秋桜の空に(PC)
メーカー Marron 総合評価 80点(良作)
ジャンル ADV
発売日 2001/07/27
シナリオ 竹井10日 発売前の注目度はお世辞にも高くなかったが、発売されてからネットを中心に徐々に話題を呼んだ作品。
今後ブレイクしていくのかは不明(ぉぃ
原画 岩舘こう
サウンド LOOM・しもちゃん

※以下の評価は8月7日配布修正版に基いています

個人的エピソード
なんだかネットの色んな所で話題になっていたので買いました。
特に懐居さんに推されたのとUSGさんの板での盛り上がりに惹かれたのが大きかったカナ?

内容
季節は秋。紅葉の鮮やかな街。
主人公は、自覚はないがその無茶苦茶な言動で学園中から一目置かれる変わり者。
隣のお姉さん桜橋涼香や、愉快なクラスメートに囲まれ、ドタバタ喜劇な毎日を送っている。

秋の訪れと共に運ばれる新しい出会いや、深まっていくそれぞれの思い。
そして、始まる学園祭の準備期間で学校に泊まり込む日々。
合宿のような楽しい毎日の中で、
主人公の奇抜な行動が巻き起こす騒動に少女達は振り回されっぱなしだ。

だが、そんな生活の中に見え隠れする彼の優しさに、やがて少女達は引かれていく。
それぞれ深いトラウマを持ちながらも日常を生きる5人の少女たち。

学園祭や体育祭を通じて、彼女たちの心の傷に触れ、
それに触発されるように主人公自身の哀しい過去もまた甦る。

切なさを感じさせる秋風の中で、
恋する主人公と少女たちはお互いの心の傷を癒し合っていく。


その恋の終わりにどのようなものが待ち受けているかも、知らずに……。
(メーカーサイトより)

システムとか
必要容量は約250MB、とここまではいいんですが、このソフトのインストーラーは
導入先が「C:\Program Files\marron」で固定です。
一応、手動ファイルコピーで他ディレクトリに入れることも可能ではありますが
かなり不親切なような気がするのですが……(^^;

上記の一点を見ても想像がつくように、
このソフトはシステム面で大きな問題を抱えています。
修正前は異常にメモリが食われたりスワップファイルがどんどん膨れ上がったりという致命的な物もあったそうです。

我が家では修正ファイルを当てたので、大きな問題はありませんでしたが
何度か「プログラムが終端に来ました」というダイアログが表示されて動かなくなってしまうことがありました。
そんなわけでシステム面は根本的な部分に問題があるかと。

で、ここからは普段と同じに。
セーブ数は31個。まあ十分な数かと思われます。

スキップは強制スキップのみ。
これはちょっと不満ですが、重複部分がそれほど多いわけでもないので許容範囲内ではあります。
で、バックログはなし。テキストが面白いので、これは用意して欲しかったところ。

後でシナリオでも触れますが、こんな部分まで「ONE」に似てます(爆)

鑑賞系はCG・BGM鑑賞と全キャラクリア後に追加されるおまけシナリオ。
Hシーンは初めてなのにお尻だったり、剃毛だったり、放尿だったりと
マニアックではありますが濃くはないのでシーン回想がなくても構わないかな?

根本部分がダメなことを除けば(マテ)それほど大きな不満はありません。
ああ、メッセージ速度を「速い」にしても「普通」との区別がつかないんですが、
私が変なんですか? それとも速度変更機能なんて嘘ですか?(ぉ
あとメッセージウィンドウを消す機能くらいは付けてください。頼みますm(_ _)m

絵とか
どこかで見たような絵を描かれる方です。
というか、劣化版☆画野朗さんです(爆)

そんなわけですので割と多くの人が親しみを持てる絵柄ではないかと(^^;
塗りのレベルは正直低めといったところでしょうかね。

立ち絵は豊富で、テキストに合わせた切り替えのタイミングが上手く
この辺りはなかなか良かったかと思います。
カナ坊の正面向いた顔にだけはなじめませんが(ぉ

CG枚数は64枚(パターン違い除く)。
数量的には少ないですが、立ち絵演出のおかげかプレイしている際には
あまり気になりませんでした。
ただ一部絵柄が安定していないような物が散見されるのが残念です。

音楽とか ※音声はありません
BGMはCD-DAで収録、全19曲。うち3曲がボーカルです。
質の方はまあ並程度といったところでしょうか。
悪くはないと思うのですが、プレイ中に特別印象に残りませんでした。

そんな中のお気に入りは真ED曲の「Everlasting Flower」と
「さよならを空に(ピアノVer.)」でしょうか。
「失われる魔法の時」あたりも悪くはないと思いますが…。


このゲームには音声がないのですが、これは惜しいなと思います。
セリフの掛け合いが面白く、かつテンポもいいこの作品なら
声が付けばもっと面白くなったと思うだけに残念でなりません。
音声があればもっと萌え度もアップしたでしょうし…(^^;
次回作は是非音声を採用する方向で検討していただきたいところ。

シナリオとか
笑いに突出した癒し系ADV。
メーカー側が「癒し系ADV」と言っているのでそれに従いましたが、
まさにこの表現がふさわしい内容だと思います。

ぶっちゃけた話、内容的には「ONE」以降腐るほど発売された「“表には見せないけれど、心の傷を抱えた主人公とヒロインが恋に落ち、しかし最後に避けがたい別れの時が訪れる”というストーリーを前半はギャグテイストたっぷりに後半はシリアスにまとめる」というソフトの1つに過ぎません。
人によってはこの段階で買う気が失せてしまうかもしれませんね(^^;

ですが、このソフトは同系統のソフトの中でもかなり出来がいいです。
特にテンポよく、かつセンスがいいギャグ部分のテキストはとにかく秀逸。
ゲームをやってて声を出して笑ってしまうなんて久しぶりの体験でした。
選択肢の度についついセーブ&ロードで全部の反応を見たりしたのも久々でしたね。
どのキャラクターも本当にいい味を出しすぎです。
質の高いお笑いシナリオを見たい人ならば、それだけを理由に買っても損はしないと思います。

さらに恋愛ゲームとしての萌え度もかなり高いです。
正直、お互いに惹かれる描写にかなり弱い面があるのは否めないのですが(^^;
付き合いだしてからのヒロインの言動や、主人公との甘々っぷりの前では
そんなこと関係なしに転がり回ってました(マテ

作中、とあるキャラが主人公達のやり取りを見て
「むずがゆいーーーっ!」と叫ぶシーンがありますが、まさにそんな感じ(笑)
というわけで、そっち方面が好きな方も安心して買えるかと。


とここまではベタホメ風味だったので、ここから難点をば。
シナリオ解説の最初の方にも書きましたが、このゲームもご多分に漏れず
終盤シリアスな流れになっていきます。
まあ、どんな風にシリアスかを書くと重度のネタバレになるのでとりあえず「逆ONE」とだけ書いておきますが(^^;

で、難点というのはこのシリアスな部分がちょっと弱いということです。
OPで伏線は張ってあるとはいえ、終盤に入って突然に始まる伏線回収、あとは一気にクライマックスになだれ込んで、そのままEDへ。
こんな流れではどうしても盛り上がりに欠けてしまいます。
別れの原因となるファクターも少し安易に感じますし…。
ギャグや萌えの出来に比して、シリアス部分の導入と盛り上げ方は今一つと言わざるを得ません。

「笑いと涙の癒し系ADV」がメーカーの謳い文句なんですが、「涙」については
それほどでもないなというのが正直なところでしょうか。
同じモチーフを使っても、もうちょっと終盤でイベントや心理描写を用意すれば
もっと盛り上がったに違いないので勿体無いなぁ(^^;

あとシナリオに直接の関係はありませんが、スクリプトミスなのか
主人公とヒロインの名前表示が逆になっている部分が結構目立ったのは残念。

でもまあ、総合的に見ればシナリオの質は高いです。
だからこそこっちも苦言を呈してるわけですしね。

総評
新規参入ブランドなんで不安でしたけど、楽しめました。
システム面とか色々改善の余地は山積みですけどね(^^;

まとめ。荒削りな魅力の光る作品。
「ONE」とか「Lien」みたいな笑えるシリアス物が好きな方は是非。
正直「ONE2」よりも「ONE2」に近いソフトなんじゃないかと思います(ぉ
システムのみならず、シナリオ終盤の見せ方などまだまだな部分もあるとは思いますが、素直に次回作に期待。

冷静につければ70〜75点が適切でしょうが、萌えたし久々に笑わせてくれたので
次回への期待もこめて80点ということで。

書いた時点での総プレイ時間 20時間40分(コンプ)
お気に入りのキャラ 桜橋涼香・佐久間晴姫・楠若菜・小泉鞠音・姉倉子鹿(多すぎ)
お気に入りのセリフ 「くすっ……い、いってらっしゃいのキス……だぞっ」
「い、良いのカナ……だって、そこは……。
そこは……涼香先輩の指定席だし、何だか悪いよ……」
「わたしをずっと離さないって約束してくれないと、許さない」

初版2001/08/27