BE-YOND(PC) ※ディスク2枚組
メーカー elf 総合評価 70点(佳作)
ジャンル ADV
発売日 2000/07/19
シナリオ 菅宗光 96年8月に出た「ビ・ヨンド〜黒大将に見られてる〜」のWIN移植版。同社の他の移植作品と比べてアレンジ度が低いのが特徴かと。
原画 田島直・Masakuni Kaneko(漢字不明)
サウンド 与猶啓至・山本忍


個人的エピソード
DOS版の評判が良かったので購入。
…でも1年以上積んでしまいました。
どうしていつもいつもこうなるのかなぁ(^^;

内容
久遠の闇より黒き者……『漆黒の魔王』

記憶を失い、気がついたら『魔王』になっていた主人公。
『魔王』としての自覚もないまま彼は『シモベ』と自称する少女を伴い、
あてもなく宇宙を漂う。
彷徨の中で平和な暮らしを望む主人公。しかし世間の『魔王』に対する
風当たりは厳しく、彼のやる事なす事全てが裏目に出てしまう。
さらには様々に出会う少女たちが混乱に拍車をかけ、自体は思いがけない方向に…。
だが、これはまだ抱腹絶倒ドタバタ宇宙劇の始まりに過ぎなかった。
果たして彼の行く末に待ち受けているものとは、いったい…………。
(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量は250/650/850MBのいずれかから選択。
で、システムなんですが……良く言えば古き懐かしき、悪く言えば単純に古臭いシステムと言えるでしょう。

ゲームは基本的に「話す」「考える」「見る」などのコマンドを選択することで進行していき、
一方で物語的な分岐は時折出る選択肢で決定されます。
もっとも攻略に関わるような分岐は終盤にまとまっているので、
どちらかと言えばコメディ色の強いゲームに付き物のキャラの反応が変わるだけの選択肢が大勢を占めるようです(^^;
特別効率的なプレイを意識しなければ自力での攻略も十分可能でしょう。

総当たりとまではいかないものの、何度も同じコマンドを選んでやる必要が
あるので最近のテキスト主体のADVに慣れているとその辺りがちょっと億劫かも。

セーブ数は10個。
攻略を見ない人にはちょっと少ないかと思われますが、まあ普通の量ですね。

スキップは既読スキップのみ。
このスキップはかなり高速で、コマンド選択の際に同じメッセージが続けて出ることも
多いこのゲームでは重宝しました。
同じメッセージの場合瞬時で表示が終わるのでテンポが崩れないので(^^;

バックログはおよそ64クリック分。音声も再生できる嬉しい仕様ですが、
作品の性質上例えば「見る」を無駄に10回選んでも、その10回分のメッセージが
全部ログに残ってしまうわけで思ったほど便利では無かったりします(^^;
もっとログの量が多いとありがたかったです。

鑑賞系はCG・BGM・ムービー鑑賞にシーン回想、ED鑑賞ときっちり揃っています。

こうして見て行くと同じ移植作品の「恋姫」より格段に現代向けのシステムになっていることが窺えます。
元々そうだったのか移植に際して変えたのかはわかりませんが…でも古いとか思ってしまうのはなぜでしょう?

絵とか
う〜ん、悪くは無いのですけれど…といった感じでしょうか。
原画は一部追加CGがあるようですが、基本的にはDOS版のまま。
96年のゲームの原画が今でもそのままで十分通用するというのは素直に凄いと思います。
普通絵柄とかが古く感じられてしまうと思うので。

また立ち絵の種類やアクションが非常に豊富なので見ていて飽きさせません。
コメディとして大事な点をこの辺りきっちり押さえていると言えましょう。

ただですね…パッケージによるとHighColorらしいんですが、どうもそうは見えないのが難点かと。
立ち絵にしてもイベント絵にしても塗りが古いというか色数が少ないというか……
あまり画面栄えのしない塗りなんですよね。これで随分損をしてるような気がします。
EDのイベント絵はあまりそういう印象を受けませんでしたが、ひょっとしてこれだけしっかり描き直し&塗り直しなんでしょうか?

あとこのソフトに触れるのならばムービーに触れないわけにはいかないでしょう。
途中何度も気合の入ったCGムービーが挿入されます。
ちょっと気合が空回りという感もなくはないですが(^^;、OPでスターウォーズをパロったりEDも映画のスタッフロール風に作ってあるこのソフトらしくて個人的には好印象。

枚数は鑑賞モードによれば129枚(パターン違い除く)。
何の文句もなく十分な数が用意されていると思います。

音楽・音声とか
BGMはPCMで再生で全34曲。
うち7曲ほどは「恋姫」で使われていたものと同一です。
#なぜ「恋姫」の曲が使われているかはやればわかります(ぉぃ

どれが新曲でどれが従来からあった曲なのかはわかりかねますが、
曲のレベル自体は割と高めで安定していると思います。

恒例のお気に入りは「悲劇」「レンの決意」「Be-Yond」辺りでしょうか。
個人的には無駄に壮大な「黒大将に見られてる」も好きなんですけどね(^^;


音声の方はなかなかのハイレベル。
キャラクターにあった方が使われていますし、演技の方もしっかりしています。
うう、音声にはあまり拘りないのでこれくらいで勘弁してください(マテ

シナリオとか
昔からこういうのあったんだ…。
やった時の印象はこんな感じでした。

ゲームの流れは一話ごとの完結性が強いシナリオが続いていく感じで全10章。
イメージとしては1話完結、全10話のアニメを想像していただければよいかと。
6章あたりまでがギャグ色が強く7章でシリアスな流れへの伏線を張り、8章で1回息抜き、9章と10章はほぼ連続したお話で特に10章はバリバリのシリアス路線という物語構成もアニメなどの組み立てを想起させますし(^^;

話の大きな流れとしては上記の通り、「最初ギャグでオチはシリアス」というものなわけですが最近ならともかく96年時点でこれをやるとは、さすが業界最大手と言うべきなのかもしれません。

実際ギャグの部分はかなりよくできていて、何度も笑わせられました。
総当たり性が強くかつ音声が付いているにもかかわらず、テキストのテンポがいいので冗長に感じることはほとんどなかったのは特にポイント高いです。
音声を付けることを前提に書いたわけでもないでしょうに大したものだと思います。
こういうところは最近のゲームも少しは見習って欲しいものです。

またキャラクターの個性の立て方も上手いと思います。
最初「記憶喪失」という設定上ある程度やむをえないとは言え、結構置いてきぼり感を食ってしまったのですが、主人公をはじめとするキャラクター陣に触れているうちにそんなものいつの間にか忘れてしまっていたくらいですから。

そういうわけでコメディとしての部分は非常によくできていると言っていいかと。


ただ個人的にシリアスな部分とはちょっと馴染めませんでした。
違和感を覚えるほどではないにしても伏線の張り方が弱いために、引き込まれる感覚はあまりありませんし、色々明かされる裏設定は必要だったのか微妙です(^^;
何より個人的にEDが多分に説明不足の感が強いのが気になりました。
「奇跡」とか言い切ってしまえばそれまでなんでしょうが…何かすっきりしないんですよね。
それまでが結構良くできているだけに残念無念。

ただ総じて見ればよくできたお話だとは思います。
特に笑えるお話が好きな方なら一見の価値はあるでしょう。

総評
これが出たのは96年の8月。「痕」とかと1ヶ月しか違わないんですよね。
何だか凄い時代だったんだなぁとか思ってしまいました。
温故知新って感じで昨今の作品にも見習っていただきたいところ。

まとめ。現行コメディ路線の始祖的作品。
エロゲのコメディ系に多く見られる「最初ギャグ、最後シリアス」な物のはしりと言っていいのではないでしょうか。

今の観点で見ると所々に古さがあるのは否めませんが、まだまだ十分現役で通用しますし、何よりこれが5年以上前に出ていたということは驚愕に値すると思います。
ただし評価はあくまで厳しく現代の観点で70点ということで(笑)

書いた時点での総プレイ時間 12時間10分(コンプ)
お気に入りのキャラ レン・アメジスト・エバ
お気に入りのセリフ 特になし

初版2001/09/21