電話は3時以降にお願いします

illustrated by Mamoru Oshii 人はなぜ朝起きなければならないのであろうか。勿論、学校へ行くため、会社へ通うため、新装開店のパチンコ屋に通うため、と理由は様々である。また諸説によると、朝起きて夜寝ること自体が自然の摂理にかなった行為であり、そういった規則正しい生活を送ることこそ健康にとって甚だ重要であるらしい。
 だが私はここ10年間、だいたい夕方起きて、早朝寝る、といった逆転パターンで生活しているにもかかわらず、病気らしい病気を患ったことはない。今流行りの禁煙も禁酒もジョギング(嫌い)もフィットネス(嫌い)もしていないのに、である。さらに、食事の時間が決まっていないので、お腹が空けば随時適当にご飯は食べるし、驚くべきことに、ウンチの時間すら決まっていないのだ。これじゃあブロイラーとなんの変わりもなく、上野動物園のカバの方がよっぽどマシであると言える。もっとも、朝起きるのがつらいため段々起きる時間が遅くなり、それに従って寝る時間もどんどん遅くなるといった作家特有の不健康シンドロームは、なにも私に限ったことではなく、多くの自由業者にその姿を見ることができる。また、仕事をするにしても、締め切りが迫れば2日ぐらい平気で徹夜はするし、スタジオに行っても何時に終わるか分からない、といった必然的な部分でも不規則な日常生活を強いられている。
 それでは、私に規則正しい生活はできないのか、と思われるだろうが、こんな生活をしている私でも一瞬朝型の生活になったことがある。やはり仕事の都合でたまたまそうなったに過ぎないのだが、目が覚めると、なんと午前10時前(!)だったことがあるのだ。私は驚愕しつつも、なんだかいつもと違い、朝っぱらから妙なやる気に満ち溢れている自分を発見した。ただ、頭はまだ起きていないらしく、さすがに仕事をする気はおこらなかったので、パチンコをすることにした。天気も良いし、愛車のペダルも心なしか軽い気がする。下り坂だから当然だが、その時はとにかく爽やかであった。
 4時間ほどフィーバーをやり、愛車を押して家に帰った私は、一転してなんだか疲れてしまったらしく、暫くボーッとしていた。たぶん普段はまだ寝ている時間なので、これは時差ボケに違いないと私は勝手に判断し、いずれ仕事がしたくなるだろう、と思って景気づけにビールを飲むことにした。まあ1本ぐらいだったら、と思ったのが大間違いで、夜になって友人まで誘い、どんちゃんそのまま午前5時まで飲み続けてしまったのである。そして翌日、起きたのは信じられないことに午後3時過ぎであった。つまり、いきなり朝型の生活は崩壊したのである…。
 だが、こんな事など珍しくないのだ。その後も何度か朝型になりかけたものの、一日中眠かったり、ウンチが出なかったりと、ロクなことがなかった。結局これらの体験から、朝早く起きたところで私にとってはなんの意味もないことが判明したのだ。そこで現在では、なんとなく陽のあるうちに起きればいいや、という恐ろしくいい加減なコンセプトで毎日夕方起きている訳である。
 ということで業界関係者の皆さん、日々ご迷惑をおかけいたしておりますが、これが朝起きられない理由なのです。引続き、電話は3時以降にお願いいたします。ごめんなさい。
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