その後の"和式くん"

illustrated by Mamoru Oshiiこの忌まわしく、かつ、いかがわしい連載もついに終わろうとしている。ハッキリ言って、ニュータイプ唯一の汚点であるこのコーナーを掲載する位ならメモ用紙にでもしてくれた方がよほどマシだ、とお考えの皆さんも大勢いらっしゃったことであろう。私にしても、ここを読む人間はゼロであると固く信じ、およそ"ミキシング・ルーム"というタイトルとは全く無関係なことを勝手に書きまくってきたことを海より深く反省している。が、それも今月号で終わりなので安心して欲しい。

とは言え、それでも何人かの奇特な方は読んで下さっていたようで、先日も某雑誌社の方と偶然お会いし、世間話など雑談めいたことをしている最中に「ところで川井さん、"和式くん2号"はどうなりましたか?」と突然訊かれた。確かに以前このコーナーで"和式くん"のことを書き、壮大なる2号機計画を発表したものの、その後のことは全く触れてなかった。そこで、ごく少数の和式くんファンのために事の全貌をここで明らかにしたい。

まず、結論から言うと、2号機は作られなかったのである。その理由としては"めんどくさい"というのが一番に挙げられるが、実際は"作る必要がなくなった"からなのだ。順を追って話そう。前回、洋式トイレでうんこの出来ない悲劇のディレクター(仮にS氏としておく)を救済するため、我々は和洋変換アダプターを作ったものの、実は彼の便座に座る姿勢に原因があるのではないか、と密かに睨んでいた。ここに、当時S氏に着座指導をしている時の模様を撮ったビデオがあるが、そこには彼がふんぞり返って便器に座っている光景が映しだされている。そして懇切丁寧な指導の結果、彼の着座姿勢は飛躍的に改善されたのだが、その後も相変わらず出来ないとのことであった。我々は最後まで原因が判らぬままプロジェクトの自然解散に追込まれた、と言うより飽きてしまって忘れていたのである。

しかし、それから2年。問題は意外な角度からあっけなく解決することになった。実際我々もそのあまりに非現実な結末にただ呆然とする他はなかった。そこには我々一般人の文化とか常識といった尺度では測りきれない恐るべき事実があったのだ。つまり、ある日S氏は突然もよおしトイレに行ったが、とても間に合わないと思い、"生まれて初めてズボンとパンツを下ろしたまま"用を足したところ、ズボンが膝の所にあるので足が開かずにうまくできた、と言うのである。しかも、さも大発見であるかのごとく「ズボンとパンツを全部脱がなくてもできるんですね」と、誇らしげに言うではないか!

おお、神よ、すると彼は幼少の頃から現在に至るまでズボンとパンツをすべて脱いでうんこをしていたというのか。脱いだズボンとパンツはドアのフックにでも引っ掛けておいのであろうか……もう我々の想像など遙かに超える生々しい彼の生態がそこにはあった。少々残酷ではあるが、私は真実を彼に伝えた。「普通……そうするんです」彼のステータスをも紛糾しかねないその言葉の後、スタジオ内は重苦しい沈黙がいつまでも続いたのであった−−。

だが、そうしてまた仕事は着々と遅れるのである……。
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