恐るべし、スタジオ相性度実験

illustrated by Mamoru Oshii皆さんは心霊現象というものを信じるであろうか?大体において、信じる人は「見た」と言い、信じない人は「じゃ見せろ」と反論する。私はそんなやりとりを見て、昔ドリフで、ワニを発見した隊員(加藤茶)が、隊長(いかりや長介)にそのことを訴えるものの、隊長が見たら何もいなくて怒られる、というコントを思い出した。これは、隊員が真実を必死で訴えているのに、隊員を信じる前に殴る、という理不尽なギャグであったわけだが、最後には隊長もワニと出くわしてパニックになりつつ舞台が回転して歌になるという、猛烈にシビれる演出であった。つまり、よくテレビなどで霊の存在についての討論会を見るたびに私はこのコントを思い出してしかたがないのである。

まあ要するに、信じる人も信じない人も真偽を証明する術を知らないため、各個人の経験とか感覚に頼って判断しているのが現状と言える。私も真偽を証明することが出来ないので断定はしかねるが、個人的に心霊現象はある、と思う。それが残留思念なのか幽霊なのかは詳しくわからないが、とにかくなんらかのパワーを感じるときは尋常でない状態であることに間違いない。また、スタジオなどではミュージシャンとかアレンジャーにその手の能力がある人が多いこともあり、さらにそういった話を聞く。しかも、霊についての姿、性別、場所等に対する見解が見事に一致するので、信憑性に関しても確かなものがある。どうせ口裏を合わせているのだろう、と思われるだろうけど、そんなことをするメリットもないし、皆それほど暇ではない。それに、そういったことをいちいち気にするよりも、作品の出来不出来の方がよほど重要なため、仕事の邪魔をされない限りは問題にしないことの方が多い。

ただ、スタジオとの霊的な相性というものがあり、けっこう作品に影響を及ぼすことも少なくないため、初めてのスタジオでは私が6年前に開発した超非科学的な実験をしばしば試みている。そしてその方法だが、スタジオの後ろにあるソファなどで寝てみるという、至って簡単なものの、これまでに数限りない相性を正確に判定してきた実績は内外ともに高い評価を得ている。勿論、ソファの形状やスタジオ内の温度等が微妙に影響しているのだろうけど、相性の悪いスタジオだと大変寝苦しく、なんと、ものの5分とたたないうちに起きてしまうのだ。こういったスタジオではリラックスできないため、例のスエットやパジャマを着用し、全員で仕事中ずっとギャグを連発していれば良い。

しかし、それが相性の良いスタジオだと心地好さのあまりいくらでも寝れ、いくら呼ぼうが揺すろうがピクリともしない所謂ただの昏睡状態となり、たとえ起きていても気を許せばすぐ寝てしまうため、問題はかなり深刻である。しかも未だ対応策は発見されていないのだ。いつかなど、録音中にうっかり8時間も寝てしまい、起きたらすでに終わっていたなんてこともあったし、うとうと寝てしまったため弦の人にキューを出し遅れ、最後まで一泊ズレたまま録音したものの、怖くてついてに言い出せなくそのままにしちゃったとか、悲惨な例は後を絶たないのである。勿論、これが何の仕事だったのかは口が裂けても言わない。

まあそこで最近、判定結果を知ったところで実は何にもならないんじゃないか、という気がしてきたのだ。相性の良いスタジオではすぐ寝ちゃうし、まだ相性の悪い方が遙かにマシという皮肉な結果が出るだけだからだ。オマケに私の実験自体を否定する動きも周りに見られる。もっとも、本当は心霊現象以前の話なのかもしれないけどね…。
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