくてもいいと思うのですが…。


まあ二つの問題を総括するとゲーム期間の短さに伴う情報不足とでも言えばいいんですかね。
「12日間のお祭」の期間内でゲームの始まりから終わりまでを収めようとしているのに対して、描きたい話や用意された設定があまりにも多かったという印象です。
結果として様々な描写や情報を削らざるを得ない、と。
どうにも設定に縛られすぎた感が否めませんです、ハイ。

総評
CG集と割り切っていられたならいい作品でした。
音楽やシステムもいいと思いますしね。

まとめ。限りなく萌えのみに特化した作品。
ちなみに全く誉めていない称号なのでくれぐれもお気をつけ下さい。
よほど絵が好きかシナリオなんかあまり気にしない、という方なら買ってみるのもいいかもです。
私としては体験版をやった上で、少しでも気になる点があれば回避することを推奨しますが(ぉ

書いた時点での総プレイ時間 13時間40分(コンプ)
お気に入りのキャラ (強いて挙げれば)有坂まつり
お気に入りのセリフ 特になし

初版2002/07/04