another face 〜電網の恋人〜

第十六話・策動

 

 

カランカラン

 

「いらっしゃいませ…っと菜織に真奈美ちゃん。」

「今日はお客として来たわよ。」

 

店の前に撒いた水がアッと言う間に蒸発してしまうくらい暑い昼頃、菜織が真奈美ちゃんを連れてl’omelletteへ涼みに来た。
菜織は白の開襟シャツにジーンズ。真奈美ちゃんは水色のワンピースに白くて大きな帽子という恰好で、いかにも涼し気だ。

 

「お客さんか…では、御席の方へご案内します。」

「ふふっ、ご丁寧にアリガト。」

 

いつもとは違い、お客用の対応してやる俺に、嬉しそうな顔で礼を返す菜織。
真奈美ちゃんはその横で、懐かしそうにキョロキョロと店内を見回している。

 

「あれ?今日は乃絵美ちゃんおやすみなの?」

「いいえ、少々遠いところにデリバリー中ですので、しばらく戻らないかと思われます。」

「…やっぱり、いつも通りにしてくれない…なんか丁寧すぎて気持ち悪いわ。」

 

小首をかしげながら質問する真奈美ちゃんへ『店員』としての返答を返す俺に、一足先にカウンター席に陣取った菜織が頬杖を突きながら、心底嫌そうに顔を歪めてそうコメントした。

 

「オマエなあ…人がせっかくお客さんとして御持て成ししてるのに、そういう言い方は無いだろ…。」

「アハハ…でも普段通りの方が私も安心するよ…。」

 

そして、菜織の隣に腰掛けながら、真奈美ちゃんも苦笑しつつそれに賛成する。

 

……せっかくサービスしてあげたのに…

 

「真奈美ちゃんまで……。」

「丁寧に対応して欲しい時はそう言うわよ。それよりいつものヤツね。真奈美は?」

 

がっくりと肩を落す俺に、菜織はひらひら手を振って話を締めくくると、『いつものヤツ』…ハニーレモンパイを注文した。
飲み物は、多分アイスコーヒーで良いのだろう。

 

「わたしは…。」

「『大きいパフェ』だね。」

「えっ?あるの!?」

 

眼鏡を掛け直しながらメニューを眺める真奈美ちゃんの横から意表を突くようにそう言うと、真奈美ちゃんは驚きと嬉しさが入り交じった顔で俺を見た。
なんだか目がキラキラしてる…。

 

「うん、母さんが作り方を知ってたから教わっておいたよ。」

「うわあ…ありがとう。じゃあ『大きいパフェ』をお願いします。」

「はい、かしこまりました。」

「あっ!私もそっちにする。私も食べてみたい!」

 

ポンっと両手を合わせて真奈美ちゃんが嬉しそうに『大きいパフェ』を注文すると、菜織も慌ててそれに変えた。本来は真奈美ちゃんオンリーのメニューなのだが、後であーだこーだ文句を言われるのも嫌なので、菜織の分もそれに変更してやる。
だが、あくまで、『真奈美ちゃんだけの特別メニュー』なのだから、後日菜織が独りで来た時には受けないつもりだ。

 

「はい、分かりました。特別メニュー『大きいパフェ』お二つですね。」

「うふふ…楽しみだなあ。」

「なにせ六年ぶりだものね…アンタ、真奈美をガッカリさせるんじゃないわよ!」

 

まあ、何にしろ二人とも凄く楽しみにしている様だ。
真奈美ちゃんに「違うよ〜」何て言われたら、菜織に何をされるか判ったもんじゃない。
これは、頑張らないといけないだろう。

 

「重々承知しております!」

 

キッチンに戻ると、俺はさっそく『大きいパフェ』の制作に取り掛かった。
母さんから作り方を教えてもらった上に、当時の味を再現する為に、材料も吟味してある。
生クリームは乃絵美の手作りを使って、フルーツはお得意さんの知り合いから譲って貰った家庭菜園製、更に倉庫の奥から発掘した三つしかない当時の器。

 

……何だかグルメ漫画みたいだな…。

さて、作るか…。

 

 

 

「おまちどうさまです。」

「わあ…『大きいパフェ』だ。うんこれだよ。器まで一緒だあ。」

「ふーん、これが『大きいパフェ』ね。ちょっと地味ね。」

 

久々に日の目を見た『大きいパフェ』に二人それぞれの感想が投げかけられる。
俺としては、会心の出来だと思うのだが…。

 

「まあ、婆ちゃんの代に作られた物だからな。でも、味は保証するぜ。」

「ふふっ何だか食べちゃうのがもったいないけど…いただきまーす。」

「はむっ……。」

 

俺の講釈そっちのけでパフェを器ごと回していた二人が、専用の先割れスプーンを持って同時にパクつく。
そして、その動きが止まった。

 

……失敗?

 

背中に冷や汗をかきながら、俺は恐る恐る訊いてみる。

 

「…どう?」

「美味しいじゃない!ホントにアンタが作ったの?」

「うーん、これだよ。思い出すなあ…。美味しかったんだけど食べ切れなくて残念な思いをしたの…。」

 

審査員の笑顔の賞賛に胸をなで下ろす。どうやらご満足いただけたらしい。
菜織は、口の周りにクリームが付いているのも気にせず、美味しそうにスプーンを動かしている。

 

「それで、コイツに食べてもらってたのね。」

「うん。」

 

そして、真奈美ちゃんは、まるでパフェの味が記憶の扉を開ける鍵かの様に、一口食べるごとに当時の思い出を一つずつ話していった。
かくれんぼのとき、俺が夜中になっても見付からなかった事(賽銭箱の中で寝てた。)
菜織が階段から転がり落ちた事(途中で真奈美ちゃんと巻き込み、更に下にいた俺の上に二人一緒に降ってきた。)
弟君と菜織が大ゲンカした事(弟君が真奈美ちゃんを泣かしたのが原因で、菜織が弟君とケンカして、菜織が勝った。)

 

「いろんな事があったなあ…。」

「そうね。でもまた逢えたんだもの。これからも思い出を作って行きましょ。」

「うん。今度は、ミャーコちゃんやサエちゃんとも一緒に……どうしたの?」

「……。」

 

さらに話を続ける真奈美ちゃん達とは違い、さっきから俺は他の事を気にしていた。

 

……おかしい…。

乃絵美…。

遅すぎる…。

事故か?

それとも…。

 

一度感じた不安は、止まる事を知らずに俺の頭の中を支配して行き、居ても立ってもいられなくなった。
そして、無意識にエプロンを外すと、俺は出口へと駆け出していた。
乃絵美の姿を求めて…

 

「ゴメン!チョット外に出てくる!」

「あっチョット、待ちなさ…。」

「代金は俺のツケにでもしといてくれー!」

 

俺を呼び止めようと席を立った菜織だったが、『俺のツケ』という言葉に反応して、席に戻りメニューを眺め始めた。

 

…ゲンキンなヤツ

 

 

 

「あれっ?デリバリーならさっき乃絵美ちゃんが来たけど?何か忘れ物?」

 

まずはデリバリー先…商工会長さんの所を訪ねると、商工館長さんの奥さんは、突然息を切らして来た俺に戸惑いながら、対応してくれた。

 

ハア…それじゃあハア…乃絵美は、もう帰ったんでハア…すか?」

「ええ…。」

 

どうやら、ここには来たらしい。
もしかすると、全て俺の早とちりで行き違いになっただけなのかもしれないが、そんな論理的思考をも上回っていた感情は、俺自身を更に不安へと駆り立てる。

 

「ありがとうございましたっ!」

「あっ……くん!?」

 

はあ…はあ…乃絵…美…。

 

俺はl’omelletteから商工会長さんのところまでのルートを、感情に任せて走り回った。

 

…………………。

……………。

………。

…いない!

何処だ!乃絵美!

 

「…のハア…えハア…みハア。」

 

どれほど走っただろう?
へとへとに疲れきり、酸欠状態になった俺にようやく落ち着いて考える頭が戻った。
その頭で今迄の行動を振り返りながら、一度l’omelletteに戻ってみる事にする。

 

帰っていてくれ!乃絵美!

 

 

 

ガンッ!

 

部屋の壁を殴った手が、ジンジンと痛む。

 

……何処行ったんだよ!

…乃絵美!

 

夜になっても乃絵美は帰ってこなかった。
連絡も無い。
親父や母さんは誘拐じゃないのかと、捜索願を出したり八方手を尽くしている。

 

……………。

 

トゥルルルルル…ガチャ

 

「毎度ありがとうございます。l’omellette…。」

「大変だよ!伝言板に!」

 

突然鳴った部屋の電話(店用)にいつもの癖で反射的に出ると、ミャーコちゃんの慌てた声が飛び込んできた。

 

「ゴメン、ミャーコちゃん。今、それどころじゃ…。」

「何言ってるんだよ!乃絵美ちゃんが危ないんだって!」

「乃絵美は……なんだって!?」

 

のえみ…

乃絵美…が…

乃絵美が危ない?

 

惚けた頭に、『乃絵美』と言う単語がぐるぐる回る。
そして、その意味を理解した後、俺の行動は自分でも驚くほど早かった。

 

「早く!早く!」

「言われなくても、今やってる!」

 

俺は壊れるかと思う程の力でバキバキとキーを叩き、急いで伝言板の管理画面を開く。

 

 

【神影】

うーんやっぱりあの娘可愛いなあ…。

本気で惚れちゃうかも…。

 

【ハニーレモンπ】

いい加減にしなさい!>神影

 

【HELL HOUND】

ハニャア?ヤキモチかな?>ハニーレモンπ

 

【@】

もう我慢できないよー!

じつりょくこーしー

 

【puipui】

玉砕して来て下さい>神影

実力行使って?>@

 

【ピアニッシモ】

昨日はありがとうございました。とっても楽しかったです。>WIND

それってどういう意味です?>@

 

 

「しまった!俺の所為で!」

 

自分の愚かさに、椅子を後ろに跳ね飛ばして膝を付き、頭を抱える。

 

昨晩、俺が伝言板のチェックをしておけばっ!

でも…どうする…乃絵美がいなくなってからもう五時間が経ってる。

その気になれば海外逃亡だって出来る……。

……………。

ああっ!もっと常識的に考えろ!

それに、まだ乃絵美が『@』に誘拐されたと決まった訳じゃない!

あの時みたいに何処か独(ひと)りになれる場所にいるのかもしれないだろうが!

……

あのとき…みたい……

まさか!

 

 

 

「ハアッハアッハアッ…。」

 

頼む、いてくれ…。

 

「ハアッハアッ……乃絵美ィィィッッ!!」

 

石段を登り切ると、俺は声の限りに妹の名を叫んだ。
旧十徳神社の境内に俺の声が響き渡る。

……
………
しかし、返事はない。

 

「……クッ乃絵美。」

「………ねえ?」

「乃絵美!」

 

後ろから声を掛けられ、俺は振向くと同時に目の前にいた娘を力一杯抱き締めた。

 

「ヒャッ!ちょっチョット苦しいって…いい加減に…はな…してよ…。」

 

しかし、腕の中にいたのは乃絵美ではなく、赤い顔をした菜織だった。俺は慌てて身を放す。
そして、俺に背を向けて身繕いをする菜織を無視して、境内中を探し回った。

 

乃絵美!

乃絵美!

乃絵美!

 

「……もう、一体どうしたのよ…アンタ、今日の昼間からは特に変よ。」

「乃絵美!何処だ!乃絵美!」

「チョット!チョット!まさか乃絵美、まだ帰って無いの!?」

 

始めは軽口を叩いていた菜織だが、俺の取り乱し様から状況を悟り、慌てて俺に詰め寄る。
しかし俺は乃絵美を探すのを止めずに、菜織を引き連れたまま旧十徳神社内を探し回った。

 

「それって迷子?家出?まさか誘拐?」

「分からない!頼む!菜織も手伝ってくれ!」

「うっうん、勿論。そうだ!真奈美達にも手伝ってもらいましょ!」

 

『誘拐』と言う単語にゾクリと寒気がする。
それを振り払うように、俺が後ろから付いてきていた菜織の肩を掴んで揺さぶりながら頼み込むと、菜織は気圧(けお)されるように答えた。

 

「ああ、じゃあ連絡係頼む。」

「連絡係?」

「みんなのところに居ないか電話して、後で俺が電話掛けた時、結果を教えてくれ!」

 

俺の言わんとしている事がよく解からなかったらしく、首を傾げる菜織に早口でそう説明すると、俺は次の場所へと走り出した。

 

「待って!私も行くわっ!」

「バカ!こんな夜中に女の子を連れ出せるか!じゃあ電話の方頼むぜ!」

「……分かったわ。その代わり、全部終わったら、乃絵美との事で大事な話しがあるから!」

 

菜織の言葉に頷くと、俺は石段を駆け下り始めた。

 

菜織…スマン…

全て終わったら、引っ叩くなり怒鳴るなり好きにしてくれ…

 

 

 

「チョット!どうしたの?」

 

飛び降りる様に石段を駆け降りていると下から上って来た摩耶さんに呼び止められた。
多分、菜織の家に遊びに来ていたのだろう。

 

「摩耶さん!丁度良かった!」

「なになに!?もしかして厄介事?」

「はい、実は……。」

 

どこか楽しそうに訊ねる摩耶さんに乃絵美が行方不明になった事を手短に話すと、その顔付きが見る見る変わってきた。
冷静で…
大胆で…
計算高い敏腕マネージャーの顔に…

 

「分かったわ!翔にも連絡して手伝わせましょう。」

「お願いします。それじゃっ!」

「待ちなさい!……これを持って行きなさい。」

 

走り出そうとした俺を、摩耶さんは感情的になった者をも引き止める程の鋭い声で呼び止めると、携帯電話を投げて寄越した。

 

「私のプライベート用よ。番号は私と翔しか知らないわ。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

「ハアハア…ハア…乃絵美。」

 

あれから俺は摩耶さんと再会した日に乃絵美がいた公園や、フレンチレストラン『シェ・リュイ』、『ぱぶりっく』等、乃絵美の行きそうな場所を徹底的に探し回ってみたが、何処にも乃絵美の姿は無かった。

 

クッ!一体何処にいるんだ…。

…?!

 

一度家の方に帰ってみようかと、l’omelletteの方に走り出そうとすると、暗がりを向こうから歩いてくる人影を見付けた。

 

もしかして乃絵美か!?

 

俺は感情に身を任せたまま、藁をも掴む思いでその人影に走り寄る。

 

ダダダ………。

 

「だっ誰です!何の用ですか!?」

 

突然走り寄ってきた俺に、その人影が驚き、警戒しつつ身構えた。
実際、この暗がりで誰かが走ってくれば、痴漢か強盗だと思うのも当然だろう。

 

「すいません!あの、背がこの位で、腰まである髪を右上でまとめ……宗一郎?」

「フウ…なんだアナタだったんですか、驚かせないで下さいよ…。」

 

近くまで寄るとその人影が宗一郎だと判った。
買い物にでも行って来たのか、幾つかコンビニエンスのビニール袋を下げている。

 

「なあ、乃絵美を何処かで見なかったか!?」

「乃絵美さん…ですか?」

 

俺の質問に宗一郎は額に指を当てて考え始めた。

 

「昼間、l’omelletteでお会いして…夕方くらいにデリバリー中の乃絵美さんを見かけて…。」

「それだけか?」

 

ノロノロとマイペースで答える宗一郎に苛立ちながら、俺は続きを促す。

 

「いえ…先ほど横浜から帰るときにも駅で見かけました。僕は電車に遅れそうだったので、挨拶はしませんでしたけど…。」

「横浜!?」

「はい、日本の神奈川県よこは…あっ何処行くんです?」

「横浜だ!」

 

相変わらずマイペースな宗一郎をその場にほっとくと、俺は横浜に向かうべく桜美町駅に向かった。

 

乃絵美…乃絵美ィッ!

 

 

 

横浜に着いた俺は、賑やかな横浜の中でも比較的おとなしめな場所を捜し回った。
乃絵美がミャーコちゃんみたいに繁華街で遊び回っているとは考えにくい。
電車の中で体力を回復した俺は、横浜中を走り回る。

 

 

 

しかし、終電近くの時間になっても、本人はおろか手がかりすら見付ける事が出来なかった。
ヘトヘトになった俺は、少し頭を落ち着ける為に山下公園のベンチに座り、項垂れて肩で息をしながら休憩をとる。

 

「……あと、乃絵美が行きそうな場所は………。」

 

終電近く…
未だ来ない連絡…
この期に及んで俺は、乃絵美が無事なまま一人で俺を待っている事を信じている。

 

「……駄目だ!これ以上は思い付かない。」

 

乃絵美はあまり外出しないから、l’omelletteにいる確率が一番高い…少なくとも桜美商店街内にいつもいた。
だから、桜美商店街内で見付からなければ、ほぼ絶望的と言える。
実際、横浜へ捜しに来たのも、万に一つの確率に賭けたに等しい…。

 

クッ…せめて無事かどうかだけでも……。

俺は膝の上で手を握り締めて、乃絵美の無事を祈る。

 

プルル…プルル…プルル…。

 

と、突然、摩耶さんから渡された携帯電話が鳴った。
周りにいたカップルがギョッっとした顔で俺に注目する。
視線が痛いので、俺はそそくさとその場を離れながら、電話を取った。

 

「はい。」

「もしもし!私よ!」

「菜織!見付かったのか!?」

「違うの!いやまったく関係ない訳じゃないけど。柴崎君が襲われて、翔さんが見つけて、乃絵美の事を知っているみたいで、でも意識不明で…。」

 

電話の向こうの菜織は相当慌てているらしく、言っている事が要領を得ない。

 

「よく解からないぞ!はっきり言え!」

「ああっもうっ!ええっと、ええっと…。」

 

柴崎が襲われた?乃絵美の事を知ってる?

 

「……柴崎が乃絵美の事を知ってるのか?」

「そうよ。でも意識が戻らなくて…。」

 

菜織の話から、言いたい事を予想して聞いてみたが、どうやら正解らしい。

 

「解かった。とりあえず俺もそこに行く。何処だ?」

「桜美医大病院よ。」

「分かった。今から向かう。」

 

ピッ

 

ここから桜美医大病院まで大体一時間か…。

柴崎…誰にやられたんだ…。

乃絵美…今何処にいるんだ…。

 

二人の事を考えながら、桜美町に戻る為の終電に間に合うべく駅に向かって走っていると、

 

プルル…プルル…プルル…。

 

「のわっ!」

 

再び電話が鳴った。

 

また菜織か?

 

「柴崎の意識が戻ったのか!?」

「違う!」

 

電話の相手は翔兄だった。
いつもの落ち着いた口調とは違い、焦った声をしている。

 

「摩耶が襲われた!」

「なんですって!?」

「今、何処だ?」

「山下公園を関内駅に向かって走ってます。」

 

「走ってます」と言ったものの、驚きで足は止まっている。

 

「頼む、元町へ行ってくれ!そこの電話ボックスに摩耶がいるはずだ。」

「わっ分かりました!すぐ向かいます。」

「すまない。俺も高速に乗ってそっちに向かってるところだ!着くまで摩耶の事を頼む。」

 

ピッ

 

…摩耶さんまで……。

 

認めたくはないが…乃絵美は誘拐されたのだろう。
そして犯人は、二人に乃絵美と一緒にいるところを見られるかして、口封じの為に襲った。

 

やはり『@』の仕業なのか…。

……………。

今はとにかく摩耶さんを保護しないと…。

 

俺の足なら、電車やバスより走った方が早い。
俺は菜織に柴崎の意識が戻り次第連絡をくれる様に頼みながら、急いで元町に向かった。

 

 

To Be Continued...

 

 

 

第十七話予告

「翔兄ィ!!」

信頼する兄

「まなみ…ちゃん?」

心の離れた恋人

「どうして…。」

そして、『@』

 

静寂の中で向かい合う二人

 

次回『another face 〜電網の恋人〜』

第十七話・対面

感想を書く/目次へ