うたわれるもの(Win) ※ディスク3枚組
メーカー リーフ 総合評価 85点(良作〜名作)
ジャンル ADV+SLG
発売日 2002/04/26
シナリオ 菅宗光 誰彼」以来1年2ヶ月ぶりのリーフ新作。
東京開発室の約3年ぶりの完全な新作というのとSLG部分を破綻なくまとめられるのかに注目が集まった。
原画 甘露樹
サウンド 松岡純也・米村高広・石川真也


個人的エピソード
甘露さんの絵に惹かれて買いました。
ライターさんも信用はしていましたけど、バグとか不安も満載でした(^^;

内容
大陸の北東に位置する辺境の小國の村、主人公はそこで目を覚ます。
『エルルゥ』によって大怪我をして倒れていたところを発見され、助けてもらったらしい。

だが、一命は取り留めたもののそれまでの記憶を失っていた…。
自分の名前さえも思い出せない主人公は『ハクオロ』と名付けられる。

『エルルゥ』達の手厚い看護を受け徐々に回復した『ハクオロ』は、村の貧しい生活を見て自分が出来得る限りの力を貸すことにする。傷を治療しつつ、畑を耕したり、村人との交流を深める等、ゆったりとした時間が過ぎていく…。
そして『ハクオロ』の傷も大分癒え、村人皆が待ち望んでいた収穫の時季になる。皆が協力して頑張った甲斐もあり、今までより多くの収穫量となった。
だが、その噂を聞きつけた藩主が難癖をつけ、税として貴重な食料を徴収してしまう。
更に様々な要因が絡み、ついに『ハクオロ』達は叛乱軍として蜂起せざるを得なくなってしまった…。
(メーカーサイトより転載)

システムとか
必要容量は850MB〜950MB、容量の差はムービーの画質で決定するようです。

さてこのゲームはADV部分とSLG部分に分かれているので以下、説明も分けて行うことにします。

まずはADV部分について。
この作品、やってみればわかりますが完全に一本道です。
本陣で「どこに移動するか」という選択があるにはありますが、それは単にどのサブイベントを見るかという選択に過ぎず、どのような順番で選んでも結局ゲームクリアまでには全てのサブイベントを見ることになります。
ということでADV部分に関しては難易度という言葉自体が意味をなしません(^^;
ですが、その割にきちんと一連の機能を備えている辺りはさすが大手といったところですか。

セーブ数は100個。一本道でSLG部分の難易度も低いので十二分でしょう。
スキップは既読スキップを実装。またCtrlキー押下で強制スキップも可能です。
速度も十分に早いので特に不満はなし。
……もっともこの機能は使わないような気もしますが(^^;

バックログは各シーンの頭か70ページ前までのいずれか古い方まで読み返し可能。
さほど使う局面こそありませんが、分量的には十分かと。

鑑賞系もCG・BGM鑑賞にシーン回想・SLGの練習モードと一通り求められるものは揃っています。


一方のSLG部分については長々と解説しても仕方ないので簡単な表現ですませますが、
「サクラ大戦」や「アーク・ザ・ラッド」的なタクティカルSLGです。
高さなどの複雑な要素がないこと、前後左右のどこから攻撃してもダメージ値が変わらないこと、
全滅しても稼いだ経験値はそのままでやり直せることなどを含めて難易度はかなり低めになっています。

プレイしていてタルくない程度には面白いですし、私個人としてはエロゲということを考えればこの程度の難易度で適切なのではないかと思いました。
ただ連続攻撃、必殺技、ポイント配分による育成などせっかくのシステム上の工夫が戦闘シーンが簡単すぎるためにあまり生かされていないのはちょっと勿体無いかなと。
そういう意味も含めて考えればもう少しシビアにしても良かったのかもですね。


総論としてはとてもよくできたシステムです。
問題を挙げるとすれば最初のCDチェックが長いのと仮想CDソフトをアンインストールしないとゲームができない可能性があるという、この二点くらいでしょうか。
コピーされると困るのはわかりますがちょっと神経質になり過ぎでは…?

絵とか
塗り・原画ともに素晴らしいの一言。
これ以外にコメントのしようがありません。背景も綺麗ですし、立ち絵のパターン数も豊富。
甘露さんの余計な線を省いた可愛らしい絵柄は多くの方に受ける絵柄だと思いますし、イベントCGの塗りはゲームの雰囲気に合わせたどこか温かみのある色使いでCGチームの職人芸には素直に脱帽。
これよりよくできたCGを望むのは少々酷かもしれません。
ベタ誉めですけど、本当にそれくらい良かったんですよ(^^;

ところが枚数の方には大きな不満が。
CG鑑賞モードによれば枚数は78枚(パターン違い含む)
ここから独断と偏見に基いてパターンCGを除くと約46枚。
……開発期間的にもゲームのボリューム的にもあまりにも少なすぎます(´Д`;
できれば2倍、最低でもこの1.5倍は枚数を用意して欲しいところです。
この問題さえ解決できれば本当に何の不満もないのですが…。

音楽とか ※音声はありません
BGMはCD-DAで収録、全24曲。うち2曲がボーカル曲です。
元々音楽には定評のあるメーカーだけに今回も質の方は総じて高め。
他の一般的なゲームと比べてどこかエスニックな響きの曲が多いのが特徴と言えば特徴でしょうか。
どの曲もなかなかゲームの雰囲気に合っていて良かったと思います。

恒例のお気に入りは「采配をふるう者」「哀吟」「睦語」「アヴ・カムゥ」「子守唄 -ユカウラ-」に挿入歌「運命 -SADAME-」辺り。
特に「子守唄」と「運命」は使う場面が絶妙だったと思います。
プレイ後に曲聞いただけで泣いてしまいました(^^;


この作品には音声はついていませんし、特にそれに対して大きな不満はありませんが、
(このボリュームにさらに音声をつけるというのも大変でしょうし)
もしも今後コンシューマに移植などを考えているのであれば是非ボイスも付けて欲しいところ。
そうすればより感情移入が助けられ、盛り上がったと思います。
不満というわけではありませんが、要望の一つとして挙げておきます。

シナリオとか
笑いあり、涙ありの架空戦記物。
「うたわれるもの」を一言で表現するならばこのような表現になるのだと思います。

SLG部分の面数を減らす狙いもあってか、国力にして10倍の差があったはずの敵国が
ADV部分の何行かのテキストで同等にまで弱まってしまうなどちょっとツッコミを入れたくなる部分も
あるにはありましたが、国と国との思惑・戦いたくはないのだが世論や国の体面の関係上
戦闘命令を下さざるを得ない君主としての苦しみなどは上手く描けていたと思います。

また第2・第3の国の動向などを挟むタイミングが絶妙で、そういった意味でもつい戦いの行方に興味を引かれてしまい、プレイするのをなかなか止められませんでした(^^;
まあ色々鑑みてそこらの架空戦記物と比較しても十分に読み応えはあると言えましょう。
緊迫感の出し方とか盛り上げるのが非常に上手いんですよね〜。

で、このシナリオの盛り上がりを支えているのがテキストとキャラ立ての上手さです。
豊富な立ち絵やチップキャラを活かして無駄な描写は極力抑えた読みやすいテキストと
敵はきちんと憎らしく、そして味方はきちんと魅力的に描いてくれるキャラ立ての見事さのおかげで
かなり長丁場の話にもかかわらず、ダレて感情移入を阻害されることなしに話を読み進めることができました。

他にも飽きるのを防ぐためとキャラクターへの愛着を増やすために用意されたであろうサブイベントも萌えるもの・笑えるもの・ちょっとシンミリさせるものと多岐にわたり、恐らくは先述した狙いどおりに機能していて良かったのではないかと。
私なんかは登場キャラへの愛着と主人公ハクオロへの感情移入の度合いがあまりに強すぎて、途中シナリオ上の強制イベントで仲間が死んでしまった時などボロボロ泣いてしまいました(^^;


と、ここまでだと誉めるばかりになっていますが難点ももちろん存在します。

わかりやすいところでは先ほど「飽きるのを防ぐのとキャラへの愛着を増やさせるのに効果を発揮した」と書いたサブイベントが、特に終盤に入ると物語の流れを殺してしまっています。
そこに至るまでにサブイベントに託された役割は十分に果たしているわけですから、終盤での移動先選択シーンはもっと少なくてもよかったかもしれません。

それから話の性質上仕方ないとは思うのですがあまりにも一本道過ぎます。
戦闘結果なり簡単な選択肢などで多少の幅を持たせても良かったのでは?
特に扱いに不満を覚える人が多いであろうユズハクーヤ辺りに関しては選択次第で別の結末もありえるようにして欲しかったところです。

あとは終盤クンネカムン編あたりから急展開と語られない謎のために、若干話がわかりにくくなってしまうことも人によっては気になるかもしれません。
私としては想像で補完できる範囲だったので特に気にしてはいませんが(^^;
それ以外だとあまりにもエロが薄すぎることも挙げておきます(笑)
普段気にしない私でも気になるくらい薄かったです。…家庭用移植は確定、かな?(ぉ


若干の不満はなくはないですが、シナリオ全体として見れば文句なく面白かったです。
定評のあるライターさんではありますが、さすが…といったところでしょうか。

総評
いや、大変満足しました。
このレベルのソフトはそうそう出ないでしょう。

まとめ。ほぼあらゆる面で非常によくできた作品。
個人的には凄まじく感情移入できたこともあって90点つけてもいいとさえ思ってます。
シナリオの若干の説明不足の解消・ボイス追加・SLG部分の強化などを行えば90点超は堅いですし、コンシューマの舞台においても決して見劣りしない作品かと。

書いた時点での総プレイ時間 約20時間(コンプ)
お気に入りのキャラ 味方陣営の人全て(ぉ
無理に絞るならトウカ・クーヤあたり
お気に入りのセリフ 「今だけは誰よりも愛してあげる。だからこの胸でお眠りなさい」

初版2002/05/25