園遊会(後編)


音はガラスの割れた音だった。割れたガラスは2階の窓。そして、窓の下には
この館の主人、ウィル・フォン・ローエンハインがいた。目は血走り、尋常では
ない事は誰にも見て取れた。

ウィル「シリウス・ミクルスウェイン・・・・・・裁く!!」

そう言うと、ウィルはレーザーサーベルを構え、シリウスの方へ突進した!
誰もが唖然として動けない中、動いた人物が三人居た。

フィーア「お兄様、やめてください!!」
キートン「(隣を通り過ぎようとするフィーアを捕まえる)お嬢様、危険で
す!」
フィーア「離しなさい!お兄様!」

庭の端で見ていた拓磨は、ウィルに向かって走り出した。

拓磨「何考えているんだよ!あんた!」

しかし、距離が離れている為に、追いつけそうも無かった。

アン「(シリウスの前に立ちはだかり)ちょっとアンタ、逆恨みもいいかげんに
しなさいよ!」
アレク「アンリエット!」
フェル「アレク様、危険です。(っていうか、あなたが関わってもややこしくな
るだけでしょ。)」
アレク「何をする!離せフェル!」
シリウス「(上着をアンに渡しながら)アン、下がってろ。」
アン「シリウス様、気をつけて。」

ウィルはもうすぐそこまで迫っていた。シリウスが身構える。ウィルのレーザ
ーサーベルの一撃を屈んでかわすと、右手にパンチをくらわせる。ウィルの手
からレーザーサーベルが飛ぶ。ウィルがひるんだ一瞬の隙に、シリウスは手刀
をウィルの首筋に叩き込んだ

ウィル「がっ!」

ウィルは地に伏した。

それからが大変だった。とりあえず、庭のガラスを片づけ、招待客にお詫びを
し、ウィルの介抱もしなければならなかった。そんな中、日も暮れてきたので
客は帰り始めた。

フィーア「本当に申し訳ありませんでした。」
アン「全く、シリウス様が怪我でもしてたらどうしてくれたの!」
シリウス「アン、もうよせ。」
アン「はーい。シリウス様、帰りゲームセンター寄っていきません?(^^)」
シリウス「お、いいねぇ。(^^)」

アレクシス・リシーヌは、後片付けを手伝っていた。これも真の悪の布教の一
環だから、である。だが、手際が悪すぎてかえって迷惑を掛けていた。

アレク「ふむ。片づけというのは意外に難しいな。」
フェル「・・・・・・ひょっとして、逆に迷惑を掛けてるんじゃあ?」
アレク「・・・・・・」
キートン「片づけも我々の仕事でございます。お客様はどうぞお気を使わず
に。」
アレク「そうか・・・・・・なかなかにおもしろかった。入社の件、考えておいて
くれ。」
ハインド「・・・・・・・ええ。」
フェル「(多分無理だろうなぁ。)」
アレク「では翼、フェル、帰ろうか。」
翼「はい。」
フェル「ええ。」

椿「なんか散々だったわね。」
ジョウ「まあ、波乱は予想していたけど、予想かつ予想以上だったな。」
椿「ところで龍君、大丈夫?」
龍「うう〜(泥酔)」
椿「ほら、しょうがないわね。(龍を背負う)」
ジョウ「・・・・・・!」
椿「どうした?」
ジョウ「先に行っててくれ。」

視線の先には、ウィル・フォン・ローエンハインがいた。

ウィル「・・・・・・フロイライン・美雪、話がある。」
拓磨「!あんた・・・・・・」
美雪「妹尾さん、悪いけど先に行ってて。」
拓磨「・・・・・・いいのか?」
美雪「うん。私は大丈夫。」

多少心配そうだったであったものの、拓磨はセラフィナを促してローエンハイ
ン家の門を出た。

ウィル「フロイライン・美雪・・・・・・(言葉を捜すように宙を見回し)えと、
その・・・・・・すまなかった。」

美雪にはそれが彼の精一杯のセリフだと分かっていた。
心からの柔らかい笑顔を見せ
そして、短く返事した。

美雪「・・・・・・はい。」

それから一呼吸おき

美雪「でも、もう・・・・・・あんな嘘つくのは、これきりって約束してくださ
い。ね。」

ウィルはしばらく考えて。

ウィル「・・・・・・誓って。」

美雪は、その返事を聞くとまたにっこり笑って帰っていった。それを見たジョ
ウも、帰路についた。

フィーアは、この園遊会を開いた最大の収穫を見て、心から笑った。


<終劇>




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