「けんちゃん"B"スタジオ」お掃除計画

illustrated by Mamoru Oshii昨年の暮れ、仕事場でもある私の実家の部屋をついに掃除しようと思い立った。木造で築年数も40年を経過した2階にある私の部屋には、わずか6畳のスペースに驚くほどの楽器や録音器材などが積まれている。しかし器材が増え過ぎ、もはや飽和状態なのにさらに増やそうと試みたところ「床が抜けて潰される」と、真下に寝ている両親から苦情が出たため、やむを得ず現在は別の場所に仕事場を移した。しかし、やはり曲を書いたりするには長年馴染んだ場所が落ち着くので、毎日のように自転車で通って仕事をする日々を送っている。従って、器材は飽和状態のままである。

そもそも6畳間にここまで器材が増殖した背景には様々な部屋の改造があった。まずベランダをつぶして物置を父と作り、そこに使用していない物を片っ端から放り込んだ。次に押し入れをぶちぬき、小学校から使っていた机を押込み、その上にアンプを乗せ、さらにその上にテレビを置いた。そしてその前にミキシングコンソールを設置したところで机は完全にその機能を失い、引出しの開閉はおろか触ることすらできなくなってしまった。それでも狭いのでフスマを外し、70センチ位隣の和室にハミだしてテープレコーダーなどを置いたが、スースーするのでその回りをベニア板で四角く覆った。おかげで私の部屋は広くなったが、隣室側から見るとまるっきり見せ物小屋の裏側といった風情で、その壮烈な見苦しさから家族の大顰蹙は今でも買っている。

そうして無理やり拡大した部屋へ次々と大量の器材を無計画に導入した結果、机はもとより、他の押し入れも2度と開けられない状態となるに至った。つまり、30数年間の歴史をそのまま封印してしまった訳である。今回、そこを掃除しようというのだ!!これが相当困難を極めることは判っていた。なにしろ遺跡を発掘するようなものであり、ここ10数年、その挑戦は毎年失敗に終わっているのだ。

とりあえず様々な物をどけ(これだけで物凄い労力であったが)、手始めに15年近く開けていない押し入れを開いてみた。ぷうん、とカビのような匂いが鼻をくすぐる。匂いの正体は当時着用していた大量の衣類であった。しかも忌まわしいことに、あたかも今脱いだかのごとく保存されているのだ。さすがにそれは戦慄すべき光景であり、私はともかく無我夢中で扉を閉めた。触れてはいけない所だったのである。仕方なく、次に例の物置を開けてみることにした。しかしドアが開かない。それでも無理やり頭が出せるだけこじ開け、恐る恐る覗いてみた。すると、2つある本棚が双方とも倒れて大量の本が散乱しており、それが引っかかって開かないことが判明した。そういえば、7年程前に大きな地震があった時、物凄い音がした事を思い出した。もっとも、真相が分かったところで開かなければ何もならない。結局ここも諦め、次に25年使用しているカーテンを取り替えることを考えた。だが、一体どこへいってしまったのか?そういえば替えのカーテンも購入してすでに15年が経過している。今更15年前のカーテンを掛けてどうなるというのだ?しかもピンクの花柄だ。…なんだかもうバカバカしくなってきた。ええい、中止だ。中止である!

かくして計画は失敗に終わったが、最後にせめて雑誌だけでも整理したいと思い20冊ほどを紐にかけようとした。ところが本を持ち上げた瞬間いきなりギックリ腰になり、全く動けなくなってしまったのだ…もはやこれまでである。トホホの年末であった。
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