鬼哭街(Win)
メーカー Nitro+ 総合評価 80点(良作)
ジャンル ストーリーノベル
発売日 2002/03/29
シナリオ 虚淵玄 ニトロプラスの第3弾。今回はストーリーノベル。選択肢などゲーム性を一切排除したことが話題に。またボリューム不足感などがないかが不安視された(^^;
原画 中央東口・Niθ
サウンド 礒江俊道・大山曜・神保伸太郎


個人的エピソード
虚淵さんのシナリオが凄く好きなので購入。
あのスピード感と迫力が伝わってくるバトル描写は他の方ではちょっと真似できないかと。
あとは実売4000円を切る低価格というのも大きかったでしょうか。

内容
間違った未来、誰かが選択を誤った世界。
犯罪結社・青雲幇の牛耳る上海に、一人の男が舞い戻る。
彼の名は孔濤羅(コン・タオロー)。
かつては幇会の凶手(暗殺者)であり、生身のままにサイボーグと渡り合う「電磁発勁」の使い手である。

仲間の裏切りによって外地で死線をさまよった彼が、一年の時を経て上海に戻ってみれば、すでに裏切り者たちは幇会の権力を掌握し、そればかりか濤羅の最愛の妹までもが辱められ殺されていた。
怒りに身も心も焼き尽くされた濤羅は、その手に復讐の剣を握る。

仇は五人。
いずれ劣らぬ凶悪無比のサイボーグ武芸者たちを、一人また一人と血祭りに上げながら、
孤高の剣鬼は魔都上海の夜闇を駆け抜ける。
(パッケージ裏より)
※しかしとことんエロゲとは思えない内容紹介だな〜(^^;

システムとか
必要容量は最小MB〜最大430MB。
音声が入っているわけでもないですし、まあ妥当なところでしょう。

まず最初に書いてしまいますがこのソフトはゲームではありません。
くれぐれもご注意を。プレイ中に選択肢の1つも出て来ない徹底ぶりです。
「ストーリーノベル」の名の通り、ゲーム用のシステム上で動作する絵と音楽のついた小説だと思えばわかりやすいかと。
ということで、以下意味は薄いのですが一応その動作システムについてコメント。

セーブ数は恐らく無制限に増やすことができます。
私が確認したのは30個までですがファイルを生成するタイプですので多分間違いないでしょう。

スキップはShiftキー押下による強制スキップのみ用意。
もっとも1通りしかないストーリーでこれを使う人がいるかはかなり疑問ですが(^^;
バックログはこれまた無制限。
どこからでも最初まで戻ることができるようです。
まあ、前作の「ヴェドゴニア」もそうだったのでこのメーカーに関してはさほど驚くことではないかも。

鑑賞系はCG鑑賞および音楽鑑賞が用意されています。
シーン回想はありませんが個人的には無くても良いかと。
Hシーンも3つほどあるにはあるのですがどれも実用性は……なので(爆)
大したシステムを必要としない作品なのによくまとまったシステムだと思います。

絵とか
相変わらず濃い絵だなぁ、と。その一言に尽きます。
一般的な萌え絵などとは遠く距離を隔てた絵柄ですし、苦手な方もいるかも。
とはいえ、塗りのレベルなどは高いですし3DCGで描かれた背景などともちゃんと合っているので
これはこれでアリだと思います。
というか萌え絵でこんな話をやられても壮絶さが出ないでしょうしね(笑)

若干気になったところと言えば(本当の妹の)瑞麗の立ち絵のフチ取り線が他と比べて太くて目立つ点とペトリューシカの立ち絵のドットがやはり他より目立つところくらいでしょうか。
それを除けばなかなかよくまとまったCGだったのではないでしょうか。


枚数の方は鑑賞モードによると100枚。
ここからパターン違い及び兵器・背景など「普通のゲームならCGモードに登録されないだろ」
的なものを独断に基づいて削ると約68枚。
プレイ時間等々を鑑みれば十分な数だと思われます。

音楽 ※音声はありません
BGMはPCMで再生、全14曲。うち1曲がボーカルです。
胡弓なんて滅多に使われない楽器を使っているのが珍しいですね。
で、質の方なんですがハイレベルです。
個人的にニトロの曲調はツボなのもありますがどの曲も一定以上のラインは余裕で超えています。
曲の使いどころも心得てるし、いい仕事してるなぁ……。

恒例のお気に入りは「The Cyberslayer」「SworddancerU」「Supersonik Showdown」に
EDのボーカル曲「涙尽鈴音響」辺りですかね。
特に「Supersonik〜」は使われるシーンに合っていて非常に良かったかと。
アリスのShadeさん辺りが書きそうな曲なのがアレですが(ぉぃ


音声はありませんが、個人的にはストーリーも1本道なんだし声付きでも良かったかと。
渋い男性声優さんにしっかり演じて貰えばなお面白くなったんじゃないかな?
……声まで付けると値段も上がってしまうのでちょっと微妙なプランですけどね(^^;

シナリオとか
「サイバーパンク武侠片」の看板に偽りなし。
発売前にメーカー側は内容を聞かれて「サイバー〜」と答えていたのですが、まさにそのまま。
唯一にして最大の違いは復讐が根底にあるだけに武侠片などよりもずっと暗い話になっていることだけ(^^;

あまり内容について書いてしまうとネタバレになってしまうので多くは語れませんが、
とりあえず先述したように内容はかなり暗い、救われない物になっています。
選択肢がもしもあるならば、もっと救われる話も見てみたかったと思うほどに。

ですが、それでも文章の面白さと先が読めない展開故にどんどん先に読ませる力があります。
どう転んでもいい未来など登場人物の誰の前にもないだろうと思いながらそれでも読んでしまう。
選択肢を排除した効果なのかは知りませんが、ルート分岐などを考えずに話を読ませることを重視した結果としてお話自体はかなり面白い物になっているかと。

主人公・彼の妹・元親友にして敵という物語の鍵となる3人に共通する悲しさ。
そういったものの描写も丁寧でさすが定評のあるライターさんだけのことはあります。

シナリオ面で気になったのは以下の3点のみ。
1つ目は選択肢などがない関係上どうしてもプレイ時間が短いこと。
2つ目は武術や世界観の説明がやや多いこと(個人的には鼻につくほどではないですが)

最後はラストが個人的にどうも納得いかないということ(ぉぃ
本当に個人的に好きになれないというだけで、客観的に見ればまあ綺麗に終わらせてると思うんですけどね。
主人公は復讐を果たしたけど死んじゃいましたって終わり方じゃユーザーも納得しないでしょうし(^^;

まあでも話は面白いし、バトルの描写は相変わらず素晴らしいので
既存のニトロファンなら概ね満足の行く出来に仕上がってると思います。
つか、虚淵シナリオファンは迷わず買っておくべし。

総評
文句書いてるところもありますが、面白いです。
やっぱり上手いライターさんは安定して上手いもんだなぁと再確認。

まとめ。ニトロファンは買って損なし。それ以外は世界観が気に入れば。
そんな感じですかね。ニトロが好きならとりあえず買っておくべきでしょう。
それ以外の方は「日本刀でバトル」「気功術」「サイボーグ」などの頭の悪い香港映画に出てきそうなキーワードに1つでも反応してしまったなら買い。話はいいので多分満足できるかと。
あるいはちょっと歪んだ妹属性の持ち主も楽しめるかもですね(笑)

プレイ時間は短いですが、ハードカバーの小説にCGと音楽が付いていると考えれば値段的には損はないと思いますですよ〜。

書いた時点での総プレイ時間 3時間半(クリア)
お気に入りのキャラ 強いて言えばペトルーシュカ(ただしバトルモードではない方の^^;)
お気に入りのセリフ 天意もなく、神仏もなく、我はこの一刀に賭ける修羅
「ところがこの刀は、な。ひとたび抜き払ったが最後、刃圏に捉えた万物を、俺の意に先んじて斬って捨てる。内家の刀は“意”よりも疾い」

初版2002/03/30