やめられれば苦労はないけど…

illustrated by Mamoru Oshii友人の勧めもあって3年ぶりに健康診断を受けた。別に調子の悪い所があった訳ではないのだが、以前の検査で肝臓のナントカ値が少し高く、お酒の摂り過ぎには充分気をつける必要があったのに、それを全く無視して3年間過ごしてしまったことを今更不安に思ったからだ。しかもその時の検査では肺に影のようなものがレントゲンに写り、再検査を必要としていたにもかかわらず、病院に行くことはおろか禁煙すら試みなかったのだ。ハッキリ言って、このツケは計り知れないものがあるに違いないと考え、幼少の頃から診てもらっている医師に検査を依頼したのである。

その結果、肺は何ともなかったものの、案の定肝臓のナントカ値は高かった。医師は「食事はバランスよく、タバコは控えめに、酒は絶対減らせ、多少運動もしろ」と、もっともな事を言った。なるほと、いくら私でもそのくらいは解るが、実際にどの程度までお酒を飲んで良いのであろうか。実はそれが私にとって最重要問題なのである。

「酒は週に2日だな」とカルテを見ながら医師は言った。「すると、週に2日だけやめればイイんで……」「バカ、2日だけ飲んでいいんだよ!」

もはや"どっぴゃーん"であった。"どっぴゃーん"とは、アゴがはずれ目が飛び出る状態のことを指すが、そんなことはどうでもよい。さらに医師は「守らないと肝硬変になるぞ!まあ20年位のうちにはね」と続けた。私は肝硬変がどんなものなのかは知らないが、きっと恐ろしい病気に違いあるまいと直感し、はずれたアゴを押さえながら病院を後にした。しかし、これは困ったことになった。だいたい私の場合、飲酒や食生活を見直すよりも、赤坂にある牛丼の「たつ屋」がおいしいからといって、連日わざわざクルマで通うこのおめでたい性格からまず治さなければならない。これはスペック的に同等の「吉野家」にすれば解決する問題ではない。さらにインスタントラーメンなども控えなければいけないし、ビールなら1日1本まで、日本酒なら1合までにしなさいと言うのだ。それも週に2日だ…ああ、こんなつまらない人生ってあるのか!

神にもすがる思いで、家に来てくれる置き薬屋さんに劇的に肝臓がよくなる薬はないのか尋ねてみた。すると、肝機能を助ける補助的な薬はあるが、そんなナントカ値を直接治すものは無いと言う。ところが「まあ、手に入ればの話ですけど…」と置き薬屋さんの目が怪しく光った。私はゴクリと唾を飲んで薬屋さんの言葉を待った。「干した熊の肝臓を削って飲むのです。ただし冬眠から醒めたばかりの奴に限りますがね」

熊の肝臓だと!じゃあ、私は丹沢へ熊を捕りに行かねばならないのか。しかし、バックドロップしか出来ない私が体長2メートルの月の輪熊と一体どう戦えばよいのだ。冗談じゃない、熊のエサになってたまるか。かといって、そんじょそこらで売っている代物ではないし、仮にあってもひどく高価だという。いくら効くといっても、これではどうにもならない。私にサンダーファイアー・パワーボムが出来ても絶対無理である。

本当は、自分の肝臓をそっくり新品と交換できれば話は簡単なのだが、RAMじゃあるまいし、秋葉原のラジオストアあたりで売っているワケもない。病院へ行けばあるのだけど、かなり巨大な物でとても身体には内蔵できないらしい。ならば自作で、とも考えたが、"和式くん"じゃないんだから5千円位ではとても作れそうもない…ああ、そんな下らないことはともかく、ぼくは一体どうしたらいいんだようっ。
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