舞ΖHiME



「誰だったっけ?この話を考えたやつは」
「確か鴇羽さんのクラスメイトの瀬尾さんと原田さんがメインで考えはったって言うてたと思いますけど。後は1年B組の方達が協力したようなことも言うてはりましたえ」
「しっかしよくもまぁたかだか学園のイベントごときでこんなに細かくセットや衣装を作ったものだ。かなりの費用が掛かっただろうに」
「その点は珠洲城さんに全て一任しておいたんどすけど、まさかウチもここまでやりはるとは思いもしませんどしたわ」
「もっと他に使うところがあるだろうに……」
「まぁ楽しいからええんとちゃいます」
「楽しいか?」
「ええ、とても。中等部の可愛らしい子を眺めるのも楽しいし、なによりなつきのセクシーな衣装も見られることどすしね」
「こ、こら、恥ずかしいだろう。そんなにジロジロ見るな」
「減るもんやないんやさかい。可愛らしいおへそ、もっとよう見せておくれやす」
「バカ!さ、触るな!くすぐったいだろう!!」
「あらあら、顔が真っ赤になりはって。もう可愛らしいわ、なつき」
「……しかし、なんで学園長がこんな衣装を着なくちゃいけないんだ?」
「ええやないのん、よう似合うてはりますえ」
「そういえば脚本を読んで思ったんだが静留は『地』のままの役だよな」
「そうどすか?違うと思いますけど?」
「違わないだろう」
「だって、本物のウチの方が役よりもっとなつきのこと愛してますえ」
「………」
「ふふふ、なつきったら頭から湯気上げはって…ほんま可愛らしいわぁ」
「お、お前が変なこと言うからだろうが!!」
「変なことやありません。ウチは本気で言うてますんや。そうや、監督の鴇羽さんに頼んでもっとなつきとの絡みのシーン増やしてもらおうかしら」
「やめてくれ、静留…」
「なんどしたらお色気シーンなんてものも、なつきとならあっても構しませんわ。むしろやりたいぐらいやわぁ。そしたら、鴇羽さんにお願いに行ってきますわ」
「ちょ、ちょっと待て、静留!!…そうだ、舞衣のやつが言ってたが脚本は一切もういじらないらしいぞ。そうだそうだ。確かにそう言っていた」
「そうどすか。残念やわぁ」
「なんでも珠洲城のやつが舞衣のところに詰め寄ってきたらしい。『わたくしが活躍する話だと聞いてお父様から予算をふんだくってきたのに、1話目では出番がないわぶぶ漬け女ばかり目立つわ、どうなっているの!話を書き直しなさい!!』ってな感じで」
「珠洲城さんらしいどすなぁ」
「で、その時に舞衣が『脚本は一切いじりませーん!!』と断固拒否したそうだ」
「珠洲城さん、それで納得しはったん?」
「そんなはずがなかろう。珠洲城相手だから雪之のやつが説得してくれたらしい。納得させるまでに三日三晩かかったそうだ」
「大変どしたなぁ、菊川さんも」
「そうだなぁ。いつも珠洲城の尻ぬぐいばっかりさせられて」
「でも案外、菊川さんも楽しんどりはるんかもねぇ」
「そうかぁ?」
「きっとそうやと思いますけどなぁ」
「お?そろそろ出番が近づいてきてるんじゃないか?」
「ほんまどすなぁ。ほなそろそろ準備しましょうか」
「そうだ、静留。ずっと疑問に思っていたんだが、この劇のタイトルの『マイゼットヒメ』とはどういう意味なんだ?」
「……」
「どうしたんだ、静留?」
「……ぷ、ふふふふふ、あはははは」
「なんだ?何がおかしいんだ??」
「あきません。笑い堪えられませんわ。『舞ゼットHiME』ねぇ。なるほど。ふふふふふ」
「だから何がおかしいんだと聞いてるんだ」
「あっ、鴇羽さんが呼んではります。出番みたいどすえ」
「ちょっと待て、静留。何がおかしいのか教えてくれ」
「ふふふふ」
「静留!静留ー!!」