男らしく堂々と正直に告白しよう

illustrated by Mamoru Oshii 6月第一週の金・土・日は、私の生まれ育った品川のお祭である。 したがって本誌が発売される頃には終わってしまっているので、皆さん来て下さいね、と言えないのが大変残念だ。まあ、自分に関係ない街のお祭など興味もないであろうが、祭り好きの方は来年にでも是非いらして頂ければ、と思う。
 お祭と言っても私は御輿を担ぐわけでもなく、ただ昼からビールを飲み、空豆を食べては外をブラブラし、暗くなると露天で焼き鳥をつまみながら一杯飲んで、例によってへべれけになるのだが、これが実に楽しいのだ。もちろん御輿も担ぎたいと毎年思うのだが、御輿の出る時間には当然起きられないため、もっぱら見物するほうにまわらざるを得ないのである。
  さて、この文章を書いている5月ともなると、私の実家のある商店街はお祭の準備で次第に慌ただしくなってくる。まさに風物詩とも言えるそういった光景を見ていると、私も関係ないのになんだかソワソワして落ち着きがまるでなくなってしまう。しかし、そんな自分の気分と裏腹にどういう訳か、この時期は毎年決まって仕事が忙しいのである。そこで、せめてお祭の3日間だけはなんとしてでもスケジュールを確保するため、自分でも惚れぼれする位の美しい完璧な言い訳を過去において私は大量に発明していた。でも本当は、毎年いろんな人に迷惑をかけて本当に申し訳ない、と心から反省しているのだ。幾度後悔の涙で枕を濡らしたか知れない。だが、背に腹はかえられぬ。
  一昨年であっただろうか、納期間近の仕事を5月から6月にかけてしていたところ、スタジオやミュージシャンのスケジュールなどの問題から、レコーディングの日がもろにお祭の日とぶつかってしまったことがあった。しかも、このスケジュールはCDの発売日から割出したギリギリの線であり、さすがに日程をずらしてほしい、とはとても言えず、私はひどい絶望感で人と会うのも嫌な位落ち込んでいた。しかし、どうしても諦めきれない。そこで、断られるのを覚悟の上、ついにその仕事の担当ディレクターである須賀氏に、「金土日はダメなんですが」と言ってしまった。すると、何を今更言うのだ、といった感じで「え!どうして!なんでダメなんですか?一体なんの仕事が入っているのですか?」と猛反感を買ってしまった。
  私はこの際変な言い訳はせず、男らしく堂々と正直に告白すべきと思い、「実は、あの…お祭なんです…」と小声でいった。須賀氏は暫く絶句したものの、「お、お祭ですか…それじゃあしょうがないですね…」と、実に快く許可して下さったのである!ああ、なんて心の広いお方なのだ、まさに、ウルトラ・スーパーいい人である。もうこれからは変な嘘などつかずちゃんと正直に話そうと思った。そう、人間心を開いて接すれば、相手も理解してくれるものなのである。
  しかし、今年はいつもよりもかなりキビシイ状況である。なにしろ、劇場版パトレイバー2のレコーディングがあるのだ。内容的にみても決して楽なワケがなく、6月初旬よりまるまる1ヶ月間はレコーディングせねばなるまい。そこで私が3日間抜けるのは大ヒンシュクを買うのは間違いなさそうだが、意外に「どうってことないよ、3日間くらい」と軽く言われそうな気もするので、やっぱり正直に正々堂々と言う予定である。なにしろ、もう浴衣まで作っちゃったもんね。
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