ラムネ(Win)  ※DVD-ROM
メーカー ねこねこソフト 総合評価 55点(凡作〜及第点)
ジャンル ADV
発売日 2004/07/30
シナリオ 片岡とも・秋津環・海富一・中森南文里 「みずいろ」で一躍トップクラスの人気メーカーとなったねこねこの新作ADV。「みずいろ」以来となる学園物ということで、再び萌えの嵐を巻き起こすのか注目された。
原画 あんころもち・司ゆうき・u-r・秋乃武彦ほか
サウンド Elements Garden・まにょっ・猫野こめっと・Sound Union Ebi・443・天乃雀・Barbalian On the Groove・TILDE・安瀬聖

※7/28配布修正版を元に評価しています

個人的エピソード
発売当時は「銀色」に魅せられていたこともあり、「みずいろ」を過剰評価していたのでは……。
「みずいろ」発売から2年間、ずっとそれを考えていました。
その後出た「朱」がまるで肌に合わなかったこともあり、ねこねこから手を引くことも含めて
検討するべく手を出してみたのですが……。

内容
「何か」が起こりそうな…そんな期待をして、ドキドキして。
でも、そんなことは中々起きなくて…
そういえば去年も一昨年も同じように思ってたりして。
なのに、今年も何かが起こりそうな気がして…
やっぱりドキドキしてしまう、不思議な季節。

〜そんな不思議な季節を舞台にした、
 どこにでもある「普通」の物語り〜

(パッケージ裏より)

システムとか
必要容量は約2GB。
大容量の代わりにディスクレスで起動できるのはありがたいところです。

システムとしては選択肢分岐型のごくオーソドックスなADV。
とはいうものの主人公達の幼少期を描いた過去パート以外には、ほとんど分岐の意味はなく難易度的には限りなく0に近いと思います。
シナリオ分岐を確定する幼少期も選択肢は超が付くほど簡単ですしね。
メーカーが推奨するようにオートモードを使うと楽です。
……それをゲームと呼ぶのかどうかは疑問が残りますが(ぉ

セーブ数は100個。
先述したように難易度は限りなく低いので困ることはないかと思います。

スキップは既読/強制の双方を実装。
とは言うもののシナリオ構成上共通部分はほとんど無いので実質使う局面は
皆無と言ってもいいかもしれません(^^;
速度的には高速で使いやすいと思います。

バックログは……音声リプレイ可能なタイプでかなり量戻れます。
正確な検証はしていませんが恐らく100ページ以上なのは間違いないでしょう。
PageUpキーでは読み返せない、ホイールに対するレスポンスが悪いなど若干気になるところもありますが、
機能としてはこれで十分だと思います。

鑑賞系としてはCG・BGM鑑賞とイベント回想・アフターストーリー・スタッフルームを用意。
この辺はねこねこソフトのお約束と化しつつありますね。
イベント回想はちょっとありがたいかも。

今回はNScripterじゃなくなっているようで、実は少し不安だったんですが杞憂でした。
必要な機能は概ね網羅されていると思います。
あとはレスポンスだけやや改善希望ってところでしょうか。

絵とか
書いてある人数こそ多いものの実際にはほとんどの絵は2人で描いているはず。
自分の記憶にある限り初めて見る名前なので、新人さんだと思うのですが基本的には
可愛い絵柄で万人受けするのではないかと思います。

ただ開発期間が長かったのか、単にまだ慣れていないのか時折キャラの顔が別物になってしまうのが難点ですが……(´Д`;
それを除けば塗りも含めて結構いいのではないかと思います。
メインキャラについては。

サブキャラの主人公の父親および七海の母親については異世界の住人じゃないかというくらい絵柄も塗りのレベルも違って愕然としました。
サブキャラについて別の人を使うのは一向に構わないのですが、絵柄や塗りのレベル――せめて塗りのレベルくらいは同じ位置に合わせて欲しいです。
見ていて違和感が凄かったので(^^;


枚数の方は鑑賞モードによると106枚(パターン違い除く)。
差分も結構ありましたし枚数としては事足りていたと思います。
そもそもイベントも少ないのでこれで必要十分かと(ぉ

音楽・音声とか
( ̄□ ̄;)作曲者多っ!
私も色んなゲームをやってきましたけど、こんなに多いのは初めてかも。
全員が全員外注だからできる暴挙と言えばいいんでしょうか(^^;

とはいうものの曲数は決してデタラメではなくBGMはogg形式?で全30曲、うち3曲がボーカルです。
作品の雰囲気に合わせて夏っぽい曲、穏やかな曲ばかりで構成されているのが特徴でしょうか。
質の方はというと飛びぬけていいわけではないけど全体的に高品質。
ここはいつも音楽に関しては安心して聞けますね。嬉しい限りです。

お気に入りは「スイカ90's」「夏空90's」「半夏生93's」「夜空75's」「ラムネ79's」に各ボーカル曲。
中でもOP「なんてね76's」はすっかり頭にすり込まれて気がつくと口ずさんでしまったり(^^;


音声は女性のみフルボイス。
個人的にはいい加減ポンコツさんのポンコツボイスには飽きてきた感があるのですが、CVの方々はいずれ合っていたし演技的にも問題なかったように思います。
強いて言えば鉄板だと思っていた青山ゆかりさんのひかりがちょっと演技過剰でしつこい感じがしたくらいでしょうか?
あの人ならもっと自然な演技でも十分イケると思います。

シナリオとか
もう普通のゲームはこりごりだよ……(´Д`;
凄く乱暴にまとめるとそんな感じ。

ソフト紹介を見ていただいてもわかるように、本作は同メーカーのヒット作「みずいろ」との類似性が多々見られます。
ゆえに以降「みずいろ」と比較するような文章が多くなることをあらかじめお断りしておきます。

と前置きしましたが、本当に「みずいろ」とのシナリオ上の類似点は多いです。
過去パートと現代パートの2部構成になっている、攻略に関わるのは過去パートのみで現代パートは(選択肢はあるものの)ストーリーをただ追うだけの作りになっている、という2点を見るだけでもそれは明らかでしょう。
実際にはこれ以外にも細部を見ていくと「ぽんこつ幼なじみ(CV:籐野らん)」「シナリオ中ずっと何かを作成する」etc.……実に様々なファクターに類似性を見出すことができます。
正直なところ、私はこの類似性に意味を見出せませんでした(ぉ

別に深い意味はなく、単純に前作同様「普通」を志した結果として似たような要素が増えただけなのかもしれません。
が、こうも同じだとこれしか作ることができないのではないかとすら考えてしまいます。
同じテーマでやるのであれば、大きな成長を見たいと思うのが人情なのですが……まあその辺は後述。


さて、類似性云々をさておいてシナリオそのものの話に戻ります。
本作は「普通」をテーマにしているだけに基本的にキャラクター・ストーリー共にわかりやすい/読みやすい作りになっています。
特に面白いギャグがあるわけでもなく、目の覚めるような鮮烈な展開も無い、そんな普通の日々を描いているだけに基本的に単調です(´Д`;
中でも鈴夏シナリオは本気で眠かったです……。
いくら「普通」だからって退屈な日常まで再現しなくてもいいのに…と言うのはキツ過ぎるかもしれませんが、個人的にはどのシナリオについてももっとサブキャラを生かして欲しかったところ。
七海シナリオの佐倉さんなんてアテ馬にすらなってませんよ?(苦笑)

ただ、そうした牽引力に欠けるシナリオではあるものの同様に日常が単調な有象無象と比較すれば、文章が読みやすい分だけマシだとは思います。
特に強く引き込まれることはないけれど、何となく流し読みできる――そんな表現が的確でしょうか。
まあ終盤などはある程度盛り上げてくれたので、話の運びそのものは悪くないんじゃないですかね。
話そのものがあまりにも読みやす過ぎるという難点はありますが……。
お約束的な青春物が好きな人ならば許容できる範囲ではあるかと。
先述したサブキャラの活かし方やオチの見せ方など改善の余地はありますが、ひかりシナリオや多恵シナリオみたいな青臭い話、個人的には嫌いじゃありません(^^;

しかし、こうして多少フォローは入れられるものの、やはり「普通」という方法論の限界は感じずにはいられないというのが本音。
単調な展開、どこかで見たようなストーリー・キャラクター……これでどう楽しめと?(´Д`;
展開の無さはある程度萌え等で補完することもできましょうが、本作のように類型的なキャラクターだとそれも厳しいわけで。
1番メインの七海で到底「普通」と呼べないような展開を用意して話を盛り上げざるを得なかった辺りに、その限界が垣間見えたような気がします。


とここまで見ていくと“改善点はあるものの悪くはない「普通」のお話”といった感じの文章です。
事実「みずいろ」をやっていない人にはそうでしょう。が、「みずいろ」をやっている場合、感想は全く変わります。
先ほどは類似性と表現しましたが、実際のところこのゲームと「みずいろ」って双子と言ってもいいくらい似ているんですよ。
「みずいろ2」というよりは「みずいろにハマったヤツが作ったオマージュ」というか。

ただでさえ単調な「普通」をもう1回焼き直したらそれはもう「普通以下」です。
1本であれば多少退屈でも、どこかで見たようなお話でもそれはそれなりに楽しめるでしょう。
ただ、そんな物を2回やる気になるかと聞かれれば少なくとも私はなりません。

何か深い意図があったのか、意図せずこうなったのか知る由もありませんが、何の奇も衒わず表現面での成長もなく投入するにはいささかテーマが厳しかったのでは?
ユーザーが求めているのは「普通」ではなく「面白い」作品だと思います(^^;

総評
う〜ん、動機付けの部分だとかエンディングへの持って行き方とかあと少しの工夫でぐっとよくなるんじゃないかと思うんですけどね〜。
商業的に成功した作品の手法をなぞることは悪いことではないのでしょうが……。

まとめ。「みずいろ」の呪縛から逃れられなかった作品。
デビュー作「White」の例があるわけで、ねこねこの学園物=“普通”でなくてはいけない理由はないはず。
自分で自分のオマージュを作ってたら世話ないです(´Д`;
出来そのものはギリギリ60点レベルだった前作よりはやや上に感じましたが、萌え方面でのキャラ魅力が弱い・2年前からの進歩が何一つ見られないといった辺りでやや下方修正してこの点で。

書いた時点での総プレイ時間 17時間45分(コンプ)
お気に入りのキャラ 特になし(強いて挙げれば仲里ひかり)
お気に入りのセリフ 特になし

初版2004/08/29