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ドニーイエン(甄子丹) 忽然一周からの記事 (2/2)

甄子丹が前妻や子供の話に触れようとしない理由は萬綺零との関係が順調にいっているからだと考えていた。2人は恋愛宣言をし、お互い以外の人間は考えられないことを表明し、互いの家族を紹介するまで関係が進んだこともある。パブで飲んでいたときに他の男性が彼女を見つめたことから、ドニーとその男性との間でいざこざがおき、ドニーがその男性を殴り、警察沙汰になったこともある。2人は激しく愛し合ったが、その恋愛には痛みも伴った。彼女はマスコミのターゲットになり、毎晩のように遊んでいると書かれ、ドニー以外の男性と親密な様子を書かれたこともある。一方ドニーは自身で製作、監督する映画を撮ることを決意していた。『野狼伝説』や『殺殺人、跳跳舞』などの映画を製作した。だが、興行成績は芳しいものではなかった。最終的には、2人は分かれることになる。彼女の方はシナリオライターの陳十三と相思相愛になり、1年後に結婚してしまう。

仕事も恋愛も挫折の連続であったドニーがハリウッドに渡る背景には、もう失敗は許されない必ず成功するんだという決意が心の奥にあったはずだと、私は思い込んでいた。しかし、ドニーは、自分には低迷期があったなどとは思っていない。「自分の映画をとりたかったから、1000万ドル以上の出演料の映画のオファーをことわったことがある。現金をもって出演交渉にきたが、僕はサインしなかった。今思い返すと、断った1000万ドルがちょっともったいない気はするけど。当時、マスコミは僕のギャラが1本20万ドルだって書いていたけど、実際のところ、僕の出演料はずっと100万ドルくらいで、最低でも80万ドルだったよ。」

ハリウッドでの成功については、ドニーは興奮を抑えきれない面持ちで語ってくれる。確かに、今のドニーの仕事は順調そのものだ。『野狼伝説』や『殺殺人、跳跳舞』は香港での結果は思わしいものではなかったのに、MILAMAXは彼の作品を大いに気に入った。さらには9年前にドニーが出演した『アイアンモンキー』をアメリカで上映、興行成績は1000万米ドルにのぼった。

甄子丹は自分の前に成龍やリンチェイがハリウッドで成功したことがあってこそ、自分自身の成功への道が開かれたことを十分わかってはいるものの、それでも興奮をおさえることができなかったという。

「MILAMAXから電話があった。君の映画が気に入ったので、君が製作した映画をすべて買い取りたいと考えている。ぜひサインしてほしい。と言われて、本当にびっくりしたよ。ロスに到着した一日目に、ロスにあるマネージャー会社や、弁護士たちが僕のところにさっそく来てくれた。君はアメリカでは大スターなんだって言われた。」

「ロスに渡って以来すべてが順調でいいこと尽くしだった。最初に雑誌「CQ」への掲載、その後は「Gear Magazine」がエクサイティングな100人の中に自分を選んでくれた。更に「Movieline」から今年のベストに選ばれた。また、MBCのスペシャル番組でハリウッドで今年最もホットな人物の一人としてとりあげられたりもした。一番がベン・アフレック、2番目は誰だったか思い出せないんだけど、なんと3番目がアクションスターの甄子丹、自分だったんだ。すごいことだよね。自分は以前に映画を2、3本製作しただけなのに、こんな受け入れ方をされるなんて。」

「雑誌の『PEOPLE』にもハリウッドで最も人気のある独身男性の1人に選ばれたんだよ。最高のアクションスターという選ばれ方ならわかるんだけど、変な話だよね。トップ10に入ったアジア人は自分一人だったんだ。1位はジョージクルーニーで、僕は4位に選ばれた。うれしかったかって?それはうれしいよ。ご褒美のようなものだから。」

「『CQ』への掲載は、とてもうれしい出来事だった。13歳の頃から雑誌を読んでいて、いつかこんな雑誌に掲載されたらすごいだろうなあって思っていた。でも中国人には無理なことだとあきらめていたんだ。でも、本当に自分が雑誌にのることになるとはね。」「自分を誇りに思うかどうかって?確かに悪い気分はしないよ!OKだよ!」

「ロスに行く前、MILAMAXから君にはアメリカにたくさんファンがいるんだよっていつも聞かされていた。アメリカに着いて自分には本当にアメリカのファンがいるんだって実感した。僕のことをマスター(師父)って呼んでくれて、僕の出た映画とテレビドラマを全てみてくれているんだ。タランティーノも僕のテレビドラマは全てみたってきいた。今の自分は出演作を選ぶことができるし、本当にいいもの、やりたいものだけを選べばいいんだ。上海ナイトでは悪役をやる。悪役ってことにはこだわらない。成龍と最後まで闘う役だから、きっと目立つと思うよ。」

ドニーは最近香港に戻ってきた。英皇電影の映画「千機変」の動作監督を引き受けたためだ。ハリウッドで活躍するドニーにとって香港の映画市場はとるにたらない小さいものだ。忘れていたが、「英雄」のメーキング映画の中で、主役のマギーチャン、トニーレオン、リンチェイはみんな中国語を話していたのに、ドニーだけは英語で話していた。わかった わかった。みんなドニーがハリウッドから来たってことをわかっているよ。

「ある記者がぼくに質問したことがある。成龍のようにハリウッドで手形を残す予定はあるんですか?って。わからないって答えたよ。もしかして来年そんなことが起こるかもしれないし、一生そのようなことはないかもしれない。でも、自分にもっとも大切なことは、僕自身が今現在の成り行きをすごく楽しんでいるってことなんだ。」

「香港の映画市場のことは、完全に忘れていた。香港は小さい、正直にいうと、小さすぎる。この市場でいくらのお金になる?アイアンモンキーは3000万米ドルを稼いだ。香港ドルで数億ドルだ。どうやっても香港では無理な金額だ。僕自身香港映画を見返してみたりもした。でもはっきりいって、ほとんどの映画にがっかりしたよ。」

ハリウッドにいけたスターたちには、共通した一種のハリウッドスター的な性格が出てくると思われる。ドニーについて例をあげると、彼の助手が録音機をもってきて、私が録音しているのに、彼も録音するといった状況になる。目的は証拠固めのようだ。私が間違ったことを書かないようにと。でもちょっと神経過敏ではないだろうか。心配しなくっても、ちゃんと話したとおりに記事にする。もうひとつの例。カメラマンがワンチャイにある展示会議場の新館で撮影しようと提案し現地にむかったが、道を間違え、旧館のほうについてしまった。旧館から新館に行くまでにさらに5分を費やすことになった。その5分の過程でマスターイエンに大変迷惑をかけてしまった。そのため、私はその道中、ドニーに謝り続けた。ドニー師匠は全然気にした様子はなく、むしろユーモアたっぷりにこんなことを言った。「君たちの雑誌は『忽然一周』っていうけど、『忽然一圏』の方がいいんじゃない?一圏(広東語で一周のこと)たっぷりしたからね。でも北京語では一周は一周だから、『忽然一周』でも間違ってないか。本当にここを一周しちゃったね。」マスターイエン、本当にすみませんでした。あなたの貴重な5分間を使って一周させてしまいました。


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