私は驚くほど 映画やビデオを観ていない

illustrated by Mamoru Oshii  そもそも、私のような三流作曲家がこのような所へしゃしゃり出てくることじたい場違いもはなはだしいのだが、他の記事や広告等すべて読みつくし、暇になった頃、鼻でもほじくりながら適当に読んでいただければ幸いであると思う。もっとも、こういったコーナーで気のきいたポップなギャグのひとつでもとばせれば本当はいいのだろうけど、私にそういった才能は全くと言ってよいほど無い。また現代におけるアニメ音楽とは…なあんて偉そうな戯れ事を書いたところで、著しく信憑性に欠けた説得力のない文章になることは間違いなく、せいぜい関係者から失笑をかうのがオチであると容易に予測される。  
 というのも、だいだい私は驚くほど映画やビデオを観ていないのだ。本当は職業上いろいろな作品を観て研究せねばならないのに、ほとんど「男はつらいよ」しか観ていない。しかも、自分の関わった作品以外ではこれが一番好きである。しばしば「川井さんの今までで一番好きな映画はなんですか?」と訊かれる。そういうときに「いやあ、フランスの'83年の…」とか言えば、なんとなくカルトっぽくてカッコイイし、「ただね、ちょっとあのシーンがね…」などと、自分の微視的な意見を付け加えれば、さらに説得力も増すので、たぶん私は尊敬されるに相違ないと思う。ところが「男はつらいよ」と言った瞬間、相手の態度は音をたてて変わり(イスなどがこける)、さらに冷ややかな視線で「へー?…ふううう〜ん」などと、うす笑いを浮かべながら言われるので、ファンの私としては悔しくて思わず机をひっくり返したい衝動にかられる。
   しかしなぜ、私はあまりに映画を観に行かないのか。決して嫌いだからではなく、基本的に朝起きるのが遅すぎるため、映画の上演時間にもはや間に合わない、という悲劇的な宿命を背負ってるためでもあるが、全く努力をしていない訳でもない。例えば「紅の豚」だって、私はどうしても観たかったから、少年マガジンの懸賞にハガキを3枚も応募しているのだ。そして去年の年賀ハガキを使用したのがよかったのか、見事に当選し、試写会の招待券をまんまと手に入れることができたのである。ところが直前に仕事が入ってどうしても行けなくなったため、断腸の思いで友人に招待券を譲った直後、仕事は延期になった。しおしおのぱあ、である。「ツイン・ピークス」だって、絶対行こうと思っていたのに気がついたらもう終わってて、いまさらビデオを借りるのも恥ずかしくていやだし、「エイリアン3」はまだきっと混んでて座れなさそうだからいやだし、「リーサル・ウェポン3」だって…。
 しかしこれでは、いつまで経ってもいろいろな映画を観ることができないので、私はとりあえず、少し早く起きる努力をするところから始めるべきなのかもしれない。
 もっとも、できてりゃとっくにやってるけどね。
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