ロミオとジュリエット
Romeo and Juliet

来ておくれ、夜、来ておくれ、ロミオ、夜の月光、

あなたが夜の翼にはこばれるお姿はカラスの背に降りつもる雪より白く輝く。」


− ジュリエット、ロミオとの婚礼後庭園で彼を待ちわびて(第3幕第2場)

≪ストーリー≫

場面: ヴェローナとマンチュア

対立するモンタギュー、キャピュレットの両家。争いの絶えない両家に対し、ヴェローナの大公は再度争ったものを死刑にすると告げる。

キャピュレットの姪ロザラインに恋をするモンタギュー家のロミオ。ロミオは彼女に一目会おうと、身分を隠しキャピュレット家の晩餐会に出かけるが、そこに居合わせたキャピュレットの娘ジュリエットに一目惚れ。ジュリエットも初めて出会うロミオを気に入る。ロミオはジュリエットに会うためキャピュレット家の庭園に忍び込み、窓辺に姿を見せたジュリエットと愛を確かめ合う。お互い対立する一家の人間と知りながらも、2人は結婚の約束をする。

翌日、ジュリエットは婚礼式の日取りを決めるため乳母をロミオのもとへ行かせる。その日の午後に式を挙げることを乳母に伝えるロミオ。礼拝堂にやってきたジュリエットとロミオは、修道士ロレンスのもと式を挙げ夫婦となる。

式の直後、街でキャピュレット家の連中と出会うロミオと友人たち。争いを止めに入るロミオだが、友人マーキューシオが殺され、その敵を討つためキャピュレット夫人の甥ティボルトを殺してしまう。騒ぎを知ったヴェローナ大公はロミオを追放処分にする。

ロミオの訪問を待ちわびるジュリエットだが、ティボルトの死とロミオの追放が伝えられ嘆き悲しむ。一方ロミオも絶望のあまり死を選ぼうとするが、修道士ロレンスの説得により追放前の晩にジュリエットを訪ねる決心をする。一晩2人は一緒に過ごし、翌朝マンチュアに行くためロミオはジュリエットの部屋を去る。

キャピュレット夫妻は伯爵パリスとジュリエットを3日後に結婚させることを決めるが、彼女はそれを断る。キャピュレットは激怒し、結婚しないなら親子の縁を切ることを彼女に告げる。ジュリエットに相談を受けたロレンスは、彼女とロミオの愛を成就させるため、パリスとの結婚を承諾して式の前の晩に仮死状態になる薬を飲むよう彼女に告げる。ジュリエットが目覚めた後マンチュアに連れて行けるよう、計画を記した手紙をロミオに届けさせるロレンス。しかしその手紙はロミオに届かない。

パリスとの結婚前夜、ロレンスからもらった薬を飲み仮死状態になるジュリエット。翌朝キャピュレット家は大騒ぎになり、婚礼の式は一転葬式となる。マンチュアでジュリエットの死を聞いたロミオは、毒薬を手にヴェローナにあるジュリエットの埋葬場所へ向かう。墓で鉢合わせしたパリスを殺した後、眠るジュリエットに口づけをし、毒を飲んで命を落とすロミオ。目を覚ましたジュリエットはロミオの死体を見つけ、絶望のあまり彼の剣で胸を刺して死ぬ。

2人の身を案じて墓にやってきたロレンスは、大公に全てのいきさつを打ち明ける。ロミオとジュリエットの愛を知ったモンタギュー、キャピュレット両家は2人の像を建てることを決め、和解する。

≪メモ≫

「おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの?」(O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?)という台詞が超有名なこの恋物語。その場面ばかりが有名なため、実は主人公が2人とも死んでしまう悲恋物語だということは案外知られていないんじゃないでしょうか。たった5日間で恋に落ち、結婚し、死に至る若者2人の姿。プロローグで「不幸な星の恋人」と言われる彼らの姿は悲しいけれど逞しく、青春を全速力で疾走する溢れんばかりの若さが伝わってくるんだな・・・2人を一緒にさせようとあれこれ世話を焼く修道士ロレンスですが、彼がちょっとやりすぎだったんだよね。

ジュリエットは13歳!仮死状態になる薬を飲むシーンで、「本当に死んでしまうかも」「目覚めても墓に一人でいたら気が狂ってしまうかも」、と大きな不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも、ロミオのために決心して薬を飲む彼女。この場面のジュリエットはあまりに力強く、ロミオと幸せになってほしかったな・・・と思わずにいられない場面です。

ロミオなんですが、初めはロザラインという別の女性に恋してるんですよね。ロザラインは「男を愛さない」とロミオに言い放つなど冷たそうなイメージの女性ですけど、結局劇中には登場しません。第1幕で恋に悩むロミオの相手がロザラインだとわかったときは結構驚きました。まさかジュリエット以外の存在があるとは思わなかったもんだから(笑)。

冒頭の「おおロミオ!」の他にも愛に関する名台詞が満載です。あと、性に関する露骨な台詞も多いんで、興味ある方は探してみてください(ちょっとここでは紹介できません)。

「恋とはため息の雲とともに立ちのぼる煙だ、清めれば、恋するものの目に燃える火となり、乱されれば、恋するものの涙が降りそそぐ大海となる。」
「恋の軽い翼でこの塀は飛びこえました、石垣などでどうして恋をしめ出せましょう。」
「おやすみ、おやすみ。別れはあまりに甘く切ない、朝がくるまでおやすみを言いつづけていたい。」

恋愛について悩んだり考えたりすることがあるなら、この一冊が解決してくれるでしょう。学ぶこと多し。

シェイクスピアの作品によく出てくるヴェローナ(Verona)という地名はイタリア北部の都市のことです。『ヴェローナの二紳士』はもちろん、『じゃじゃ馬ならし』に登場するペトルーチオもヴェローナ出身となっています。



≪その他≫

レオナルド・ディカプリオ主演
ロミオ&ジュリエットの紹介を。設定を現代にし、アロハシャツを着てオープンカーを乗り回し、挙句の果てに女装までしてしまう登場人物たちの姿は好き嫌いが分かれそうです(僕は結構好き)。でもストーリー自体はきちんとツボを押さえた展開になっており、ロミオとジュリエットの出会いから死までが美しく描写されています。出会いのシーンでは大きな水槽を通して2人がお互いの姿を見つめあうなど、なんか少女漫画の世界のようですけど。ジュリエット役のクレア・デインズは目に力があって魅力のある顔をしてます。

原作と大きく異なる所は2人の最期のシーンです。原作ではロミオとジュリエットは最期にお互いの死んでいる姿しか見ていないわけですが、この映画ではロミオが毒を飲む瞬間ジュリエットが仮死状態から覚めるんですねえ。ほんの一瞬だけお互いを確認しあう2人の姿がとても切なく描かれています。そしてロミオの死を目の当たりにしたジュリエットは絶望のあまり銃で頭を打ち抜くのでした。ラストの衝撃度は映画のほうが強いかも。

ただ、設定を現代に移したことでいろいろと無理が生じるのも事実。例えば人を殺しているのに追放で済んでしまうロミオの姿など・・・ま、この辺りは大目に見てあげましょう。

   ◆

1954年の
ロミオとジュリエットは原作に忠実で、正統派といえる作品となっています。その分なんとなく淡々とストーリーが展開してしまうきらいがありますが・・・主人公2人の年齢がちょっと高めですけど(20代前半くらい?)、ロミオがやたら精悍だったりして、これはこれで面白いんじゃないでしょうか。印象的なのは2人が教会で結婚するシーン。鉄格子を隔てて軽くキスするだけの2人の姿が、結ばれない運命を暗示しているようで切ないです。『ロミオとジュリエット』は「すれ違い」が物語の大きなポイントになっていますが、この作品ではそれが特にいろんな場面で強調されていて、何度歯痒い思いをさせられたことか・・・

面白いのは、ロレンス神父の手紙がロミオに届かない理由が映画によって異なることです。この1954年版では、手紙を運ぶ神父がある病人のもとに立ち寄った際、その病人が伝染病であるペストにかかっていることが判明し、大騒ぎに。感染の拡大を防ぐため神父は病人と一緒に家の中へ閉じ込められてしまい、足止めを食らっている間に結局ロミオに手紙を渡すチャンスを失ってしまいます。下記の1968年版では使いの男が旅の途中ちょっと道端で用を足しているうちに、その脇をロミオが通り過ぎていってしまうのでした。ああすれ違い。

   ◆

1968年制作の
ロミオとジュリエットは必見!この作品の魅力はとにかく主演2人の若さ。ロミオとジュリエットの初々しさは眩しいくらいで、初めての夜が明けた後全裸で登場するシーンだって全然いやらしくないんですよねえ。ジュリエット役のオリヴィア・ハッセーですけど、こんな魅力的な女優さんは久しぶりに見ました。黒髪がとても美しい彼女ですが、彼女のイメージがそのままこの作品のイメージになっている人が多いのでは?有名なバルコニーのシーンで、ロミオに愛を告白しながら「大胆すぎまして?わざとツレなくする女より心は真実ですわ」なんて言われちゃったら・・・いやー参った(笑)。

こちらの映画はディカプリオ版とは異なり2人の最期も原作に忠実です。ただ、死んだ後の2人の表情がとても幸せそうで、それが逆に哀しい・・・

おしゃべり好きで憎めないばあや(乳母)もとってもかわいくて魅力的。あと、モンタギュー・キャピュレット両家の服装が赤と青にちゃんと分かれてたりというシンプルさも好きです。ピエロみたいな服ですけどね。

   ◆

アカデミー賞で作品賞を含む7部門で受賞した
恋におちたシェイクスピア。舞台は1593年のロンドン、ウィル・シェイクスピアがヴァイオラと恋におち、2人の恋の展開と同じ急スピードで『ロミオとジュリエット』を書き上げていくのですが、身分の違いによりヴァイオラは別の男性と結婚し、結局2人は離ればなれに・・・というストーリーです。男装したG・パルトロウの品のある演技、J・デンチの迫力ある女王っぷり(怖いんですけど、時々垣間見せる優しさがとってもいい味を出しているんです)、当時の人々の生活ぶりを知ることのできる衣装やセットなど、見どころの多い作品です。ちなみに実在の劇詩人、クリストファー・マーロウ役でこっそり出演してる俳優ってルパート・エベレットですよね?

ヴァイオラが最初の登場シーンで観ている舞台が『ヴェローナの二紳士』だったり、登場人物にフィービー(『お気に召すまま』)やロザライン(『ロミオとジュリエット』、『恋の骨折り損』)といったシェイクスピア作品にお馴染みの名前が出てきたりと、シェイクスピアファンが喜ぶ場面や台詞が満載。シェイクスピアと情熱的な一夜を過ごした翌朝、ヴァイオラが言う台詞なんて「新しい世界だわ!(It is a new world!)」で、これは『テンペスト』の有名な台詞だし・・・死んだと思ったシェイクスピアの姿を見て「亡霊だ!」と叫ぶウェセックス卿(ヴァイオラと結婚する男です)の姿だって、『マクベス』を彷彿とさせますよね。

そのヴァイオラは、言うまでもなく『十二夜』の主人公の名前。映画のラストでシェイクスピアはエリザベス女王から『十二夜』というタイトルの作品を書くように言われ、愛するヴァイオラを主人公にしてそれを書き上げた、という何とも粋な設定になっているのです。最後の別れ際、創作意欲を失いかけたシェイクスピアに『十二夜』のアイデアを勇気づけるように告げるのがヴァイオラ自身というのも泣かせます。自らの作品に彼女を登場させることによって、恐らく二度と会えない彼女に永遠の命を吹き込ませるように執筆を続けるシェイクスピア・・・そしてウェセックス卿と結婚したヴァイオラは、外国へと旅立っていくのでした。

男装していることを忘れ、ヴァイオラがシェイクスピアにキスしてしまうシーンがとても良かった!この映画でパルトロウが見せる喜怒哀楽さまざまな表情を見ていると、アカデミー主演女優賞を獲ったのも納得です。悲しいラストシーンではあるけれども、観終わった後さわやかな気分になる必見の映画ですよ。『ロミオとジュリエット』と『十二夜』あたりを読んでから観ると、より楽しめるんじゃないでしょうか。

   ◆

かの有名な
ウエストサイド物語が『ロミ・ジュリ』をベースにしているって知ってましたか?アカデミー作品賞・監督賞を獲得したこの作品、音楽・ダンスともに誰もが一度はどこかで見たり聞いたりしたことがあるはず。ちなみに僕の場合、懐かしのマンガ『Dr.スランプ』でダンスシーンのパロディを見たことがあります(ものすごく余談ですけど)。

舞台は1950年代のニューヨーク。イタリア系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団が縄張り争いをしているという設定です。ジェット団のリーダー・リフは何とかシャーク団を街から追い出そうと、彼らに決闘を申し込みます。しかしリフが兄のように慕うトニーと、対立するシャーク団のリーダー・ベルナルトの妹マリアが恋に落ちてしまったため、話は予想外の展開に。マリアの頼みで決闘を止めに行くトニーですが、ベルナルトがリフを刺したのを見たトニーは勢いでベルナルトを刺し殺してしまいます。トニーに兄を殺されて傷つくマリアでしたが、強い愛情のもと結ばれる2人。2人は街を離れようと決心するのですが、トニーはベルナルトの仲間に撃たれ、マリアの腕の中で息絶えるのでした。

愛情や怒りといった感情を歌とダンスで表現する、こてこてのミュージカル!苦手な人もいるでしょうが、ジェット団とシャーク団の対立を全てダンスのみで見せる冒頭シーンはかなりの迫力(このシーンで使われる音楽も有名ですよね)。キレのあるダンスはカッコよくて見応えありますよ。ジェット団のリーダー・リフのバック転なんてひねりが入ってて、ちょっとすごすぎ。ストーリーがシンプルなので、華麗なダンスに目を奪われていても話の展開においていかれることはありません。心ゆくまでダンスを堪能してください(笑)。

随所に『ロミ・ジュリ』っぽさが散りばめられており、ちゃんとバルコニーのシーンもあります(アパートの路地裏、っていうのがいかにもニューヨークって雰囲気なんですけどね)。ラストでトニー(=ロミオ)だけが命を落とすというのが原作との大きな違いなのですが、マリアがひとり残されてしまうだけに原作とはまた一味違った悲しみを感じさせる作品となっています。どんなに時代設定が変わっても、ちゃんと悲恋物語として成立してしまう所がシェイクスピア作品の持つパワーですよね!