闇の中
『惑星ムアィテンペ、邪龍連領』
「ククク…ここか?幻のアレが眠ってるっつーのは」
真っ暗な闇の中…威圧感のある男の声が聞こえる。
見渡す限り森が広がっている。まるで文明と言うモノには関りのない雰囲気である。
男はそこからゆっくりと数歩進み、立ち止まった。その足が地面をトントンと叩く。
「ケッ…確かになんかあるみてぇだなぁ?オイ!おめぇらちょっと掘ってみろ」
そう言われると軍服を着た20代位の兵士達が数人でしぶしぶと掘り出す。
そして数分後…5m程であろうか、ある程度掘ったところで再び男が声をかける。
「ちょっとそこで止まれ。…どれどれ…」
両手をポケットに突っ込んだまま腰を低くしてその穴を覗き見た。
目付きの悪い鋭く尖った眼で穴の中をじろじろと見渡す。
そしてある1ヶ所で眼の動きが止まる。
「あ、あのぉ…そこに何か…?」
不審そうに一人の兵士が尋ねる。
しかし男は聞こえていないのか無視しているのか応える気配はない。
ただじっとその一点を凝視したままであった。
しばらくして男は口を開いた。
「おめぇら…もう帰っていいぞ?」
何時似なく真剣な面構えをしている。
兵士達は一瞬戸惑った。しかし男の顔を見ると仕方なさそうに去って行った。
その時穴の奥からゴゴゴゴと唸るような音がしだした。
最初は小さく…段々と大きくなって行く。
兵士達はそれを聞くと同時に走り出した。
「ヒャハッ♪遭いたかったぜぇ…?炎龍…ククククク…今日みたいな闇夜は力が弾むぜェ…
てめぇのためにわざわざこの星の連中を皆殺しにしてやったんだ…それなりの礼はしてくれよ?」
まるで嘲笑うかのように音の根源を上目遣いに睨んだ。
この惑星はほんの少し前までは人口数十億を育む…それでいて自然と共存する平和な星だった。
そしてそこにダークザイドが誇る残虐なる破壊集団『邪龍連』が現れるまでは…
邪龍連といっても来たのはこの男…ゴクドー=ブレイドと数百人の部下であったのだが…
この星に来てまずゴクドーは力を解放した。
そしてそれに共鳴している様に住民達の力が…一般的には魂と呼ばれる命の根源が吸い込まれて行き、後に残ったのは主を無くした体…そしてなんとか持ちこたえた人々であった。
それを見た兵士達は持ちこんだコンピューターとマシンを使い、健全な肉体を回収しだす。
勿論身体には傷一つついていない、臓器移植にはもってこいの素材であったのだ。
不健全と判断された肉体はその場でマシンに飲みこまれ、エネルギーへと変えられた。
生き残った人々は必死になって逃げ惑った挙句、ロケットに乗って星を出て行ったのであった。
吸い取られた魂はゴクドーの中に収納、分解、エネルギーへと変えられていった。
「如何したヨ?俺が怖いのか?ククククク…お前の為に一杯力を蓄えて来たんだ…出て来いヨ?」
威圧的で、それでいて怒鳴っている訳でもない声で話しかける。
「この惑星の人々は皆、俺に力を分け与えてくれた…お前も俺に力を貸してくれよ?」
ふと、音が大きくなってきた。龍である。巨大な龍が炎に包まれ現れた。
「ヘッ…ようやく出てきてくれたか…」
既にゴクドーの右手には真っ黒なブラックホールの如きエネルギー体が創られていた。
「俺の精神<サイコ>エネルギーと外道<闇>の力…そしてこの星の
平和ボケの愚か者どもの命…それを圧縮したものがこれだ…
潔く出てきてくれた礼にこいつをプレゼントするぜぇ?」
ゴクドーの手から闇色の玉が離れる。そして燃え盛る龍に向かって飛んで行った。
「…半殺しだ…死なれちゃ意味がねぇからな…」
龍と玉が轟音を立てて接触する。
必死に叫びながら抵抗するが時間の問題であった。
ゴクドーは煙草を取り出し、火をつけた。
「ククク…煙草の吸いすぎには注意しましょう…あなたの健康を損なう恐れがあります。
…か、洒落た事言ってくれるぜ…ヒャーーッハッハッハッハッハッハ!!!」
既に勝負はついていた。龍は今にも倒れそうな状態でただただゴクドーを睨みつける。
「さてと…本題に入るか…あんたの力…頂くぜ?」
ゴクドーの手がすっかり火の気を無くした龍の頭に触れる。
すると電流が流れたかのように一瞬龍が痙攣する。
そして魂を吸い取られた人々と同じように動かなくなった。
「あんたの肉体はこのままにしといてやるよ、せめてもの礼儀だ。
このままこの星と眠り続けるこったな、永遠に…」
ゴクドーが基地に戻ると兵士達が駆けつけて出迎える。
「ゴクドー様!!ご無事で何よりです!!
これ以後いかが致しますか?」
「…全員撤収だ、所詮この星は奴の力を手に入れる為だけに占領したのだからな、
これ以上ここに残っても維持に無駄な金と労力がかかるだけだ
それにしてもこの星の連中は原始的だったな…
もっとも…その方が俺の力は働きやすい…余計なエゴに絡まれた魂ほど奪い難いモノはねぇ…ククク…その数少ないひとつを俺がまた滅ぼしちまったがな
まあまた今度こーゆー所を見つけたら植民地にでもするかな?」
そう言いながらダークザイド邪龍連、ゴクドー部隊は星を去って行った。
遠い遠い…ゴクドーがまだ炎を持つ前の出来事であった。
そしてこの一部始終は外道グループの資料室にひっそりと眠っていたのだった。
トップシークレットとして、誰の目にも触れることなく…
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