コウモリの棲む街
illustrated by Mamoru Oshii  太陽も西に消え、木々などが黒く見え始める夕方から夜にかけて、何かが飛んでいるのをよく目撃する。それはぱたぱたと、頭上10メートル位の所を縦横無尽に飛び回っている。この鳥でも蝶でもない生物の正体はなんとコウモリである。なんとか洞窟と呼ばれる、いかにもコウモリが生息していそうな場所ではない。私の住む品川での話なのだ。
コウモリと聞くと、やたら毛嫌いする人も多いだろうが、私にとってはむしろ愛着を感じるほど親近感を覚える。こんな街にも、そういった少しだけ不思議な生物が潜んでいると思うだけでなんだか嬉しくなるからだ。確かに場所によっては血を吸う種類もいるのであろう。しかし、品川のコウモリは人に危害を加えたことなどただの一度もない。もっともそんな事件が頻繁にあったら、とっくにコウモリ撲滅委員会なるものが結成され、例によってハンター達が夜な夜な辺りを徘徊しているに違いない。すると、そこにたまたま自転車で通り掛かった私が誤って撃たれかけ、どうせそのまま電柱に激突した、などという情けないオチがつく筈である。
しかし、一体いつ頃からコウモリが棲むようになったのか。父の話によれば、父の幼少時代にはすでに居たらしい。ということは、祖父や祖々父や祖々々父や……きりがないので中止するが、とにかくかなり以前より品川に棲みついていることは間違いなさそうである。しかしその割には話題に上ることもなかったためか、コウモリが安全に暮せる環境が永年にわたって保たれてきたようだ。もっとも、行動は夜間に限定されるので、多くの人は気がつかないだけなのかもしれない。また、巣の所在が明らかになっていないこともコウモリにとってはラッキーであった筈だ。
今はもう塞がれてしまったが、私が小学生の頃、小学校のプールの壁に大きい穴が空いており、そこでコウモリの死体を発見したことがある。穴の内部は空洞になっていたので恐らくそこに巣があったと考えられるが、後にも先にも巣らしいものを発見したのはその一度きりであった。むろん執念深い私はその後も執拗に探索したものの、ついに見つけることが出来なかったのだ。しかし今となればむしろ発見できなくて良かったと心底思う。できれば自然のまま、そっとしておいてあげたいからである。品川に限らず、コウモリは全国のどこにでもいる筈なので、万一発見しても決してエアガンなどで撃たないで頂きたい。
そういうわけで、コウモリは大事にしたいと思っている私だが、カラスとは間もなく全面戦争に突入しようとしている。差別していると思わないで欲しい。なにしろプランターに植えてある、一年にひとつしか出来ない私の大事な大事なナスをくわえて行ってしまうからである。しかも2年連続でだ。さらに頭に来るのはそろそろ食べ頃かな、と思うと翌朝には取って行ってしまうのだ。どうしてカラスは私の行動より常に1日早いのか!敵ながらたいしたものである。まあそれはともかく、今年も親指大のナスがひとつ生っている。多分、あと少しで食べられる位の大きさに育つであろう。しかし!もう今年は昨年までのようにはいかないのだ!!なにしろ私は、そのXデーに向けて現在かかしを制作中なのである!!しかも巨大なやつだ。
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